「ちょいとばかしなげるなあ、きさまも。
」
と、大男がいいました。
「だが、こんどは、きさまにまともなものがかつげるかどうか、ためしてみようじゃないか。
」
大男は仕立屋さんを、大きなカシの木が地べたにたおれているところへつれていきました。
そして、
「きさまにほんとうに力があるんなら、おれに手をかして、この木を森のそとまではこびだしてくれ。
」
と、さそいかけました。
「いいとも。
」
と、ちびさんはこたえました。
「それじゃあ、おまえは幹のところをかつぎな。
おれは大枝を小枝ごとかつぐからな。
なんてったって、こいつがいちばんほねのおれるしごとさ。
」
こういわれて、大男は幹をかつぎあげました。
ところが仕立屋さんは、すましたもので、大枝の上にこしかけました。
大男はうしろをふりむくことができませんから、大きな木をまるごと、おまけに仕立屋さんまでもいっしょにかついでいかなければなりませんでした。
うしろにのった仕立屋さんは、まことにごきげんで、陽気なものでした。
木をかつぐのなんか、まるで子どものあそびだとでもいうように、
お馬にのった仕立屋さん
三人そろって町からでていった
と、小唄を口笛でふいていました。
大男はかなりのあいだおもい荷物をひきずっていきましたが、もうどうにもそれいじょうすすめなくなりましたので、
「おい、木をおとすぞ。
」
と、どなりました。
仕立屋さんはひらりととびおりて、両腕で木をかかえました。
こうして、いままでずっとかかえていたような顔をして、大男にむかって、
「おまえさんは大きなずうたいをしているくせに、こんな木ひとつ、かつげないのかい。
」
と、いいました。
ふたりは、それからまた、いっしょに歩いていきました。
やがて、一本のサクラの木のそばをとおりかかりました。
すると、大男はじゅくしきったサクランボのなっている木のてっぺんを、ひょいとつかんで、ひきおろしました。
そしてそれを仕立屋さんの手にもたせて、サクランボを食べるようにいいました。
でも、ちびの仕立屋さんでは、とてもその木をおさえているだけの力がありません。
ですから、大男が手をはなしますと、とたんに木ははねかえって、それといっしょに、仕立屋さんも空へはねとばされてしまいました。
それでも、仕立屋さんがけがひとつしないで、おちてきますと、大男はいいました。
「なんだ、きさまには、こんなほそい枝をおさえているだけの力もないのか。
」
「力がないんじゃない。
」
と、仕立屋さんがいいました。「おまえさん、ひと打ちで七つもやっつけた男に、こんなことがものの数にはいるとでも思ってるのかい。
おれはな、下で猟師がやぶんなかへ鉄砲をうってるから、ちょいと木をとびこえただけなのさ。
おまえさん、できるなら、おれのまねをしてとんでみな。
」
大男はやってみましたが、木をとびこすことができないで、枝のあいだにひっかかってしまいました。
こんなわけで、こんどもまた仕立屋さんの勝ちになりました。
大男はいいました。
「おまえがそれほどいさましい男だというんなら、いっしょにおれたちの岩屋へきて、とまってみろ。
」
仕立屋さんは、待ってましたとばかりに、大男のあとについていきました。
岩屋についてみますと、そこには、ほかの大男たちが火のそばにすわりこんで、めいめい丸焼きにしたヒツジを一ぴきずつ手にもって、むしゃむしゃ食べていました。
仕立屋さんはあたりを見まわして、
(こりゃ、おれのしごと場よりずっとひろいや。
)
と、思いました。
さっきの大男は、仕立屋さんに寝床をひとつきめてやって、
「それにもぐりこんで、ゆっくりねろ。
」
と、いいました。
でも、ちびの仕立屋さんには、その寝床は大きすぎました。
ですから、仕立屋さんはなかへはもぐりこんだりせずに、ほんのすみっこにはいこんでいました。
ま夜中ごろ、大男は、仕立屋さんがもうぐっすりねこんでいるものと思いました。
そこで、大男はそっとおきあがって、大きな鉄の棒をひっつかみ、それで仕立屋さんのねている寝床をひとつ、ガンとなぐりつけました。
そして、これで、あのバッタみたいなちびすけの息の根をとめたつもりでいました。
朝はやく、大男たちは森へでかけましたが、仕立屋さんのことなんか、もうすっかりわすれていました。
ところがそこへ、ひょっこり、仕立屋さんがいかにもゆかいそうに、へいきな顔をしてやってきましたので、大男たちはびっくりぎょうてんしました。
そして、仕立屋さんがじぶんたちみんなをなぐり殺すのではないかと思うと、こわくなって、おおあわてでにげていきました。
仕立屋さんは、じぶんのとんがった鼻のむくほうへ、ずんずん歩いていきました。
長いあいだ歩いたのち、とある王さまのお城の庭にはいりこみました。
仕立屋さんは、ひどくくたびれていましたので、草のなかにねころんで、そのままねむりこんでしまいました。
こうしてねているあいだに、お城の人たちがやってきて、四方八方から仕立屋さんをながめまわしました。
そして、帯に「ひと打ちで七つ」と書いてあるのを読みました。
「はてと、こんな平和なときに、この大力の豪傑はここでなにをしようというのだろう。
」
と、みんなは口ぐちにいいました。
「これはきっと、えらいさむらいにちがいない。
」
みんなは王さまのところへいって、このことを話しました。
そして、
「もし戦争でもはじまりますと、これは、きっとたいせつな、役にたつ人になると思います。
ですから、どんなことをしても、よそへおやりにならぬほうがよろしゅうございます。
」
と、意見をもうしあげました。
王さまも、この忠告をきいて、もっともなことだと思いましたので、仕立屋さんのところへおつきのものをひとりやりました。
その男は、仕立屋さんが目をさましたら、さむらいになって、王さまにつかえるようにすすめろ、といいつかったのです。
使いのものは、ねむっている仕立屋さんのそばに立って、待っていました。
やがて、ようやくのことで、仕立屋さんが、うんとひとつのびをして、目をあけました。
そこで、使いのものは、王さまからいいつかってきたことをもうしでました。
「いや、そのためにこそ、わたしはこの国へまいったのです。
いつでもよろこんで、王さまにおつかえいたします。
」
と、仕立屋さんはこたえました。
こうして、仕立屋さんはうやうやしくむかえられました。
そして、とくべつの住まいをひとついただきました。
ところが、ほかのさむらいたちにとっては、仕立屋さんがじゃまでなりません。
みんなは、こんなちびすけはどこか千マイルも遠くへいっちまえばいいのに、とひそかに思っていました。
「いったい、どうなるんだ。
」
と、みんなはいいあいました。
「おれたちがあいつとけんかをはじめるとする。
あいつが切りかかる。
すると、ひと打ちで七人やられてしまう。
それじゃ、とてもかなわん。
」
そこで、みんなはかくごをきめて、そろって王さまのまえにでて、おいとまごいをしました。
「わたくしどもは、ひと打ちで七人もうちたおすような男とは、とてもいっしょにはおられません。
」
と、みんなはもうしました。
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