あるいは、単に語彙をおさらいして記憶を整理しているのかもしれません。
ともかく、トウィールは私たちに街のあちこちを見せてくれました。
やつは黒い鞄の中に特殊なライトを持っていて、小部屋を照らすには十分でしたが、私たちが通ったあの巨大な空間を照らすには全く足りません。
建物の十中八九は、私たちには用途が全く分からない巨大な空っぽの部屋で、影やカサカサという音、そしてこだまが満ちていました。
一体、何に使っていたのか想像もつきません。
生活空間には適していないし、交易などの商業用としても不向きに思えます。
発電所にはぴったりかもしれませんが、街全体にそんな場所がたくさんあるのは何のためでしょう。それに、機械の残骸がどこにもありません。不思議です。
時折、トウィールは吹きさらしの大広間を見せてくれました。
遠洋船が停泊していた場所でしょうか。やつは体を膨らませて誇らしげでしたが、私たちには全く理解できません。
街は人工的な力強さにあふれ、壮大です。なにはともあれ、何もかもが不可解でした。
しかし、見覚えのある建物に出くわしました。
前回リロイと私が入った、あの建物です。3つ目の「目」がいた場所です。
中に入るのは少し不安でしたが、トウィールが「クックッ」と鳴いて「イエス、イエス」と言い続けていたので、監視者がいないか神経質に周りを見回しながら、後をついていくことにしました。しかし、この大広間も他と全く同じで、ザワザワ、ズルズルという騒音が満ち、得体の知れない何かが角をすり抜けていきました。
もし、あの3つ目の生物がまだそこにいたら、私たちは全員でそっと逃げ出していたに違いありません。
トウィールが私たちを壁に沿って誘導しました。
懐中電灯で照らすと、小部屋がずらりと並んでいるのが見え、私たちはその先頭にあった不思議な小部屋に入りました。
とても奇妙な部屋です。
ライトで中を照らしてみると、最初はただの空っぽの空間に見えました。
しかし次に、床にうずくまっているものを見つけました。
それは小さな生き物で、大きめのネズミくらい。灰色をしていて、身を寄せ合い、明らかに私たちを見て驚いています。
超気持ち悪く、超悪魔的で、ちっちゃな顔には尖った耳か角があり、その邪悪な目には、ある種の残忍な知性がほとばしっているように見えました。
トウィールもそれを見て「キィーッ!」と怒ると、その生き物は鉛筆のように細い2本足で立ち上がり、半ば驚き、半ば反抗的に「チューチュー」と叫びながら、すばやく逃げ出しました。
私たちの横をさっと通り過ぎて暗闇に消えていったのですが、トウィールよりもずっと素早く、走るときには何かが体の上でひらひらとしていて、まるで皮膜が羽ばたいているようでした。
トウィールは怒って「キイー、キイー」と叫び、けたたましく大騒ぎをして、本気で腹を立てているようです。
奴らが去ったあと、私たちは想像を絶するとんでもないものに気づきました。
床にうずくまっていた場所に、本があるではありませんか。
奴らはその本の上で丸まっていたのです。
私は一歩踏み出してみました。
確かに、そこにはある種の碑文が記されています。
波打った白い線で、まるで地震計の記録のように、トウィールの小袋の材料に似た黒い紙に書かれていました。
トウィールはイライラして怒ったように鳴くと、その書物を拾い上げ、膨大な本棚の所定の位置に「スコン」と差し込みました。
リロイと私は唖然としてお互いを見つめ合いました。
あの悪魔のような顔をした小動物が、本を読んでいたのでしょうか? あるいは単に紙を食べていて、知的な活動というよりは、栄養を物理的に摂取していただけなのか? それとも、すべてはただの偶然なのか。
もしこの生物が本を蝕むネズミのような害獣なら、トウィールの怒りも理解できます。しかし、なぜ知性体を追い払おうとするのか。たとえ異種族であっても、読書を妨害するものなのでしょうか(もし彼らが本当に読んでいるのだとすればですが)。
わかりません。
確かに本は全く傷ついておらず、私たちが手にしたもので破損したものも一つもありませんでした。
しかし、私には妙な直感がありました。
あの皮膜を持つ小悪魔の秘密がわかれば、この巨大な廃墟の謎や、火星文明が衰退した秘密もわかるだろう、と。
さて、しばらくするとトウィールも落ち着き、あの巨大なホールをすべて案内してくれました。
どうやら図書館のようです。
少なくとも何千、何万という奇妙な黒いページの書物があり、白い波打つ線で印刷されていました。
中には絵もありました。
その中には、トウィール族の姿を描いたものもありました。
ここがもちろん重要です。
つまり、彼の種族がこの街を築き、本を印刷したことを示しているのです。
思うに、地球上の最優秀な言語学者ですら、この蔵書の1列も翻訳することはできないでしょう。
私たちとはあまりにもかけ離れた知性で書かれているのですから。
トウィールは難なくそれを読んでいました。
数行をさえずってみせます。
私はトウィールの許可を得て、数冊の本を手に取りました。
ある本には「ノー、ノー」と言い、ほかの本には「イエス、イエス」と言いました。
たぶんトウィール族にとって重要な本を禁止したのか、あるいは私たちでも簡単に理解できそうな本を選ばせてくれたのかもしれません。
さあ、どうでしょう。
ともかく、その書物は外のロケットの中にあります。
それからトウィールは、壁に懐中電灯を向けました。
そこには絵がありました。
おお、なんという絵でしょう。
壁の上へ上へと広がり、天井の暗闇の方へ謎めいて壮大に延びています。
最初の壁の絵は大したことありません。
トウィール族の大集合の絵のようで、たぶん社会や政治を象徴しているのでしょう。
さて、次の壁はもっと明白です。
生物たちが何らかの巨大な機械で働いています。産業か、もしくは科学の光景でしょう。
後ろの壁は一部がはがれていましたが、見たところ芸術を表現した場面と思われます。
ところが、4番目の壁を見たとき、私は衝撃でくらくらっときました。
この抽象画は、探検か発見の絵だと思います。
この壁画ははっきりと見えました。
理由は、壁の亀裂から差し込む日光が上面を照らし、トウィールの懐中電灯が下部を照らしていたからです。
そこには、着座する一人の大巨人が描かれていました。
トウィールのようなクチバシを持った火星人ですが、4つの手足はどれも重そうで、ぐったりしています。
両腕は生気なく椅子に垂れ下がり、細い首は曲がり、クチバシが胸の上に置かれていて、あたかも自分の重さに耐えかねているようです。
そして、その大巨人の前で奇妙にひざまずく姿が一人。
これを見たとき、リロイと私はお互いによろめかんばかりでした。
「どうやら、人間らしい」
ハリソン隊長が怒鳴りました。
「人間だと。おまえ、人間と言ったな」
「『らしい』と言ったのです。絵描きが鼻をトウィールのクチバシと同じくらいの長さに誇張して描いてはいますが、肩まで伸びる黒髪があり、火星人の4本指ではなく、差し伸べた手には5本の指があります。
初級翻訳・夢の谷 第5話
夢の谷
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