猿はラム・ダスを見ると小さな叫び声を上げました。
しかし、彼が天窓を閉めて捕まえにかかると、いたずらっぽく少し逃げ回っただけで、すぐラム・ダスの首に飛びつきました。
ラム・ダスは、セーラに丁寧に礼を言いました。
彼の鋭い眼差しは、室内の惨めな様子を一目で見て取ったようでしたが、セーラに対しては何にも気づかないふりをして、まるで王女にでも物を言うように話しかけました。
彼はすぐに暇を告げました。「病気の主人が、もし猿を失ったらどんなに落胆したことでしょう」などと、繰り返しお礼を言いながら。
ラム・ダスが去ったあと、セーラはしばらく屋根裏部屋の真ん中に立ったまま、思い出に耽っていました。
セーラはラム・ダスのインド服や、うやうやしい態度を見ると、インドにいた時のことを思い出さずにはいられませんでした。
一時間前には料理番にまで罵られていた今のセーラが、かつてはたくさんの召使にかしずかれていたのだと思うと、なんだかおかしいくらいでした。
それはもう過ぎ去った昔のことで、そんな身分にまたなれるとは思えませんでした。
ミンチン先生はセーラが年頃になるのを待って、たくさんの授業を受け持たせるでしょう。
その務めが、今の雑用より楽だとは思えません。
着るものなどは先生らしくさせられるかもしれませんが、それだってきっと女中が着るようなひどいものでしょう。
これから先、何か良い方に変化が起きて、再び幸福な身分になろうとは、セーラにはどうしても思えませんでした。
ふと、また何かを思いついたので、セーラの頬は紅くなり、瞳が輝き出しました。
彼女は痩せた体をしゃんと伸ばし、顔を上げました。
「どんなことがあっても変わらないことが一つあるわ。いくら私がぼろや古着を着ていても、私の心だけはいつでもプリンセスだわ。ぴかぴかする衣装を着てお姫様になっているのは簡単だけど、どんなことがあっても、見ている人がいなくても、お姫様になりすましていることができれば、なお偉いと思うわ。マリー・アントワネットは玉座を奪われて牢に投げ込まれたけれど、その時になってかえって、宮中にいた時よりも女王様らしかったっていうわ。だから、私マリー・アントワネットが大好き。民衆がわあわあ騒いでも、女王はびくともしなかったそうだから、女王は民衆よりずっと強かったのだわ。首を斬られた時にだって、民衆に勝っていたんだわ。」
この考えは、今考えついたわけではありません。
セーラはこれまでも、辛い時にはいつもこのことを考えて、自分を慰めていたのでした。
ミンチン先生にひどいことを言われる時など、セーラは心の中でこう言いながら、黙って先生を見返していたのでした。
「先生は、そんなことをお姫様に言っているのだということをご存じないのね。私がちょっと手を上げれば、あなたを死刑にすることだってできるのですよ。私はお姫様なのに、先生は愚かな、意地悪なお婆さんなのだと思えばこそ、何を言われても許してあげているのよ。」
セーラはお姫様である以上、礼儀正しくなければいけないと思いましたので、ミンチン先生はもとより、召使たちが彼女にどんなひどいことをした時も、決して取り乱した様子など見せませんでした。
「あの若造は、バッキンガム宮殿からでも来たみたいに、いやにもったいぶってやがる。」と、料理番も笑ったほどでした。
ラム・ダスとお猿の訪問を受けた次の朝、セーラは教室で下の組の少女たちにフランス語を教えていました。
授業時間が終わると、セーラは教科書を片付けながら、身分を隠して旅をしていた皇族方がさせられたいろいろな仕事のことを考えていました。
――アルフレッド大帝は、牛飼いのおかみさんにお菓子を焼かされ、横面を張り飛ばされました。
牛飼いのおかみさんは、あとで自分のしたことに気づいて、どんなに空恐ろしくなったことでしょう。もしミンチン先生に、セーラが本当のプリンセスだと知られたら、先生はどんなに慌てふためくことでしょう。
――その時のセーラの瞳に宿る毅然とした表情がたまらなく憎らしかったのでしょう、ミンチン先生は突然、セーラの横面を張り飛ばしました。
まさに今、セーラが心の中で考えていた、アルフレッド大帝を平手打ちした牛飼いの女と同じことをしたのです。
夢のような空想から現実へと引き戻されたセーラは、この事実に気づくと、思わず笑い出してしまいました。
「何がおかしいのです。本当にずうずうしい子ですね」
セーラは、自分が空想の中でプリンセスだったという意識から現実に戻るまで、少しだけ戸惑いました。
「考えごとをしていたものですから」
「すぐに『ごめんなさい』と言いなさい」
セーラは答える前に、少しだけためらいました。
「笑ったことが失礼でしたら、お詫びいたします。でも、考えごとをしていたこと自体は、悪いことだとは思えません」
「いったい何を考えていたのですか? ええ? あなたのような者に、何が考えられるというの?」
ジェシーがくすくすと笑い出しました。それからラヴィニアとひじをつつき合います。ミンチン先生がセーラに食ってかかると、生徒たちは皆、面白がって見物するのでした。セーラはどんなに叱られても少しもへこたれることなく、必ず何か変わったことを言い返すのです。
「私ですね――」と、セーラは丁寧に言いました。「私、先生はご自分がなさっていることが、どういうことか分かっていらっしゃらないのではないか、と考えていたのです」
「私のしていることが、私に分からないと言うのですか?」
「そうです。もし私が本当のプリンセスで、先生がそのプリンセスの頬を打ったりなどなさったら、どんなことになるかしら――私はプリンセスとして、先生をどう処置すべきだろうか、と考えていたところです。それに、もし私がプリンセスだったら、先生は私が何をしようとも、頬を打つなんてことはなさらないはずだと思っていました。それからまた、もし真実を知ったら、先生はどんなに驚き、慌てふためくことかと――」
「何に、何に気づいたらと言うのですか」
「私が、本物のプリンセスだということに」
教室にいた少女たちの目は、驚きでお皿のように丸くなりました。ラヴィニアは席から身を乗り出しました。
「出て行きなさい。今すぐ自分の部屋へ戻りなさい。皆さんは余計なことをせず、勉強に集中しなさい」
セーラは少し頭を下げ、「笑ったのが失礼でしたら、ご容赦ください」と言い残して、教室を出て行きました。
「皆さん、セーラを見て? あの子の、あの妙な様子を見て?」ジェシーが真っ先に口を開きました。「私だけは、セーラが本当は身分の高い子だということがいつか分かっても、ちっとも驚かないわ。もしあの子が偉くなったら、どうなるのかしら」
十二 壁を隔てて
壁続きに並ぶ家々に住んでいると、壁のすぐ向こう側の物音に、つい気をとられるものです。
インドの紳士の家は、セーラの学校と壁一つで隣り合っていましたので、セーラはよく紳士の生活を空想して、心を楽しませました。
教室と紳士の書斎はちょうど背中合わせになっていますので、セーラは放課後など、自分たちがやかましくして紳士の邪魔になっていないだろうかと心配しました。
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