それに、これまであなたに対してあんなに冷たく意地悪をしてしまったこと、本当にすまなかったと思っています」
(※注:原文の「I dread me full sore」の「me」は、話してがその話にグッと気持ちを込めて話すときによく使われる表現で、口調を強くする働きがあります。特にシェイクスピアの劇などによく見られ、自分自身を指す代名詞と大きな違いはないと知っておきましょう)
「お優しいお方、そんなふうに気にしないでください」と、ゲーレスは答えました。「あなたから嫌なことは何もされていません。これからは、あなたの笑顔というお日様の光を浴びて、これまで以上に素晴らしい戦いをお見せしましょう」
こうして、ふたりはすっかりウキウキとした元気いっぱいの気持ちで馬を進め、お昼を過ぎたころ、不気味でどんよりとしたお城にたどり着きました。すると、そのお城の中から、戦いを盛り上げる勇ましい音楽が鳴り響いてきたのでした。城の入り口のすぐそばにはスズカケノキの大木が立っていて、その木には、ふたりがこれまでに見たこともないほど大きなおそろしい象牙のラッパがぶら下がっていました。
リネツトは言いました。「あのラッパをあそこに掛けたのは、『赤き地の騎士』です。もし通りすがりの旅の騎士が戦いを望むなら、あのラッパを吹かなければなりません。そうすれば、赤き騎士が出てきて勝負をしてくれるのです」
「ですが、どうかお願いですから――」リネツトの口調はすっかり丁寧になっていました。「いまは吹かないでください。夜になるまで待ってください。というのも、いまから日没までのあいだ、あの騎士は七人分の力を持っているのです。でも、その時間を過ぎれば、彼本来の力しかなくなりますから」
「ああ、お方さま」と、ゲーレスは叫びました。「そんな弱気なことは言わないでください! 彼がどんな力を持っていようと関係ありません。私はあなたの姉君を必ず救い出します。さもなければ、ここで命を落とすだけです」
そう言うと、ゲーレスは愛馬をスズカケノキへと走らせ、城じゅうが鳴り響くほどの強烈な勢いでラッパを吹き鳴らしました。
すると、赤き騎士は大急ぎで鎧兜を身につけました。なんとその姿は、鎧も、槍も、盾も、すべてが鮮やかな真っ赤な血の色に染まっていたのです。
こうして彼は、ゲーレスと戦うために城門から威勢よく馬で駆け出していったのでした。「お方さま」と、リネツトは言いました。「どうか気をしっかり持って、勇気を奮い立たせてください。あなたの命を狙う手強い敵がやって来ます。それに、あそこの窓に見えるのが、彼にとらわれている私の姉君、リオノルス姫です」
「彼女は、私が今まで見たなかでも――ただ一人の人を除けば――いちばん美しいお方だ」と、ゲーレスは言いました。「そして、彼女のために戦えることを、私はとても誇りに思う」
そう言って彼はパッと明るい笑みを浮かべて上の窓を見上げると、リオノルス姫も笑顔を返し、手を振ってこたえました。
すると、赤き騎士は大声で叫びました。「おい騎士殿、いつまで窓ばかり見ているんだ、私に気をつけろ! あの姫は私のものだ。私は彼女のために、これまで何度も激しい戦いをくぐり抜けてきたのだからな」
「そうかもしれないな」と、ゲーレスは言いました。「だが姫は、きみと一緒にいることなど少しも望んではいないはずだ。そうでなければ、きみをやっつけてほしいなんて助けを求めて人を寄こしたりはしないだろう。私はどんなことをしても、きみの手から姫を救い出す。さもなければ、この戦いで命を落とすまでだ」「お前、あらかじめ警告しておくがね」と、赤き騎士は言いました。「あそこの木立を見てみろよ」
なんとそこには、四十人もの騎士たちの死骸がぶら下げられていたのです。首には盾と剣がかけられ、かかとには金色の拍車がつけられたままでした。
「この勇敢な騎士たちもな」と、赤き騎士は不気味な笑みを浮かべて言いました。「かつてはお前と同じ目的でここにやって来た連中だ。お前も彼らの仲間入りをしたいかね? まあ、首を吊るす木くらい、もう一本くらい見つけてやれるさ!」
「覚悟しろ!」と、ゲーレスは怒りに燃えて叫びました。「もうこれ以上、お前と言葉を交わす気はない!」
彼はリネツトに安全な場所まで離れて待つように頼むと、次の瞬間、二人の騎士は激しい勢いで猛然とぶつかり合いました。
ああ、それはそれは長くて厳しい大激戦でした。ゲーレスがこれまで戦ったどんな戦いよりも、はるかに最悪の戦いでした。というのも、その邪悪な騎士は七人分もの怪力を持っていたからです。
突然、ゲーレスは地面に倒れ込み、どうしても起き上がれそうにありませんでした。すると赤き騎士は彼を押さえ込もうと、その上に覆いかかかりました。
それを目撃したリネツトは、思わずわっと泣き出し、こう叫びました。
「ああ、ボーメンズ卿! 私たちが頼りにしていたあなたの力は、いったいどうなってしまったのですか!」その言葉を聞いた瞬間、ゲーレスの体の中に、まるで燃え盛る炎のような力がみなぎりました。彼は自分を押さえ込んでいた敵を力いっぱい跳ね飛ばすと、すぐさま跳び起き、再びものすごい勢いで敵に襲いかかりました。ゲーレスの繰り出す攻撃はあまりにも速く、そして激しかったので、赤き騎士の剣は手から弾き飛ばされてしまい、ほんの一瞬のうちに、赤き騎士は地面に倒れて身動きが取れなくなってしまいました。
「ああ、気高き騎士よ、あなたの慈悲にお許しを乞います……」と、赤き騎士は苦しそうに息を切らしながら言いました。
するとゲーレスは言いました。「お前があまりにもひどいやり方で殺してきた、あの勇敢な騎士たちのことを思えば、お前の命を助けるわけにはいかない」
「どうかその剣を止めてください」と、負けた騎士は言いました。「そうしていただけるなら、なぜ私が彼らをあんなふうに扱ったのか、その理由をお話しします。私にはかつて愛する美しい乙女がいたのですが、彼女の兄弟が殺されてしまったのです。彼女は、それをやったのはサー・ランスロットかサー・ガウエーンにちがいないと言い、私にこう約束させました。『毎日アーサー王の宮廷から騎士たちを探し出し、兄弟の復讐として、誰もが恥じるような無様な死を与えてほしい』と……」
その時、たくさんの貴族や騎士たちがゲーレスのもとにやって来て、どうか赤き騎士の命を助けてやってほしいと、口々に頼み込んだのでした。「よし、赤き騎士の命を助けてやろう」と、ゲーレスは言いました。
「特に、彼がやったひどい行いはすべて、あるお姫様から頼まれてやったことなのだからな。それに、彼は心を入れ替えて、すぐさまリオノルス姫のところへ行き、お許しを乞うがよい。そして、大急ぎでこのお城から立ち去るのだ。
また、自分の家来たちを引き連れてアーサー王の宮廷へ赴き、騎士道を汚してしまったその非道な行いについて、王様に心からお許しを乞うべきである」
リオノルス姫は、自分のために戦ってくれたこの勇敢な英雄に心から感謝し、彼と結婚することだってできたはずでした。しかし、ゲーレスの心はすっかり、気の強いリネツトの方へと向いていたのです。
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