初級翻訳・仲のわるい姉妹 第1話

仲のわるい姉妹

ある村に、お杉とお紺という、それは仲の悪い二人の姉妹がいました。
お母さんは、二人の仲がよくなってほしいと、いつも心配していました。
ある日の夕方、見たこともない、七、八歳くらいの小さな男の子(お芥子坊主)が庭にやってきて、

「姉のお杉 妹のお紺
仲が悪くば 山の神様の
椋鳥さまに お頼みなされ」

と、山のほうを指さしながら歌っていました。
お母さんが不思議に思って庭に出ていくと、男の子は裏の橋を渡って逃げていってしまいました。
その男の子は、次の日の夕方も、その次の日の夕方も、同じように庭にやってきて歌いました。
お母さんが出ていくと、いつも橋を渡って逃げていくのでした。
お母さんは、これは「山の神様をたずねていきなさい」という意味の歌なのだと気づきました。
ある日、お母さんは二人の姉妹を連れて、山の神様をたずねて山へ登りました。
一番高い山の上まで行くと、山の神様は木の根っこに腰をかけ、長いまっ白なヒゲをなでながらいらっしゃいました。
お母さんと二人の姉妹の顔を見ると、山の神様はすぐに、
「よしよし、わかった。
椋鳥、椋鳥」とおっしゃって、トントンと杖で地面をおたたくと、一羽の椋鳥(むくどり)が飛んできました。
「椋鳥や、お前の国へこの姉妹を連れて行くのだ」
「かしこまりました」と椋鳥は言い、二人の姉妹の目を白い布で隠すと、大きな椋の木の、ぽっかり空いた穴の前へと連れていきました。
「この中に一本道があるから、何も考えずに、まっすぐ歩いていくんだよ」と言って、二人の姉妹を木の穴の中に入れ、入り口の扉をガチンと閉めてしまいました。
二人は、真っ暗な穴の中の一本道を、椋鳥に言われたとおりに歩いていきました。
もう一里(約4キロ)ほども歩いたかなと思う頃、そっと目隠しをとってみると、そこは広くて広い野原でした。
野原の中には、自分と同じくらいの年齢の子供たちが、あちこちに立っていました。
姉のお杉は、一人の子供に、
「こんにちは」と声をかけましたが、その子供は石地蔵さんのように黙ったままでした。
聞こえないのかなと思って、「こんにちは、こんにちは」と大きな声で続けざまに何度も言いましたが、やっぱり黙って返事をしませんでした。
今度は一人一人に向かって、
「こんにちは、こんにちは。
一緒に遊びましょう、遊びましょう」
と言って歩きましたが、誰一人として相手にしてくれませんでした。
妹のお紺も、「こんにちは、こんにちは。遊ばせてください」と言ってみましたが、みんな聞こえないふりをして後ろを向いてしまいました。
仲の悪い二人の姉妹が、ひとりぼっちになってポカンと立っていると、向こうの丘の上で、大勢の子供たちが手をつなぎあって楽しそうに遊んでいました。
姉のお杉は、そこへ行って仲間に入れてもらおうと、丘の下まで行きました。
妹のお紺も、一緒に遊ばせてもらおうと丘の下まで行きましたが、二人は足がすくんでしまい、いくら一生懸命になっても、丘の上へは上がれませんでした。

「姉と生れて 妹となつて
仲が悪くて 椋鳥さんに
暗い一本道 送られました

ここは仲よい 姉妹ばかり
仲が悪くば のぼられませぬ
足がすくんで のぼられませぬ」

と、丘の上で大勢の子供たちが歌う声が聞こえてきました。
二人の姉妹は急に悲しくなり、わっと地面に泣き伏してしまいました。
すると、椋鳥がパッと飛んできて、
「こうすれば上がれるんだよ」
と、二人の手をギュッと握らせてくれました。
すると不思議なことに、二人はスイスイと楽に丘の上へ上がることができました。

「いつも楽しく 遊びたければ
姉と妹と 仲よくなされ」

とお杉とお紺の手を取りながら、丘の上の子供たちが歌ってくれました。
椋鳥もうれしそうに、
「いいかい、忘れてはいけないよ」
と言って、二人の姉妹に再び白い布で目隠しをし、元来た暗い穴の一本道を通って、山の神様のところへ連れ戻しました。
山の神様は、
「それで結構、結構」
とおっしゃって、たいそうお喜びになられました。
二人はまるで生まれ変わったように、本当の仲のよい姉妹になり、お母さんと三人で、椋鳥に見送られながら、お家へ帰ってきたのでした。

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