初級翻訳・十五夜お月さん 第1話

十五夜お月さん

### 蜀黍(もろこし)畑
裏口の親のない家、はね釣瓶(つるべ)がのどかに揺れている。
海や山を越えて、千里の彼方まで風が吹き抜けていく。
もろこし畑にも、とうとう日が暮れた。
「さあ、鶏を探しに行かないか」

### 螢の提灯
螢が提灯をぶら下げて光ってる。
ぴかん、ぴかんと光ってる。
「早くみんなで追いかけよう!」

螢の提灯、何かを考えてる。
ぴかん、ぴかんと何かを考えてる。
「早く提灯を捕まえちゃえ!」
……ああっ、螢の提灯が消えちゃった。
つーん、つーん、消えちゃった。
「早く蝋燭(ろうそく)を灯して見せてやれ」

### 豊作唄
山椒(さんしょう)の木の上で、雀がチュンチュン鳴いた。
足で山椒の枝を踏みしめて、木の上で鳴いた。
豆も、小豆(あずき)も、さやから今にも飛び出しそう。
麦も、小麦も、みんな実って頭を垂れている。
山椒の木の上で、雀が鳴いた。
山椒の枝を踏みしめて、木の上で鳴いた。

### 日傘
別れてしまった母さん、日傘。
お願い、僕に何か話してよ、日傘。
裏口には風が吹き、篠(しの)やぶが揺れている。
烏に食べられちゃった、烏瓜(からすうり)。
母さん、僕も一緒だよ、日傘。
お願い、僕に何か話してよ、日傘。

### 九官鳥
九官鳥に、君が代を歌わせてみよう。
「千代に八千代に」って、歌わせてみよう。
鸚鵡(おうむ)に、君が代を歌わせてみよう。
「巌(いわお)となりて」と、歌わせてみよう。
私も一緒に、君が代を歌いましょう。
「レ・ド・レ・ミ、ソ・ミ・レ」と、歌いましょう。

### 信田(しのだ)の籔
裏口の、裏口の、赤とんぼ。
狐のお話を、聞かせてあげましょう。
七年も機(はた)を織り続けた、信田の狐は親狐。
信田の裏口の、ふるさとで。
子供を恋しく思う、親狐。
裏口の、裏口の、赤とんぼ。
明日もまた、この藪に来てとまっておくれ。

### 虹の橋
あっちの町と、こっちの町を結ぶ、太鼓橋がかかったよ。
赤い草履(ぞうり)を履いて、みんなで渡ろう。
あの子も渡れ、この子も渡れ。
みんな仲よく渡ろうね。
虹の橋は高いぞ、手と手をつないで渡ろう。

### 人形屋
人形屋のおばさんが、髪を結っていた。
元結(もとゆい)でキュッと結んで、髪を結っていた。
人形にも、きれいな髪を結ってあげなさい。
元結でキュッと結んで、結ってあげなさい。

### 雨夜の傘
雨の降る夜の傘、蛇の目傘。
文福茶釜(ぶんぶくちゃがま)は、化け茶釜。
お寺の釣瓶(つるべ)も、化け釣瓶。
雨の降る夜に、傘をさしてやってきた。

### 燕(つばめ)
燕の母さんは、おしゃれな母さん。
お揃いの簪(かんざし)を、買ってあげよう。
牛乳屋さんの表で遊んでいた、おしゃれな母さん燕。

### トマト畑
雨を降らせる雲は、どうしてやってこないの?
トマト畑がみんな枯れてしまうよ。
トマト畑に太陽が、じりり、じりりと照りつけている。
雨を降らせる雲は、どうしてやってこないの?
トマト畑がみんな枯れてしまうよ。
トマト畑の百姓さんは、真っ赤なトマトを眺めてる。

### 烏と地蔵さん
石のお地蔵さんが、居眠りしてた。
にこり、にこりと居眠りしてた。
烏が時々やってきて、お供えの団子を見て鳴いた。
石の団子だから、盗もうとしても駄目だよ。
石のお地蔵さんは、駄目な団子を持っていた。
にこり、にこりと、駄目な団子を持っていた。

### 冬の日
(茨城で生まれた文ちゃんの唄)
ここの屋敷は、今はもう空き屋敷。
文ちゃんが生まれた茨城の、元の屋敷も空き屋敷。
ここの畑は、桐(きり)の畑。
文ちゃんが生まれた茨城の、裏の畑も桐の畑。
ここの姉さんは、日和下駄(ひよりげた)。
文ちゃんが生まれた茨城の、お夏娘も日和下駄。
ここの柱は、木の柱。
文ちゃんが生まれた茨城の、元の門も木の柱。

### 雲雀(ひばり)の子とろ
こをとろ、ことろ。
田んぼの中の、雲雀の子とろ。
畑の中の菜種の花は、並んで咲いた。
厩(うまや)の裏口の豌豆(えんどう)の花も、並んで咲いた。
こをとろ、ことろ。
お父さんは留守だよ、雲雀の子とろ。

### 赤牛黒牛
赤牛、黒牛、モー、モー。
あっちを向いても、モー、モー。
こっちを向いても、モー、モー。
父さん、母さん、モー、モー。
角が生えてる、モー、モー。

### 十六角豆(ささげ)
胡麻(ごま)の木畑は、みんな跳ねた。
十六角豆も、みんな跳ねた。
雀が畑に隠れているよ。
鉄漿(おはぐろ)とんぼに、お話してこよう。

### 葱坊主(ねぎぼうず)
ぴゅっ、ぴゅっと風が、山から吹いた。
昨日も今日も、畑に吹いた。
畑の中の葱坊主、寒いね。

### 鵞鳥(がちょう)
鵞鳥に腹掛けをかけさせて、みんなで遊びに連れて行こう。
玩具屋(おもちゃや)の前は、駆け抜けて通ろう。
みんなで並んで、駆け抜けて通ろう。
鵞鳥も一緒に駆けるだろう。
長い首をふりふり、駆けるだろう。

### 山椒の木
田んぼの、田んぼの、山椒の木。
上総(かずさ)は今、鰮(いわし)の大漁だ。
おいらの父さんは、いつ帰ってくるんだろう。
教えてくれないか、山椒の木。

### 山の狐
片親のいない子は、門(かど)で泣く。
両親のいない子は、裏口で泣く。
雀は門で鳴き、裏口で鳴く。
狐は野で鳴き、山で鳴く。
門で泣け、門で泣け。明日の晩は、山で鳴く狐が裏口へ来るぞ。
裏口で泣け、裏口で泣け。明日の朝は、山で鳴く狐が門へ来るぞ。

### 烏の小母さん
烏の小母さんが、機(はた)を織っていた。
チンバタ、チンバタ、機を織っていた。
木綿の腹掛けを織っていた。
泣いている子供に、腹掛けを買ってやっておくれ。
烏の小母さんが、機を織っていた。
チンバタ、チンバタ、機を織っていた。
更紗(さらさ)の綿入れを織っていた。
泣いている子供に、綿入れを買ってやっておくれ。

### 赤いマント
家鴨(あひる)は水を飲んで、冷たいだろうな。
ぐんぶ、ぐんぶと水を飲んで、冷たいだろうな。
家鴨に赤いマントを買って着せてあげよう。
赤いマントは可愛いから、買って着せてあげよう。
マント屋さんの赤いマント、買って着せてあげよう。### 母さん里
母さんの里は、一本の榎(えのき)の木があるところ。
親鳩と子鳩が、並んでそれを見つめていた。
のっぽの榎、天まで届け。
母さんの里へ、お餅を背負って持って行った。

### 可愛い小鳥
小鳥屋さんの店は、チッチク、チッチクと鳴く店だ。
小鳥屋さんのお父さんは、おっちょこちょいなお父さん。
小鳥のお母さんは、朝寝坊なお母さん。
オスとメス、二羽の可愛い鳥だ。
小鳥屋さんの店で、チッチク、チッチク鳴いていた。

### 森の中
森の中の一本桜に、花が咲きました。
朝晩、小鳥がやってきて鳴いていました。
一羽の小鳥は、赤い足でした。
一羽の小鳥は、青い羽根でした。
どちらの小鳥も、いい声でした。

### 闇夜
親タヌキと子タヌキ、今夜は真っ暗な闇夜だ。
ぐっつり、わっつりと和尚さんは、しぶしぶ提灯を出して出かけたぞ。
親タヌキ、子タヌキ、お月さんに化けろ。

### 堂鳩
親鳩、子鳩、本当のお堂の鳩。

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