私たちを通したのは、結局のところ私たちがスリネズミよりべらぼうたちに似ているからよ。でも、何世紀も、いや何千年もの間荒れ果てていたというのに、いまだにかすかな記憶が残っているなんてすごいことだわ」
「べらぼうたちが知性を持ち、独自の文明を築いていたとはね」
グラントはそうつぶやくと、脇でヒョコヒョコとニタニタしている紫色の野郎を追い払いました。
しかし不意に足を止め、そのうちの1匹に興味を示して、改めてじろじろと見つめました。
「こいつ、もう何日も俺をつけているな。よしよし、若いの、何だそれは?」
紫色のべらぼうが、べっとりと汚れた流血草と小枝の束を差し出し、阿呆面でニタニタとしています。笑止な口元をねじらせ、目を大きく見開き、必死になって何かを伝えようと集中しているようです。
「アメー」
と勝ち誇ったようにケタケタと笑います。
グラントは一喝しました。
「あほ、たわけ、まぬけめ!」
ですが急に怒るのをやめて笑い出し、言いました。
「ハハハ、まあ心配するな。くれてやるよ」
グラントはチョコレートの箱を、喜色満面の3匹に向かって放り投げました。
「ほら、お前たちの飴だ」
その時、リーが金切り声をあげたので、グラントは驚いて振り返りました。彼女は両手を大きく振っています。
すると、馬鹿丘の頂上にロケットが1機、轟音を響かせて旋回し、機首を谷に向けました。
ハッチが開くと、オリバーが威張った様子で降りてきて、ぞんざいに言いました。
「わしは本物、おまえも本物だ」
その男のあとには、バカ猫が続いています。ついに助けが来たのです。
「おとうさん!」
リーは泣きじゃくりました。
しばらくして、グスタフ・ニーランがグラントに向き直り、言いました。
「お礼の言いようもない。もし望むなら、感謝のしるしに何でもしよう」
「ありますよ。契約を破棄してください」
「おや、私の会社に勤めているのかね?」
「グラント・カルソープという、一介の仲買人です。この変な衛星には、もうこりごりですよ」
「もちろん、そうしたければいい。もし支払いに問題があれば……」
「働いた6カ月分の報酬を支払ってください」
「わかった。だが、もしここにいたいと思っても、そう長くは交易できまい。極都市の近郊で強心草を栽培できるようになったからな。べらぼうたちに頼って不安定になるより、農場の方がずっといい。もし残りの期間を勤め上げる気があるなら、期限まで農場を任せてもいいぞ」
グラントはリー・ニーランの灰色の瞳を見つめ、固辞してゆっくりと言いました。
「どうも。でも、もうこりごりです」
それからリーに笑いかけ、彼女の父に向き直って尋ねました。
「よかったら、我々を見つけた方法を教えていただけませんか。一番ありそうもない場所なのに」
「こういうことだ。リーが戻らなかったとき、慎重に考えた。最後に決断を下したのは、娘がわしと同じように行動すると思い、一番ありそうもない場所を探すことだった。熱海岸、次に白砂漠、最後にこの馬鹿丘だ。掘っ立て小屋の残骸を見つけ、そこにこいつがいたんだ」
父はオリバーを指さして続けました。
「こう言っていたよ。『べらぼう10匹でバカ1人』とな。そうだよ、バカと言ったらわしの娘のことじゃないか。あたりを飛んでいたら、火炎放射機の咆哮が聞こえて注目を引いたというわけだ」
リーが口をとがらせました。
それからグラントを灰色の瞳でまじまじと見つめ、やさしくこう言いました。
「私があそこの密林で言ったことを覚えている?」
「聞いたことないな。うわごとは言っていたようだが」
「うわごとじゃないわよ。『妻の助けがあれば年期を勤め上げるのはずっと楽じゃなくて?』……こういうことよ。たとえば、一緒にジュノポリスへ私を連れて戻るってのはどう?」
グラントの声がかすれました。
「リー、なんという重大な決断を。でも、そんな夢を今まで見ていたなんて……」
オリバーが横から言いました。
「熱病に違いないな」
完
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