初級翻訳・ワンダ・ブック――少年・少女のために―― 第3話

ホーソーン ナサニエル

彼はこうして活字になるような話をしたことを、非常な名誉だと思っているからです)――彼の名はユースタス・ブライトといったのです。
彼はウィリアムズ大学の学生で、たしかこの時にはもう十八歳にもなっていたかと思います。
だから彼は、ペリウィンクル、ダンデライアン、ハックルベリ、スクォッシュ・ブロッサム、ミルク・ウィード、その他、彼の半分か三分の一くらいの年齢の子供たちに対しては、まるでお祖父さんのような気分でいたのです。
彼は少し目を痛めて(今日の学生たちは、熱心に勉強した証拠として、そんなふうに目を痛めるのを必要なことのように考えているらしいですが)、学期が始まってから一、二週間学校を休まなければなりませんでした。
しかし私などは、ユースタス・ブライトほど、遠くも近くも実によく見えそうな目を持っている人には、めったにお目にかかれないような気がしてならないのです。この博学な学生は、ほっそりとした体つきで、アメリカの大学生がみんなそうであるように、顔色は少し青白かった。
そのくせとても健康そうで、まるで靴に翼が生えているのかと思われるほど、身軽で活発だった。
それに、小川を飛び越えたり、草原を歩き回ったりすることが何よりも好きなので、今日の遠足にも、ちゃんと丈夫な牛の皮でできた深靴を履いて来ていた。
彼はリンネルのゆったりとした服を着て、羅紗(らしゃ)の帽子をかぶり、緑色の眼鏡をかけていた。もっとも、この色眼鏡は、目が悪いからというよりも、かけているとなんだか偉そうに見えるという、伊達(だて)心からかけていたのだろう。
しかし、いずれにしても、彼はそれを別にかけなくともよかったのだ。
何故なら、小さないたずらっ子のハックルベリが、玄関の段に腰かけている彼のうしろへそっと回り込み、彼の鼻から眼鏡をひょいと外して、自分でかけて遊んでいるうちに、彼が取り戻すのを忘れてしまい、そのまま草むらの中へ落としてしまったのが、翌年の春まで見つからないままだったようなわけなのだから。

さて、ここで是非言っておきたいのは、ユースタス・ブライトが、不思議な物語の語り手として子供たちの間で大変な人気があるということだ。子供たちが「もっともっと」といつまでも際限なくせがむと、たまには少し嫌な顔を見せることもあるけれど、彼がそうした不思議な話をして聞かせること以上に好きなことがあるかどうかは、疑わしいものだ。
だから、クロウヴァやスウィート・ファーンやカウスリップやバタカップや、その他彼らの仲間の大部分が、霧の晴れ上がるのを待つ間、「何かお話をしてちょうだい!」と彼にせがんだ時、彼の目がキラキラと輝いたことは、読者のみなさんも想像できるだろう。

「そうよ、ユースタスお兄さん」と、笑ったような目に、少し上を向いた鼻をした、十二歳になる利口な少女のプリムロウズが言った。
「あなたがいつも、あたしたちが根負けするくらい素敵なお話をしてくださるのに、朝ほどいい時間はないわ。一番面白いところでお昼寝をしてしまって、あなたに怒られる心配がないんですもの――小さなカウスリップとあたし、昨夜はそうだったでしょ」

「意地悪なプリムロウズ!」と、六歳になるカウスリップが叫んだ。
「あたし、お昼寝なんてしてないわよ。ただ、ユースタスお兄さんのお話している光景が見えるかと思って、目をつぶっていただけよ。お兄さんのお話は、夜聞いてもいいわ。だって、寝てからその夢が見られるんだもの。それから朝だっていいわ。その時は、起きたまま夢のような気分でいられるんだもの。だからあたし、お兄さんが今すぐお話してくださるといいと思うわ」

「小さなカウスリップ、ありがとう」とユースタスは言った。
「いいとも、僕が考えついた一番いいお話をしてあげよう。意地悪なプリムロウズに対して、カウスリップがこんなにも僕の肩を持ってくれたことだけのためにもね。しかし、みなさん、僕はこれまでにもあんまりたくさん君たちにお伽話をしてあげたので、少なくとも二度以上していない話なんて、もう残っていないんじゃないかな。もし僕がその中の一つをまた始めたら、なんだか君たちは本当に眠ってしまいそうだね」

「そんなことはない、ない、ない!」と、ブルー・アイやペリウィンクルや、プランティンや、その他五、六人が叫んだ。
「あたしたち、前に二、三度聞いた話なら、なおのこと好きなんです」

そして、子供たちの場合に限って言えば、物語というものは二度や三度はおろか、幾度でも繰り返せば繰り返すほど、興味が深くなっていくものだということは事実である。
しかし、物語の種をいくらでも持っているユースタス・ブライトは、もっと年上の語り手なら喜んで飛びついたかもしれないこうした好機を、甘えて利用することはよしとしなかった。

「自分の頭で話を作り出す力はいうまでもなく、学問も僕ほどある人間が、一年を通じてたった一日でも、君たち子供のために新しい話ができないようじゃ情けない」と彼は言った。
「だから今日は一つ、われわれの大きなお祖母さんともいうべきこの地球が、まだよだれかけをかけていたような大昔の時代に、人々が喜んで聞いたようなお話をしてあげよう。そんなお話なら百ほどもあるんだが、それがどうしてとっくの昔に少年少女のための絵本にならなかったのか、僕には不思議なくらいだ。それどころか、そんなお話を、白いお髭を生やした偉い学者さんたちが、ギリシャ語の黴(かび)臭い本の中で研究しては、それがいつ、どうして、何のためにできたかなんて、頭をひねっているだけなんだからね」

「まあいいよ、まあいいよ、ユースタスお兄さん!」と子供たちはみんな一緒に叫んだ。
「話の説明はもういいから、始めてください!」

「じゃあ、一人残らず座って」とユースタス・ブライトは言った。
「そしてみんな、二十日鼠(はつかねずみ)のように静かにしてらっしゃい」たとえそれが、大きないたずらっ子のプリムロウズからでも、小さなダンデライアンからでも、あるいは他の誰からでも、少しでも邪魔が入ったら、僕はお話を途中でやめて、あとはもう二度と言わないことにするよ。
しかし、はじめにちょっと訊いておくけれど、君たちのうちで誰か、「ゴーゴン」というものがどんなものか知っている人はいるかな?」
「あたし、知ってるわ」とプリムロウズが言った。
「じゃあ、黙っていて!」とユースタスが言った。
彼は、彼女がそんなことを知らないでいてくれた方がよかった、と思ったんだ。
「みんな、静かにして。僕がゴーゴンの首についての、面白くて素敵なお話をしてあげるからね」

そして彼は、読者がこの先のページから読み始められる通りに、お話を語り出した。
彼は大学二年生の学識をもとに、豊富な才気を働かせ、アンサン教授のおかげを大いに蒙(こうむ)りながら、それでいて自分の空想の奔放な大胆さが命じる場合には、すべての古い典拠を無視して、話を進めていった。

【ゴーゴンの首】

パーシウスは、ある王様の娘ダネイの子でした。
そしてパーシウスがまだほんの小さな子供の頃、悪い人たちが、お母さんと彼を箱に入れて、海へ流してしまいました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました