芥川 竜之介

スポンサーリンク
ピアノ

初級翻訳・ピアノ 第1話

雨の降る秋の日のことでした。わたしは、ある人を訪ねるために横浜の山手(やまて)の町を歩いていました。このあたりの荒れ果てた様子は、大きな震災があった当時とほとんど変わっていませんでした。もし少しでも変わったところがあるとするなら、それは一面...
舞踏会

初級翻訳・舞踏会 第2話

そして最後にもう一回転すると、そこに置いてあった椅子に明子を優雅に座らせ、自分は軍服の胸を張り、先ほどと同じように丁寧な日本式のお辞儀をしました。その後、ポルカやマズルカといったダンスを踊り終えると、明子はまたフランス人将校と腕を組み、白・...
舞踏会

初級翻訳・舞踏会 第1話

一 それは、明治十九年十一月三日の夜のことでした。当時十七歳だったお嬢様の明子(あきこ)さんは、頭の少し禿げたお父様と一緒に、今夜の舞踏会が開かれる「鹿鳴館(ろくめいかん)」の階段を上っていました。明るいガス灯に照らされた幅の広い階段の両側...
沼地

初級翻訳・沼地 第1話

雨がしとしとと降り続く、ある日の午後でした。私はとある絵画展の会場で、小さな油絵を一枚見つけました。「発見」なんて言うと大げさに聞こえるかもしれませんが、実際そう言ってもいいくらい、その絵は光の当たらない部屋の隅っこに、しかも古ぼけた貧弱な...
少年

初級翻訳・少年 第7話

「やーい、お母さんって泣いてやがる!」保吉は次第に遠ざかる彼らの声を憎みながら、足元に舞い降りた無数の鳩にも目を向けず、長い間、すすり泣きをやめることができませんでした。保吉はそれ以来、この「お母さん」という言葉は、すべて川島くんがでっち上...
少年

初級翻訳・少年 第6話

陸軍大将の川島君は、回向院(えこういん)というお寺にある、濡れ仏さまの石段の前に立ち、自分の軍隊を点検していました。軍隊といっても、味方は保吉を含めてたった四人。金ボタンの制服を着ている保吉以外は、みんな紺色の小さな模様が入った着物を着てい...
少年

初級翻訳・少年 第5話

それから幻灯機の後ろの戸を開けて、そっとそのランプを機械の中へ入れました。七歳の保吉は、息をするのも忘れて、テーブルの前で腰をかがめている主人の手元をじっと見つめています。きれいに髪を左から分けている、不思議なほど顔色の青白い主人の手元を、...
少年

初級翻訳・少年 第4話

翼を長く広げたカモメの群れが、まるで猫のように「ニャア、ニャア」と鳴き交わしながら、海面を斜めに横切って飛んでいきました。あの船やカモメたちは、一体どこから来て、どこへ行ってしまうのでしょうか? 海はただ、何重にも重なった海苔(のり)を育て...
少年

初級翻訳・少年 第3話

三十年考えてみても、何一つまともに分からないというのは、もしかすると一生の幸福なのかもしれません。三 死これもその頃の話です。晩酌の膳に向かっていた父は、六兵衛の酒盃(さかずき)を手にしたまま、ふとした拍子にこう言いました。「とうとうおめで...
少年

初級翻訳・少年 第2話

少女もようやく、宣教師が笑った理由に気づいたのでしょうか。今は少しすねたような様子で、わざと足をぶらぶらさせています。「あなたはきっと、賢い奥さんに、そして優しいお母さんになることでしょう。ではお嬢さん、さようなら。私が降りる場所に着きまし...
スポンサーリンク