泉 鏡花

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卵塔場の天女

初級翻訳・卵塔場の天女 第9話

私も九つくらいの時だったから、よくは覚えていないけれど、ちょうど七夜の祝いに産婆さんが味噌漬けでお茶漬けを食べるような頃の話だ。お湯を沸かしたり米の粉を溶いたりするのはわかっていたかもしれないが、夜が白々と明ける頃でも真夜中でも、アルコール...
卵塔場の天女

初級翻訳・卵塔場の天女 第8話

仏間の入り口の敷居の上に、もっそりと両膝をつくと、「あんさん、」と、真っ赤にただれて涙で腫れ上がったまぶたで、じいっと見上げてきたその人の目が、ぽろりぽろりと、見る見るうちに涙であふれていきました。「ほう、お久さんか。」八郎の顔は、今の私か...
卵塔場の天女

初級翻訳・卵塔場の天女 第7話

……品のいい、おとなしい印象の束髪(そくはつ)で、ほっそりとした胸元には赤い背負い紐(せおいあげ)がちらりと見え、そのほかは羽織も小袖(こそ袖)も、まるで夜の梅の木に雪がさらりとかかったかのような、すっきりと美しい姿だった。――あとから思い...
卵塔場の天女

初級翻訳・卵塔場の天女 第6話

まるで三保(みほ)の松原から、松の枝ごと霞(かすみ)にたなびきながらやってきたかのようでしたよ。……すぐわきの築山の池に、鶴がいたっけなぁ……ねえ、姉さん。……運動場で売っていたふかしたてのお饅頭(まんじゅう)が、美味しそうでたまらなかった...
卵塔場の天女

初級翻訳・卵塔場の天女 第5話

色はところどころハゲているけれど、まるで生きているようで――(あとで聞いた話では、昔は店の店頭にあったのだそうです)――息子さんがなかなかのイケメンであることや……さっき八郎が言っていた福助の意味もよく分かりました。どこにいたって、真夜中に...
卵塔場の天女

初級翻訳・卵塔場の天女 第4話

このまま僕をのんびり待っていてくれてもいいですし、もしよかったら先生もいっしょに来ていただければもっと嬉しいです。そうそう、一番電車のときに国境の峠を通り抜けて、『ここからが故郷です』と言ったとき、先生は何と言いましたっけ?あの大潟(おおが...
卵塔場の天女

初級翻訳・卵塔場の天女 第3話

実は今しがた……そこに一群、鰻、鯰(なまず)、鰌(どじょう)、穴子などがごちゃごちゃと並ぶ店先で、鮒を活かした盤台の前へ立ち止まり、三傘夫人が「その大きいのを」と指さすと、ばちゃんと跳ね上がるのを大年増が掌(てのひら)に掬い上げたのですが、...
卵塔場の天女

初級翻訳・卵塔場の天女 第2話

戸籍には「音曲教師」と届け出ているので、その通りに書けばいいものを、ぶっきらぼうに「能職」とだけ。これに対して私も何か一工夫したいと思い、年の割に頭も禿げているし、目立つように――「学校教授、槙村」と名刺を差し出して済ませました。霜月(十一...
卵塔場の天女

初級翻訳・卵塔場の天女 第1話

一 冷たい時雨(しぐれ)に打たれて、青く光っているのは蒼鬣魚(そうりょうぎょ)のヒレです。形は小さいけれど、三十枚くらいずついくつもの山にして並べられた、あの暗い灰色をした菱形の魚を、まるでピラミッドのように積み上げています。一番下に積まれ...
化鳥

初級翻訳・化鳥 第7話

十二日が暮れかかると、あっちに一列、こっちに一列、縦や横になって、梅の木々がところどころ黒ずんで見えてきます。枝々の間の水田の水はどんよりと淀んでいて、その中で際立って真っ白に見えるのは鷺(さぎ)でした。二羽、あるいは三羽でじっとしていて、...
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