初級翻訳・ナイチンゲール 第3話

アンデルセン ハンス・クリスチャン

そして、この作り物の鳥を持ってきた男は、さっそく「宮中ナイチンゲール持参人」という肩書きをいただきました。
「では、二羽の鳥を一緒に歌わせてみよう。きっと素晴らしい二重唱になるはずだ」
こうして二羽の鳥が一緒に歌うことになりました。ところが、さっぱりうまくいきません。本物のナイチンゲールは自分の好きなように歌いますし、作り物の鳥はワルツしか歌えないのですから。
「この鳥には何の罪もございません」と楽長が言いました。「拍子も正確ですし、わたくしの流儀にもぴったり合っております」
そこで、今度は作り物の鳥が一人で歌うことになりました。
すると、作り物の鳥は本物のナイチンゲールと同じように見事に成功しました。いや、見た目では本物よりもずっと美しく見えました。まるで腕輪やブローチのように、キラキラと輝いていたからです。

作り物の鳥は、同じ歌を三十三回も歌わされました。それでも、少しも疲れることはありませんでした。人々は「もう一度最初から聞きたい」と言いましたが、皇帝は「今度は生きている本物のナイチンゲールにも何か歌わせよう」と言いました。
ところが、あの鳥はどこへ行ったのでしょう? 姿が見えません。いつの間にか開いていた窓から飛び出し、緑の森へ帰ってしまっていたのです。けれども、そのことに誰も気がついていませんでした。
「いやはや、なんということだ!」と皇帝は言いました。
宮中の人たちは口々にナイチンゲールの悪口を言い、「なんて恩知らずな鳥だ」と怒りました。
「だが、わたしたちのところには一番いい鳥がいる」と人々は言いました。

こうして、作り物の鳥がまた歌わされることになりました。これで三十四回目です。歌う曲はいつも同じなのですが、まだ誰もその歌をすっかり覚えることはできていませんでした。それほどに難しい歌だったのです。
そんなわけで、楽長はこの鳥をほめちぎりました。
「たしかに、この鳥は本物のナイチンゲールよりも優れています。身に付けているものにしても、たくさんの美しいダイヤモンドにしても、そればかりか体の中の仕組みにしても、間違いなく優れているのです」
「と申しますのは、陛下、および皆々さま。本物のナイチンゲールの場合、次にどんな歌が飛び出してくるのか、わたくしどもには見当もつきません。ところが、この作り物の鳥の場合には、すべてがきっちりと決まっております。しかも、いつも決まった通りで、それ以外になることは決してございません。わたくしどもは、その仕組みをすべて説明することができるのでございます」中を開いて見せれば、人間がどのような工夫をこらしたのか、誰にでも一目瞭然でございます。
たとえば、ワルツのメロディがどのような仕組みで組み込まれているか、どうやって動くのか、また、どの曲のあとにどの曲が流れるのかといったことも、すべて明らかにできるのでございます」
「わたくしも、全く同感です」と、みんなは口々に言いました。
楽長は、次の日曜日にこの鳥を国民に披露してもよい、という許可を皇帝からいただきました。
「では、さっそくその歌をみんなに聞かせてやるがよい」と、皇帝は言いました。
人々はその歌を聞くと、まるで温かいお茶に酔いしれたかのように、うっとりと楽しい気分になりました。
この「お茶に酔う」という表現は、いかにも中国式な言い回しですね。
みんなは「オー!」と感嘆の声を上げ、人差し指を空に向けながら、「これぞ最高のつまみ食い(極上の体験)だ」と言わんばかりに深くうなずきました。
けれども、本物のナイチンゲールの歌声をかつて聞いたことのある、あの貧しい漁師たちだけは、こう言いました。
「たしかにいい声だし、姿もよく似ている。
だが、なんとなくもの足りないな。
それが何なのかは、うまく説明できないんだが」
本物のナイチンゲールは、ついにこの国から追い出されてしまいました。
作り物の鳥は、皇帝の寝台のすぐそばに、絹のふとんを敷いてもらって、そこに鎮座することになりました。
各地から献上された金や宝石が、その周りにきらびやかに飾られました。
作り物の鳥には「皇帝のご寝室付き専属歌手」という名誉ある称号が与えられ、序列は左側第一位にまで昇進しました。
皇帝は、心臓のある左側のほうが右側よりも大切で優れていると考えていたからです。
まあ、皇帝であっても人間ですから、心臓は左側にありますからね。
楽長は、この作り物の鳥について二十五冊もの本を書き上げました。
その本は非常に学問的で、果てしなく長く、おまけに、とんでもなく難しい中国の古語で書かれていました。
それでも、みんなはそれを読んで「すべて理解した」と言いました。
なぜなら、そう言わなければ「教養のない馬鹿者」扱いをされて、お腹を叩かれてしまうからです。
こうして、まる一年が過ぎました。
いまでは皇帝も、宮中の人たちも、その他の中国人たちも、みんなこの作り物の鳥が歌う曲なら、どんな小さな節回しでもすっかり空で覚えてしまいました。
だからこそ、みんなはこの鳥を世界で一番素晴らしいものだと思い込んでいたのです。
やがて、みんなは一緒に歌うこともできるようになりました。
そして実際、みんなで声を合わせて歌いました。
通りの子供たちまで、「チ、チ、チ! クルック、クルック、クルック!」と楽しそうに歌ったのです。
皇帝も、一緒になって歌いました。
――本当に、これ以上ないほど楽しい時間でした。
ところが、ある晩のことです。
作り物の鳥がいつものように上手に歌い、皇帝が寝台の中で心地よく耳を傾けていたとき、急に鳥の体の中で「プスッ」という音がしました。
そして、何かが勢いよく跳ね飛びました。
するとたちまち、歯車という歯車が「ブルルル!」と空回りをして、音楽がぷっつりと止まってしまったではありませんか。
皇帝はすぐさま寝台から飛び起きて、お医者様を呼びました。
でも、お医者様に何ができましょう! そこで今度は、時計屋を急いで呼び寄せました。
時計屋はあれこれと尋ねたり調べたりした末に、どうにか元のようになおしました。
ところが、
「今後は、よほど大切に扱っていただかなくては困ります。
拝見したところ、内部の心棒がすっかりすり減っております。とはいえ、音楽が以前のように滑らかに鳴るよう、新しい心棒に交換するというわけにもいきませんので」とのことでした。
さあ、なんという悲しい災難でしょう! これからは、この作り物の鳥の歌を、一年にたった一度しか聞くことができなくなったのです。
おまけに、それさえも厳しく言えば「多すぎる」という始末でした。
それでも楽長は、難しい言葉を並べ立てた短い演説を行い、これでも以前と同じくらい素晴らしいものだと申しました。
たしかにそう言われてみれば、以前と変わらず良いもののように思えてくるから不思議です。
いつのまにか、五年の年月が経ちました。
今度は国中が、本当に大きな悲しみに包まれました。
国民は誰もが皇帝を心から慕っていましたが、その皇帝が病に倒れ、世間の噂では「もう長くはないだろう」と言われていたからです。
すでに新しい皇帝も選ばれていました。
人々は表の通りに出て、皇帝のご容態はいかがですか、と侍従に尋ねました。

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