蘭 郁二郎

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夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第10話

もちろん、葉ちゃんの方へ飛び移るときなら、彼女の顔が見えても不思議はありません。しかし、彼女に完全に背中を向けて、命がけで反対側へ飛んでいるときにも、ごくぼんやりとではありますが、確かに葉ちゃんの顔が、まるで幻のようにテントの空中に浮かび上...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第9話

そして、仙次と入れ替わるように、安全ネットを持った裏方の人たちが、かっこいいハッピを着て三人ほど現れたところでした。黒吉は、思わず手のひらににじみ出た冷や汗を、交互にタイツの太もものあたりにゴシゴシとこすりつけました。(もし落ちたら、それで...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第8話

彼はすでに、このサーカス団で誰もが認める、文句なしの花形スター曲芸師になっていました。 十六歳といえば、サーカスの世界ではもう立派な一人前の大人です。 その上、他の誰にもできないような、空を飛ぶ恐ろしい大技を自分だけの得意技にしてしまったの...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第7話

「どう? 痛い?」葉ちゃんは、黒ちゃんの顔をのぞき込みました。「ううん」黒ちゃんは、慌てて頭を振りました。「痛いもんか!」「だって、体が震えていたんだもの。なめた方が早く治るんだって、言ったでしょう?」傷口につばをつけることは、サーカス団の...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第6話

あなた、本当に一生懸命、芸の練習をする気はある?」「やるよ! もちろんやるさ! それは、葉ちゃんと一緒にやる芸なの?」「いいえ、一緒にするんじゃないけれど……。でもね、すっごく難しい芸なの。今は誰もできる人がいなくて、ずっと昔に、源二郎おじ...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第5話

シーンと静まり返ったまわりの空気と、針のようにピリピリと張り詰めていた彼の神経には、その音が何倍にも大きく響き渡りました。黒吉の心臓は、その瞬間、ドクン!と大きな音を立てて止まってしまったかのようでした。「うぅ……」あわてて顔を上げた彼の目...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第4話

そして、ある田舎町に場所を借りて、ようやくテントの小屋を建て終わった、まさにその時でした。朝から「なんだか怪しいな」とみんなが首をかしげていた空模様が、一気に崩れ出しました。不気味な風と一緒に、大粒の雨がポツリ、ポツリと落ちてきたかと思うと...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第3話

「さあ、葉ちゃんの出番だよ!」「あら、もう私の番? 忙しいわね!」「急いで、急いで!」葉子はあわてて、持っていたお煎餅を一口かじると、衣装部屋から元気に飛び出していきました。ちょうどそこを通りかかった黒吉は、それをちらりと見ると、何を思った...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第2話

世の中の少年や少女たちが、喜々として小学校に通い始めた頃だったでしょうか。もちろん黒吉には、そんな恵まれた生活など、想像の遥か外側のことでした。しかし、この頃から黒吉は、同じ一座の幼い仲間たちの中でも、男の子と女の子を少し違った目で見つめる...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第1話

一 人里はなれた村はずれの丘に、いつの間にか、カラフルで華やかな幕がたくさん飾られた、にわか作りのサーカス小屋が建てられました。看板には「極東曲馬団(きょくとうきょくばだん)」と書かれています。にぎやかな楽隊(ジンタ)の音楽や、ヒョロヒョロ...
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