初級翻訳・二十六夜 第3話

二十六夜

すると爾迦夷は、両方の翼を広げ、かしこまって首を垂れ、座っていた場所から降りて、低く飛び回りながら疾翔大力さまを三度まわってほめたたえ、ゆっくりと座に戻ってひざまずき、『どうか、疾翔大力さま、疾翔大力さま。私たちのために、その道を説いてください。どうか、私たちのためにお教えください』とお願いしました。
疾翔大力さまは微笑んで、金色の円光が頭を包み込むと、その光がその場全体を照らし、集まった鳥たちは喜びでいっぱいになりました。
そこで説かれました。
『お前たちは、ひどい悪事を繰り返している。夜の闇に乗じて小さな鳥の家を襲う。小さな鳥たちは、一日中日光を浴びて、歌ったり跳ねたりして疲れ果て、ただただ甘い眠りの中にいる。そこへお前たちが飛びかかって捕らえるのだ。鋭い爪が深く身に食い込み、小さな鳥たちは苦しみのあまり声も出せない。そしてお前たちは、それを引き裂いて自分の好きなように食べてしまう。
あるいは沼地に行って、貝やカタツムリを食べる。貝たちは泥の中にいて、心も柔らかく、ただ温かい水を求めているだけなのに、突然空から襲われて体が砕かれ、苦しみのあまり悶え苦しむ声も出せない。お前たちはそれを食べて、少しも反省することがない。
このような悪事を、数え切れないほど行っている。悪事をするから、また次の悪事を重ねることになる。次から次へと終わることがない。昼になれば日光を恐れ、人間や強い鳥を恐れる。心は少しも安らぐことがない。一度フクロウとしての命を終えても、また新しくフクロウに生まれ変わる。ひたすら苦しみを受け続け、終わることはない』。

前の講義では、身を捨てて救う菩薩さまをなぜ疾翔大力と呼ぶのか、そしてその願いが叶うまでの因縁をお話ししたはずじゃ。次に『爾迦夷に告げて曰く』とある。この爾迦夷というのは、この時わしらと同じフクロウのことじゃ。わしらのご先祖さまと一緒に住んでいらっしゃったお方じゃ。
今でも爾迦夷上人(しょうにん)さまとお呼びして、毎月十三日がご命日となっている。どこの家でも、フクロウの仲間なら十三日には楢(なら)の木の葉をくわえてきて、爾迦夷上人さまにお供えするということをやる。これは爾迦夷さまが楢の木にお住まいだったからなのじゃよ」この爾迦夷(にかい)さまは、ずっと昔から「フクロウとして生きることは、なんて悲しくつらいことなのだろう」と深く感じておられ、この苦しみから抜け出す道を探し求めておられました。そのひたむきな願いが通じたのか、ついに疾翔大力(しっしょうだいりき)さまと出会い、尊い教えを授かって、天の世界へ行くことができたのです。
このお話は、そんな爾迦夷さまに向けた説法です。
「しっかりと聴きなさい、しっかりと聴きなさい。
よく考えを巡らせなさい」
心を静めて、じっくりと耳を傾けなさい、という意味ですね。
どんなお説法の席であっても、心を落ち着かせてしっかりと聴くことはとても大切です。
上の空で聴いていては、何の意味もありませんからね。

ところがその時、さっき喧嘩をしていた二羽の子フクロウは、もう説教を聴くのに飽きてしまい、お互いににらめっこを始めていました。
そこは枝が茂っていて真っ暗でしたが、二羽とも限界まで目を大きく見開いていたので、まるで火の粉を散らしたようにギラギラと青く光っていました。
そしてとうとう、二羽は同時に吹き出して、こう言ったのです。
「君の目、すっごく大きいねえ」
その声は、幸運なことに耳の少し遠いフクロウのお坊さんには聞こえませんでしたが、周りのフクロウたちはみんな、そちらを振り向きました。
兄弟の穂吉(ほきち)というフクロウは、それをとても恥ずかしく思い、もじもじしながら、じっと頭を垂れていました。
二羽はみんなの視線を避けるように枝の影に隠れながら、ささやき合いました。
「ねえ、もう逃げ出して遊びに行こうよ」
「どこへ?」
「実相寺(じっそうじ)の林さ」
「行こうか?」
「うん、行こう。穂吉ちゃんも行かないか?」
「ううん、行かない」穂吉は首を振りました。
「『我今(われいま)、汝(なんじ)に、梟鵄(きょうし)諸(もろもろ)の悪禽(あくきん)、離苦解脱(りくげだつ)の道を述べん』ということは……」説教がまた続きます。
二羽はもうそっと逃げ出してしまいました。穂吉はますます姿勢を正して、兄弟三人分の分まで一人で聴こうとするような健気な様子でした。

次の日の六月二十五日の晩のことです。
昨日と同じ時刻だったのに、説教はまだ始まっていませんでした。あのお坊さんフクロウは目を閉じて黙ったまま、説教の木の高い枝にとまっていました。周りに集まったたくさんのフクロウたちも、なぜかみんなひどく興奮している様子でした。
女のフクロウの中には泣き出している者もいましたし、男のフクロウは、もう我慢ができないといった様子でイライラとしていました。
それに、あの昨日の三人兄弟の家族の中で一番高い場所にいるおじいさんフクロウは、もう泣きすぎて目が腫れ上がり、頬が時々ピクピクと震え、涙が声もなくその赤い目からこぼれ落ちていました。
もちろん、お母さんフクロウもしくしくと泣き続けていました。
乱暴者の二羽の兄弟も不思議なことにその晩は行儀よく座り、大きな目をじっと下に落としていました。
お父さんフクロウは、しきりに西の方を見つめています。
……でも、どうしたことでしょう。あのおとなしい穂吉の姿が見えません。
風が少し吹いてきて、松の梢が静かに揺れました。
空には所々、雲が浮かんでいるようでした。星がまるで目隠しでもされたかのように、黒くて光っていなかったからです。
突然、西の方から一羽の大きな茶色のフクロウが飛んできました。
そしてみんなが集まる入り口の低い木にとまり、声を潜めて言いました。
「やっぱり、もう駄目だ。穂吉さんもあきらめているようだよ。さっきまではバタバタと暴れていたけれど、今はもうおとなしく臼(うす)の上にとまっている。それから、紐の様子が変わったようだ。前は右足だったけれど、今度は左足に結びつけられていて、しかも紐の色が赤いんだ。……でも、一つだけいいことがあるよ。みんなはもう大抵寝てしまったんだ。さっきまで穂吉さんの目を指で突っつこうとしていた子供たちも、今は服をはだけて、大の字になって寝ているよ」

穂吉のお母さんフクロウは、まるで火がついたように声を上げて泣き出しました。
それに釣られて、林の中の女のフクロウたちもみんな「シイン、シイン」と泣きました。
お坊さんフクロウは、じっと星空を見上げてから、静かに問いかけました。
「この世界は、全くこの通りなのじゃ。ただもう、悲しいことばかりが起きる。どうしてまた、あんなにおとなしい子が、人間に捕まるような場所に出てしまったのじゃろうなあ」
説教の木の隣にいたネズミ色のフクロウが、うやうやしく答えました。
「今朝、夜明け近くなってから、兄弟三人で出掛けたそうでございます。いつもは人が来るような場所ではなかったのですが。そのうちに朝日が出てしまい、眩しさのあまり三羽とも、しばらく目を閉じていたそうでございます。

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