芥川 竜之介

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奉教人の死

初級翻訳・奉教人の死 第2話

シメオンも、これには気力をくじかれたのでしょう。しばらくの間、ただ戸口に立ち尽くして空を殴るように拳を振っていましたが、他の修道士たちもあわてて間に入ったため、それきり手を引きました。シメオンは、嵐がやってきそうな空のように凄まじく顔を曇ら...
奉教人の死

初級翻訳・奉教人の死 第1話

たとえ三百歳まで長生きして、この世の楽しみを味わい尽くしたとしても、永遠に続く天国の喜びに比べれば、ほんの夢か幻のようなものです。―慶長訳『罪人の導き』より―神様の教えに踏み込んだ人は、その教えの中に隠された、言葉では言い表せないほどの素晴...
枯野抄

初級翻訳・枯野抄 第3話

最後に今日は、たった今まで、刻々と死に近づいていく師匠を、どこかその経過に興味でもあるかのような、観察者の目で眺めていたのです。もう一歩進んで皮肉に考えれば、もしかするとその眺め方の裏側には、いつか自分の手で書くことになるであろう「終焉記」...
枯野抄

初級翻訳・枯野抄 第2話

其角の次に羽根楊子を手にとったのは、木節から合図をされたときからずっと落ち着きを失っていた去来でした。日頃から「礼儀正しく謙虚だ」と評判の彼は、周りに軽く会釈をしてから、芭蕉の枕元にすり寄りました。しかし、そこに横たわる老俳諧師の衰えきった...
枯野抄

初級翻訳・枯野抄 第1話

丈艸(じょうそう)、去来(きょらい)を呼びなさい。昨夜からずっと目が覚めたまま、ふと心に浮かんだことがあってね。呑舟(どんしゅう)に書き取らせたから、みんなで読んでおくれ。「旅に病んで 夢は枯野を かけめぐる」――花屋日記――元禄七年、十月...
秋

初級翻訳・秋 第5話

私は照さんさえ幸せなら、それが何よりありがたいと思っているの。本当よ。俊さんが照さんを愛していてくれれば……」言葉を続けているうちに、信子自身の心もその言葉に動かされて、だんだんと感傷的になっていきました。すると突然、照子は袖を降ろし、涙で...
秋

初級翻訳・秋 第4話

そのお茶も僕が入れたんだから」と言いました。照子は姉と顔を見合わせて、いたずらっぽくクスクスと笑いました。それでも夫に対しては、わざとらしく何も言い返しませんでした。まもなく信子は、妹夫婦と一緒に晩ごはんの食卓を囲むことになりました。照子の...
秋

初級翻訳・秋 第3話

夫は夜寒の長火鉢の向こうに、いつも明るく微笑んでいる彼女の顔を見つけるようになりました。その顔は以前より若々しく、化粧をしているのが当たり前でした。彼女は針仕事の道具を広げながら、彼らが東京で結婚式を挙げた当時の思い出などを話したりしました...
秋

初級翻訳・秋 第2話

けれど、果たして信子の結婚は、妹が想像しているような「完全な自己犠牲」だったのでしょうか。そう疑うことは、涙を流した後の信子の心に、重苦しい気持ちを広げてしまいがちでした。信子はその重苦しさを避けるために、たいていはじっと、切ない気持ちの中...
秋

初級翻訳・秋 第1話

一 信子は女子大学にいたころから、「天才肌の才女」として名が知られていました。 彼女がいずれ小説家としてデビューすることは、だれもが疑っていませんでした。中には、彼女が在学中にすでに三百枚もの長編小説を書き上げたなどと、まことしやかに噂する...
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