そうしたら、そのハリネズミが私の来るのを見て逃げてしまったのよ!」
「お前は女王さまがそんなに好きなのかい?」低い声で猫が尋ねました。
「いいえ、少しも」と愛ちゃんが答えると、ちょうどその時、女王さまが背後に近づいて立ち聞きしていることに気づきました。愛ちゃんはわざと話をそらして、「……たぶん、女王さまがお勝ちになるでしょう。競技が終わるまでははっきりとは言えないけれど」と言いました。
女王さまは微笑んで通り過ぎていきました。
「話しをしているのは誰だ?」王さまが愛ちゃんに近づきながら言いました。それから、とても珍しそうに猫の頭を見ていました。
「私のお友達です。チェシャ猫です」と愛ちゃんは言いました。「恐れながらご紹介いたします」
「あんな顔をした者は全く好かんな」と王さまは言いました。「いつでも勝手に私の手にキスをするからな」
「私はしませんよ」と猫が断りました。
「無礼者め!」と王さまが言いました。「その顔は何だ!」と言って、愛ちゃんの背後へ回り込みました。
「猫だって王さまを拝んだっていいじゃない」と愛ちゃんが言いました。「どこかの本で読んだことがあります。どこだったか思い出せませんけれど」
「よろしい、追い払うからな」王さまが断固として言いました。
やがて通りかかった女王さまに声をかけました。「ねえ! この猫をどこかへ追い払ってくれないか?」
女王さまは、事の大小に関わらず、すべての困難を解決する唯一の方法を知っていました。
「あいつの首をはねろ!」と、周りも見ずに女王さまは言いました。
「それなら、死刑執行人を連れてこよう」と王さまは急いで立ち去りました。
愛ちゃんは帰ろうとしましたが、怒り狂う女王さまの声が遠くから聞こえたので、どうなることかと、なおも競技の様子を見ていました。
愛ちゃんは、すでに三人の競技者が順番を間違えたために、女王さまから死刑宣告を下されたと聞きました。
やがて愛ちゃんは、いつが自分の番なのかさっぱり分からないこの競技を見ているのが馬鹿馬鹿しくなってきたので、それよりも自分のハリネズミを探しに行くことにしました。ハリネズミたちは、互いに戦いを繰り広げていました。愛ちゃんには、二匹のハリネズミがもう一匹をうまく使って、どちらが勝つか争っているように見えました。ただ一つ困ったことに、愛ちゃんのフラミンゴが花園の反対側へどこかへ行ってしまっていて、そこでフラミンゴが虚しく木に飛び乗ろうと試みているのが見えました。
愛ちゃんがフラミンゴを捕まえて戻ってきたときには、すでに戦いは終わっており、二匹のハリネズミの姿は見えなくなっていました。「まあ、それはどうでもいいわ。緑の門もみんな、競技場のこっち側からどこかへ行ってしまうのかしら」と愛ちゃんは思いました。
そこで、フラミンゴが再び逃げ出さないように、愛ちゃんはそれを脇の下にしっかり抱え込み、それから友達の猫と続きの話をしようと戻っていきました。
愛ちゃんがチェシャ猫のところへ戻ると、その周りに大勢の人が集まっているのを見て、とても驚きました。そこでは死刑執行人と、王さまと、女王さまとの間で、一つの言い争いが始まっていました。周りの人たちはみんな黙り込んで、とても不快そうな顔をしているのに、女王さまだけが一人でずっと怒鳴り散らしていました。
愛ちゃんが姿を見せるとすぐに、三人は愛ちゃんに問題を解決してほしいと頼んできました。
そこで彼らは愛ちゃんに、言い争いの内容を繰り返して聞かせました。みんなが一斉に喋り出すので、一人ひとりの言い分を正確に聞き取るのは、愛ちゃんにとって大変なことでした。
死刑執行人の言い分はこうでした。「斬り落とすべき身体がなければ、頭を切り落とすことはできない。これまでそんなことをした例はないし、これからも一生あるはずがない」
王さまの言い分はこうでした。「頭があるものなら、何でも切り落とすことができる。死刑執行人の言っていることも、あながち間違ってはいない」
女王さまの言い分はこうでした。「もし何事であれ、すぐに終わらせることができないのなら、周りにいる者を全員死刑にする!」
(隊の者たちを震え上がらせ、真面目な顔にさせたのは、この最後の言葉でした)
愛ちゃんは、これ以外に何も思いつきませんでした。「それは公爵夫人の担当よ。そのことなら夫人に聞いたほうがいいわ」
「夫人は牢屋にいる」と女王さまは言い、死刑執行人に「すぐに連れてこい!」と命じました。死刑執行人は矢のように走り去りました。
猫の頭は、死刑執行人が行ってしまうと消え始め、彼が公爵夫人を連れて戻ってきたときには、すっかり消え失せていました。そのため、王さまと死刑執行人は、他の者たちが競技場へ戻った後も、猫の姿をあちこち探し回っていました。
第九章
ウミガメの話
「まあ、なんて嬉しいことでしょう、また会えたわね!」と言って、公爵夫人は嬉しさのあまり、腕と腕が触れ合うほどぴったりと寄り添って、二人は一緒に歩き始めました。
愛ちゃんは、夫人がこんなに快活な性格になったのを見てとても喜び、あの厨房で出会ったときに夫人があんなに乱暴だったのは、すべて胡椒のせいだったのだと思いました。
「もし私が公爵夫人になったら」と愛ちゃんは独り言を言いました(少し得意げな口調で)。「厨房には絶対に胡椒を置かないことにするわ。肉汁には胡椒がなくても平気よ――きっと、いつも胡椒が人の気をイライラさせているに違いないんだわ」と付け加え、新しい規則を発見したことをとても喜びました。「でも、酢だと酸っぱくなるし、カミツレ草だと苦くなるし……それに、砂糖なんかだと子供を甘やかしてしまうわ。みんながそのことを知っていれば、もっと出し惜しみなんてしないだろうに、ねえ――」
愛ちゃんはここまで考えて、すっかり公爵夫人のことを忘れていたので、耳元で夫人の声が聞こえたときには少し驚きました。
「何を考えているの、え? 話すことまで忘れてしまったのかしら。私は今、道徳がどうのこうのとは言わないわ。少しは知っているけれど」
「私は全く知りません」と愛ちゃんは思い切って言いました。
「でも、お前!」と公爵夫人は言いました。「何事も道徳で成り立っているのよ。よく気をつけて見てごらん」夫人はさらに愛ちゃんに近づきました。
愛ちゃんはそんなに近くに寄られるのはとても嫌でした。第一、公爵夫人はとても醜い顔をしていましたし、第二に、夫人は愛ちゃんの肩の上にその嫌な尖った顎を乗せられるほど、ずっと背が高かったからです。
それでも愛ちゃんは失礼な振る舞いはしたくなかったので、できるだけ我慢していました。
「競技は今、少しはうまく進んでいるみたいです」と言って、愛ちゃんは会話を弾ませようとしました。「そうね」と公爵夫人は言いました。「それにも道徳があるのよ。『友愛、それは友愛、それが世の中を円滑にするのよ!』」
「誰かが言っていたわ」と愛ちゃんは小声で言いました。
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