蘭 郁二郎

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夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第20話

森の木々は、まるで後ろに逃げていくように小さくなっていき、遠くの海は、時々お日様の光をギラリとはね返しています。 やがて、小さなおもちゃの箱庭のようになった地面が、どんどん遠ざかっていきます。 黒吉は、すっかり夢中になって、お祭り騒ぎのよう...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第19話

あなたに言うのは、かえって残酷(ざんこく)かもしれないけれど、あの曲芸はタイミングが命でしょう? ブランコと自分の動きがピッタリ合わなきゃ、すごく危ないわよ」「それは、わかっているけど……」「それがね、片足になっちゃったら、そのタイミングが...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第18話

どうせ足を切るなら、いっそのこと左足も、右手も、左手も、全部いっぺんに切ってしまえばよかったんだ。 だって、もう二度と、ぼくはあの空を飛ぶことはできないんだから。そうだよ、もうあの空を飛ぶことはできないんだ。 ――すると、そのときです。 黒...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第17話

視力が弱まってしまった左目だけで、遠いのか近いのかもよくわからない病室の天井をじっと見つめていると、その中に、ぽっかりと、少し表情をこわばらせた「女の人」の顔が映りました。(葉ちゃん!)霧がかかったような視界がもどかしく、パチパチと何度も瞬...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第16話

(ダメだ――)黒吉は蒼白な額を、片手で拭いました。(ダメだ、ダメだ……)どうしたことか、今日に限って、あの空に浮かぶ「白昼の夢」が映らないのです。(俺に、予言の力がなくなっちまったのか……)あれほど恐れていた「白昼の妖夢」が、かえって期待に...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第15話

あの眠っている時も起きている時も忘れられない葉子のことすら、空へ飛び立つ一瞬で振り落としてしまうほど、怪しい雲にも似た幻影は、黒吉をグイグイと力強く四次元の宇宙へと引きずり込んでいくのでした。端的に言えば、いつしかそれは「予言の夢」となって...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第14話

おどかすなよ」「ほ、ほ、ほ! 葉ちゃんじゃなくて、がっかりさせちゃったかしら、お気の毒さま!」そう言って、いたずらっ子のように体全体でクスクスと笑ったのは、黒吉が期待していた葉ちゃんではなく、同じ劇団の女の子、薗道由子でした。「何がお気の毒...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第13話

そうした考えが、「さあ、どうなんだ、どうなんだ」と責め立てるように、黒吉を恐怖と深い悩みの泥沼へと、どんどん押し込んでいくのでした。「ちぇっ、もう勝手にしやがれ!」黒吉は、口の中にねっとりとたまった、重苦しい言葉を吐き捨てました。「僕が、こ...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第12話

すると突然、サーカス小屋の向こうから、楽隊(ジンタ)のにぎやかな演奏が始まりました。そして、どこか寂しくて、消えてしまいそうなクラリネットの音色が、「ここは御国を」といった聞き慣れたメロディを、一音一音ていねいに教え込むように吹き鳴らすのを...
夢鬼

初級翻訳・夢鬼 第11話

それどころか、気のせいか、親方がときどき自分の方へ、冷たく疑うような視線を向けてくるような気がして、背中がゾクッと寒くなりました。「黒公。見つかったか? もっとも、こんな時間から探し始めて見つかるわけがないんだがな。おい、お前は一体、何を探...
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