初級翻訳・怪塔王 第31話

怪塔王

その服がぷすぷすと燃え出したのを見て、機上の小浜兵曹長は、心臓をぐさりと突き刺されたような衝撃を受けました。
青江をここで焼け死なせるわけにはいきません。とはいえ、遠く離れたこの飛行機の上からでは、青江の燃える服に手が届くはずもありません。
「困ったなあ」
小浜兵曹長は、部下のこの危うい姿を見つめながら、全身をぶるぶると震わせました。なんとかして助けなければ。この様子では、青江の命はあと十分ともたないだろうと、気が気ではありません。
「困ったな……そうだ、こうなったら、俺も青江と一緒に死ぬまでだ!」
何を考えたのか、小浜兵曹長は座席の中をのぞき込みました。彼は座席の下から、革袋に入った飲み水を取り出しました。この革袋を腰に下げると、彼はベルトを解き、座席からぐっと立ち上がりました。
彼は急いで革袋の上部をナイフで切り、小さな穴を三つ四つ開けました。それから今度は、革袋の底を手早く紐で縛り上げ、その紐の端を左の手首にしっかりと巻き付けました。いったい彼は、こんなことをして何をしようというのでしょうか。もちろんそれは、部下を助けるための、一か八かの賭けだったのです。
小浜兵曹長の準備は整ったようです。すると見る間に、
「やっ!」
という掛け声とともに、小浜兵曹長は飛行機から飛び出し、怪塔ロケットに渡した麻縄へと飛びつきました。
ああ、ついに麻縄には二人の勇士がぶら下がることになりました。縄は二人の体重をずっしりと引き受けることになります。果たして縄は、このような重さに耐えられるのでしょうか。よく見ればその麻縄は、怪塔の胴に結びつけられた場所で、すでに炎を上げて燃え盛っているではありませんか。

5

なんと危うい光景でしょう。怪塔の胴を縛っている麻縄は炎を上げて燃えており、その上、二人の勇士がぶら下がったことで、縄にかかる重さはさらに増しています。麻縄は今にも切れそうです。もし麻縄が怪塔の胴の部分からぷつりと切れてしまったら、二人の勇士の命はどうなってしまうのでしょうか。
その時、青江三空曹は、自分の服が燃えていることにようやく気がつきました。
「あっ、これはまずい!」
服についた火は、じりじりと体を焼き焦がしていきます。火をもみ消したいのですが、両手とも縄を握っていて自由になりません。これほど激しい風の中で、片手だけで麻縄を握り、体を支え続けることなど不可能です。そんなことをすれば、たちまち墜落してしまいます。
青江三空曹は、ついに綱渡りを諦めて、体をしきりにくねらせました。なんとかして服に燃え移った火を消そうと必死の努力を続けていますが、風はいよいよ荒く、火は燃え盛る一方です。
あわれ青江三空曹も、勇ましく怪塔へ進撃している途中で、火だるまになって焼け死んでしまうのか――そう思われたその時、
「おい青江、頑張れ!」
突然、青江の耳になつかしい声が聞こえました。
「おお!」
と振り返って見ると、思いがけなく自分の後ろに、いつの間に来たのか、小浜兵曹長が同じく縄にぶら下がって、こちらへ近づいてくるではありませんか。
「ああ、上官!」
青江の目から、熱い涙がはらはらとこぼれ落ちました。部下を思う小浜兵曹長の熱い心に感激した涙でした。
「おい青江、気を落とすな。俺が火を消してやるから、もうしばらくの辛抱だ!」
と叫びましたが、果たして兵曹長は、火だるまになった青江を救うことができるのでしょうか。

あわてる怪塔王

1

怪塔に渡した一本の麻縄に、あぶない命を託してぶら下がっている青江と小浜、二人の勇士の姿を、もし誰か同胞が見たとしたら、彼は腸をかきむしられるような苦しさに襲われずにはいられないでしょう。
怪塔王は、このありさまを怪塔の窓から見下ろし、ますます狼狽の色をあらわにしています。そしてなお磁力砲を腕にかかえ込み、ひねくり回していますが、あわてているせいで、なかなか思うような場所へ怪力線を当てることができません。
ただ一回、まぐれ当たりか、怪力線がぱっと青江機の車輪を支えている金具に当たりました。すると恐ろしいことに、その金具はたちまち青い炎を上げて、とろとろと溶けてしまいました。車輪は支えを失ったため、くるくると回りながら下へと落ちていきました。磁力砲が発する熱は、金具にはひどく影響を与えても、人間の体にはそれほど熱さを感じさせない性質のものでした。この場合、二人の勇士にとっては不幸中の幸いと言えるでしょう。

「もう一息だ。青江、しっかり耐えていろよ」

強靭な精神を持つ小浜兵曹長は、激しい風にもひるむことなく、綱をたどって青江三空曹のそばへと近づいていきました。

「小浜兵曹長……!」
「おお青江、気を緩めてはいかんぞ。死ぬときは、俺が良いと言うまで死んではならん!」

なんとも凄まじい命令を下す兵曹長です。そうこうするうちに、彼はついに青江三空曹がぶら下がっている場所までたどり着きました。

「おい、青江。今、火を消してやるぞ」
「そんなことができるのですか!」
「なに、きっと消してみせる」

小浜兵曹長は、水を入れた革袋の底を縛っていた紐を口でくわえると、首を曲げてぐっと強く引っ張りました。袋は逆さまになり、破れ目から水が滝のように勢いよく吹き出しました。

2

なんという奇抜な知恵でしょう。小浜兵曹長は首と手首をうまく使い、革袋の紐を操って、中の水を狙い通りに噴出させたのです。

「おい青江、しばらくじっとしていろ」

小浜兵曹長は両手で綱にぶら下がったまま、体のひねり具合を調整し、袋から流れ出る水を青江の服の、一番激しく燃えている場所へとかけました。水量は多くありませんでしたが、シューシューと音を立ててこぼれ落ちる水は、赤く燃える青江の服を上からべとべとに濡らしました。燃えやすい布地はみるみるうちに水を吸い込み、火の勢いは弱まっていきました。

「ああ、うまくいくぞ!」

水が革袋からなくなると見るや、小浜兵曹長はまだプツプツと火種の残る青江のズボンの上を、自分の両足で力強く押さえつけ、叩きつけました。ついに火は残らず消し止められたのです。火だるまの原因となった鉄製のナイフは、青江三空曹の焼け落ちたポケットから、ポロリと下へと落ちていきました。

怪塔王に対して何よりも用心しなければならないのは、あの磁力砲の金具です。小浜兵曹長はどこまでも沈着冷静な大勇士でした。細心の注意を払い、かつ大胆にこの火消し作業を行ったおかげで、火だるまと化し、命の危険にさらされていた部下を救い出すことができたのです。

急に体が楽になった青江三空曹は、嬉し泣きに喜びました。なんという尊敬すべき上官でしょう。

「ああ、上官……私は……」

そう言ったものの、胸がいっぱいで言葉が続きません。

「馬鹿者! 敵の前で女々しく泣くのではない!」

突然、兵曹長の怒声が響き渡りました。

3

青江三空曹は、もう少しで火だるまになるところでしたが、小浜兵曹長の勇ましい働きのおかげで、一歩手前で火を消すことができました。これがただ空中にぶら下がっているだけの状況ならまだしも、怪塔ロケットと青江機の間をつなぎ、ぶんぶんと風に揺れながら空を飛んでいる最中の離れ業です。

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