初級翻訳・人造人間戦車の機密 第3話

人造人間戦車の機密

天下にその名を轟かせる金博士の発明品に、実際に作ってみて動かないとか、組み合わせても機能しないだなんて、そんなインチキなことがあろうはずがございません。
現に、私が博士の元を去るときに、博士からこの人造人間戦車の模型を見せていただきましたが、それはそれは見事に動きましたぞ。
実に大したものでした」
「お前は、自分で実際に動かしてみたのかね?」
「はい。
もちろん上海でやってみましたとも。
戦車を動かすのは『渦巻気流式エンジン』というもので、これが実に素晴らしいエンジンなのですな」
「渦巻気流式エンジンとは、いったいどんなものじゃ?」
「これは金博士の発明の中でも最高峰のものだと思いますが、つまり、気流というものは決してまっすぐ進むのではなく回転する性質を持っていまして、その回転する力を利用して一種の摩擦電気を作り出すのです。
そして、その電気を使って今度は宇宙線をねじ曲げ……」
「ああ、もういい!
渦巻気流というものを応用するんだと、簡単に言えばいいんだよ」
 難しい話で頭が痛くなるのは、頭の大きな醤主席にとっては大の苦手だった。
渦巻気流式エンジンはもうすっかり完成していて、すでに倉庫には一万台分のエンジンが保管されていると聞かされ、主席はやっと機嫌を直したのであった。
二人が夢中になって話し込んでいたため、全く気づかずにいたが、ちょうどそのとき、彼らの後ろにある塀の上から、肌の黒いオーストラリア先住民族の首が五つ、じっとこちらを覗き込んでいたのである。
もちろん、その首の下にはしっかりとした胴体や手足がついており、彼らはきょとんとした目で、山のように積み上げられた人造人間たちを怪訝そうに見つめていたのだった。4

「おい、大変だ、大変だ!」
 5人の先住民族の斥候たちは、お酒を飲んでいる村長のところへ、ものすごい勢いで飛び込んできました。
「なんだ、そんなに騒がしく」
「大変なんです、本当に大変なんですよ!
あの醤(しょう)とかいう東洋人の大きなお屋敷の中には、死体が山のように積み上げられているんです。
あの東洋人は弱そうな顔をしていましたけど、あれはとんでもない人食い人種に違いありません。
とんでもないやつらが引っ越してきたものです!」
「なにっ、それは本当なのか? 死体が山のように積んであるって、いったいどのくらいの数だ?」
 村長は、持っていた盃をポロッと取り落とし、自分の胸をぎゅっと押さえました。
「その数はですね、ものすごくたくさんなんです。
ええと、どれくらいだったかな……」
「そうさ、あれはとんでもない数なんだ。
9個と、もう9個と、さらに9個と、また9個と、まだまだ9個と9個と9個と……!」
 斥候は、額からタラタラと汗を流しながら、なんだか変な数え方をしました。
それを聞いていた村長の方まで、だんだん冷や汗が出てきました。
「もう、そのへんでいいだろう。
お前の言う通りなら、それは途方もない数だな。
いわしが生まれてこの方、この目で見た鳥の数よりも多いらしい。
よし、こうしてグズグズしている暇はないぞ。
みんなの者、戦争の準備をしろ!」
「えっ、戦争の準備ですか……?」
「そうだ、あの醤将軍と戦うんだ!
わが村のまじめで元気なお前たちやわしが、あいつらに殺されて死体にされる前に、あの醤将軍の一味を、逆にみんな死体にしてやるのさ。
前からどうも、嫌なやつらだと思っていたんだ。
あいつは、おれたちの土地から何頭のカンガルーを盗んでいったかわからない。
その代金も、ここでまとめて払ってもらうことにしよう!
さあ、太鼓を鳴らせ、のろしを上げろ!」
「はーい!」
 思いがけないことから、あっという間に不気味な戦いの雲が、日曜日(サンデー)の砂漠の空にどんよりと立ちこめました。
村のこの大騒ぎは、醤将軍の耳にもすぐに入りました。
醤主席は、重工業地帯から少し離れたところにある高い見張り台にのぼり、村の様子をじっと見渡しました。
ドンドンと鳴る太鼓は、なぜかものすごく不気味な音を響かせています。
9本ののろしは、まるで竜巻のコンテストのように、大地から大空へと激しく突き上げています。
その合図を受け取った先住民族たちが、砂漠の東から西から、南から北から、まるでアリスの行列のようにゾロゾロと集まってくるのが見えました。
なんというすごい数でしょう!
1千や2千ではありません。
すくなくとも何万人という、とてつもない数の先住民族でした。
醤主席はこれを見て、さすがに少し顔色を変えましたが、すぐに「いかんいかん」と思い直し、痩せた肩をいばって無理やりニッコリと笑顔を作りました。
「ははは! たとえ何万人の先住民族が攻めてきても、わしには人造人間戦車隊があるのだ。
鋼鉄で作られた人造人間にピッと命令電波を送れば、あっという間に頑丈な戦車に変身して、お前たちをイチゴクリームみたいにペチャンコに潰してくれるわ!
わが機械化軍団のすごさを、今に思い知らせてやるぞ!」
 そこまでは威勢のいい声を出してカッコよくポーズを決めましたが、そのあとで急に弱気な声になり、
「……しかし、本当に大丈夫かなあ。
油学士のやつ、落ち着き払って部品を作って数は揃えたものの、いまだに一度もテストをしていないんだぞ。
電波のスイッチを入れた途端、うまくスクラムとやらを組んで戦車になってくれればいいが、万が一、人造人間たちがただボーッと歩くだけだったら……その間に先住民族の軍勢に頭の上を飛び越えられて、うちの陣営まで攻め込まれてしまうぞ。
うーむ、こんなにわしをハラハラさせるあの油学士め、憎らしくて仕方のないやつだ!」
 そのとき、後ろで「エヘン!」と大きな咳払いが聞こえました。
主席がハッとして振り返ってみると、いつの間に現れたのか、そこにはまさにその油学士が、なぜか胸をそっくり返してドーンと立っていたではありませんか。
「おや、醤主席。あなたがそんなに心配されるのは、ひとつには私を信用していないから、ふたつには金博士を信用していないからでありますぞ!
金博士が設計したもので、これまでに一度たりとも動かなかったなんて恥ずかしい話は聞いたことがありません。
主席、あなたのその疑い深い態度を改めないかぎり、あなたは金博士を侮辱し、科学を侮辱し、そして技術を侮辱し、さらに……」
「もうやめろ!
お前はまるで副主席にでもなったような、生意気な口のきき方をするな。見苦しいぞ。
わしは今まで黙っていたが、今回の人造人間戦車が大成功してすごい成果を出したら、お前を引き立てて副主席にしてやろうと考えておるのだ。
だが、その成果が出るまでは、お前はただの一般の責任者にすぎん!
――どうなんだ。
本当に大丈夫なのか? 準備は間に合うのか?」
 油学士は、ずっと狙っていた「副主席」の話を思いがけなく醤主席の口から聞かされたので、まるで恥ずかしがり屋の乙女のようにポッと頬を赤らめ、こう言いました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました