「あるにはありますが、自分のやった恥ずかしいことを暴かれては、どう言ったものか。ここに手紙があります、ソウムズ先生、今朝早くに渡そうと夜も眠れずに書いたものです」罪がばれたと知るより前に。
どうぞ。
ご覧になればわかりますが、こう記しました。
『ぼくは試験に出ないと心に決めました。
ローデシア警察に招かれておりまして、すぐにでも南アフリカへ行くつもりです。
』
「実に嬉しいよ、君が不正で人を出し抜くつもりがないとわかって。」とソウムズ。
「だがどうして心変わりを?」
ギルクリストはバニスタを指し示す。
「ぼくを正しい道に戻してくれた男がいるのです。」
「さあこっちへ、バニスタ。」とホームズ。
「もうわかっているね、さきほど言ったように、君だけがこの青年を逃がせたのだ。
何より君はこの部屋に残され、出て行く際、扉に鍵を掛けたに違いない。
とはいえ窓から彼が抜け出たとも思えない。
この最後の謎を明らかにしてくれないだろうか。
その行動の理由とともに。」
「ごく簡単なことでございます、気づきさえすれば。
ですがあなたさまの頭脳をもってしても、おわかりにはならなかったのですね。
かつて、わたくしめはなつかしきギルクリストさま、この若さまのお父上の執事でございました。
旦那さまは落ちぶれ、わたくしめは使用人としてこの学寮に参りましたが、たとい零落したからといって、かつての雇い主のことは片時も忘れたことがございません。
わたくしめは、かつてのよしみでできうる限りこのご子息を見守っておりました。
ところが昨日この部屋に入ったとき、つまり呼び出されたときでございますが、初めに目に入ってきたのが椅子に置かれたギルクリストさまの革手袋で。
その手袋には見覚えがございまして、その意味するところも理解致しました。
ソウムズさまが見つけたらすべてはおしまいでございます。
わたくしめはあの椅子に座り込み、ソウムズさまがあなたさまの元へ向かうまで、ぴくりとも動きませんでした。
そのあと不憫な若さまが出ていらっしゃいましたので、わたくしめがひざまづいてすがりますと、すべてを白状してくださいました。
若さまをお助けすることは、道理に反することでございましょうか。
亡きお父上に代わって、そのような行為で人を出し抜いてはいけないと、お諭し申し上げることが、理にかなわぬことなのでしょうか? それでもお咎めになりますか!」
「するわけがない。」とホームズは暖かい声をかけ、勢いよく立ち上がる。
「さてソウムズ、これであなたのささやかな問題も晴れたかと。
我々も朝食がうちで待っております。
行こう、ワトソン! さて青年、君についても明るい未来がローデシアで待っていると信じている。
一度は落ちた男が、将来どんな高みに上り詰めるか、我らに見せつけるがいい。」
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