「黄金のトラは、いったい、どこにかくしてあるんですか。」
井上少年が、前に出てたずねました。
「うん、それはね、さっき、きみたちがここへきたとき、わしは、じいさんにばけて、キセルでタバコをすっていたね。
おぼえているかい。
その目の前にあったのさ。
いまでも、きみたちの目の前にあるんだよ。」
魔法博士は、にやにやと笑いました。
少年たちは、それをきくと、山小屋のなかにあがりこんで、せまい部屋を探しまわりましたが、どうしても、見つけることができません。
「ハハハハ……、戸だなや、ひきだしを探したって、だめだよ。
ほら、きみたちのすぐ目の前にあるんだ。
わしが、どこでタバコをすっていたか思いだしてごらん。
いろりの前だったね。
いろりには、火がなくて灰ばかりだったね。
ほら、よく見たまえ。
このいろりの灰のなかに、ピカッと光ったものが、見えるじゃないか。」
魔法博士は、ひばしでいろりのすみを、さししめしました。
そこの灰のなかに、画ビョウのあたまほどの小さい金色のものが、光っているのです。
「ほら、これが黄金のトラの、しっぽのさきだよ。
どうだね、黄金のトラは、ちゃんと、きみたちの目の前にあっただろう。
よくおぼえておきたまえ。
ものをかくすときは、あいてが、まさかと思うような場所へ、わざと、ほうり出しておくのが、いちばん、うまいかくしかたなんだよ。」
博士は、そういって灰のなかから、キラキラ光る黄金のトラを取りだし、てのひらの上にのせて、ながめるのでした。
「さあ、もう一度、これを、きみたちに渡すから、こんどは、もっとうまくかくしてごらん。
きみたちが、いくら知恵をしぼっても、わしは魔法の力で、すぐに盗みだしてみせる。
それをまた、きみたちが探すのだ。
さいしょから二ヵ月という約束だから、まだ、じゅうぶん日にちがある。
そのあいだに、これを取りかえせば、やっぱり、きみたちの勝ちになるのだよ。」
午後四時
その夕方、小林団長と九人の少年探偵団員は、明智探偵事務所に帰って、明智先生に、きょうのできごとを、くわしく報告しました。
すると、明智探偵は、
「うん、きみたちも、よくやったが、魔法博士も、なかなか、うまくかくしたね。
こんどはまた、きみたちの番か。
うんと知恵をしぼって、うまいかくしかたを考えるんだね。」
そこで、黄金のトラは、ひとまず明智先生にあずけておいて、少年たちは、それぞれうちに帰り、晩のごはんをたべてから、また探偵事務所に集まり、秘密会議をひらきました。
さいしょ集まった十五人の少年のうち、鍾乳洞へ行かなかった五人には、電話をかけてよび集め、応接室の大テーブルをかこんで、相談をはじめました。
厳重な秘密会議です。
十五人の少年のうち、事務所の前と、裏口に、ふたりずつ、応接室のドアの前と、窓の外の庭に、ひとりずつ、つごう六人の団員が見はりに立ち、のこる九人で、ヒソヒソと相談をしたのです。
これだけ用心をすれば、いかな魔法博士も、しのびこむことはできません。
さて、少年たちは、どんな名案を考えついたのでしょうか。
九人の少年が、長いあいだ相談して、黄金のトラのかくし場所をきめました。
そして、九人のなかの今井君と坂口君のうちが、かくし場所にえらばれたのです。
今井君のお店のたなの上には、セトモノの、いろいろな動物のオモチャが、たくさんならんでいました。
黄金のトラを、えのぐでぬりつぶして、セトモノのトラに見せかけ、そのオモチャの動物たちのなかへ、まぜておくのです。魔法博士は、「目の前に、ほうり出しておくのが、いちばんうまい、かくしかたなのだ」と言いました。
少年たちは、さっそくそのやり方をまねしてみることにしたのです。
まさか、たいせつな宝物を店先にならべておくなんて、だれも思いつかないだろうと考えたからです。
そこで、今井くんのお店にある動物のオモチャのなかから、黄金のトラによく似た陶器(とうき)のトラを見つけてきて、それをたいせつそうに綿でつつみ、小さな箱に入れてから、今度は坂口くんのお店にある金庫のなかにかくしたのです。
坂口くんのお店にはたくさんの金庫がならんでいますが、地下室がいがい一番大きな金庫がおいてあったので、そこへかくすことに決まりました。
今井くんのお店に置いたほんもののトラのほうは、だれに見はりをさせることもなく、そのままほっておきました。そのかわり、坂口くんのお店のお店の地下室では、少年探偵団の団員たちが二人ずつ交代しながら、ずっと見はりをつづけたのです。
夜になると、坂口くんとお店の店員さんが、地下室の金庫のまえに長椅子をならべて、そこで休むことにしました。
陶器のにせもののトラを、どうしてそんなにたいせつにするのでしょうか。
言うまでもなく、それは敵をだますための作戦です。
そうやって、いかにもたいせつそうに見はりをすることで、黄金のトラがその金庫のなかに入っていると、魔法博士にすっかり思いこませるためでした。
この作戦は、みごとに大成功しました。
にせもののトラを金庫にかくしてから二日目のこと、坂口くんのところへ、奇妙な電話がかかってきたのです。
お店の店員さんが、「学校の先生からお電話です」と言って呼びに来たので、坂口くんが何気なく受話器を取ると、気味の悪いしゃがれ声が聞こえてきました。
「ずいぶん厳重に警戒(けいかい)しているようだね。ウフフフ、だが、わしはトラをもらいに行くよ。あすの午後四時だ。きっと盗み出してみせるから、せいぜい用心するがいい。」
坂口くんはすぐにそのことを、電話で小林団長に報告しました。
そして翌日の午後には、このまえ鍾乳洞を探検した少年のうちの八人が、坂口くんのお店の地下室に集まり、金庫の見はりをすることになったのです。
ただ、小林団長と陶器屋の今井くんの二人だけは、どこへ行ったのか姿が見えません。
それには、何かちゃんとしたわけがあったのでしょう。
集まった八人の少年のなかにもちろん坂口くんは入っており、さらに力の強い井上くんや、愛嬌(あいきょう)たっぷりのノロちゃんも加わっていました。
地下室には、坂口くんのお店でいちばん大きな金庫がどっしりとすえられています。
そのなかに、陶器のにせの黄金のトラを入れた箱がおさめられているのです。
少年たちはその金庫のまわりにイスを置き、気を抜くことなく、まわりの様子に目を光らせていました。
午後四時がすこしせまってきたころ、坂口くんのお店のおじさん(支配人)が、心配そうな顔をして地下室へおりてきて、坂口くんに声をかけました。
「ぼっちゃん、だいじょうぶですか。もうすぐ四時ですよ。」
「うん、だいじょうぶだよ。だけど、油断はできないんだ。このまえは、魔法博士の手下の少年が井上くんに変装してやってきたんだからね。」
すると、井上くんが言いました。
「あのときは、オモチャの犬のなかにトラをかくして、うちの人がだいていたから、ぼくのニセモノに盗まれてしまったけれど、こんどは金庫のなかだからね。第一、暗号(あんごう)を知らなければ扉を開けることができないんだ。こんどこそ絶対にだいじょうぶだよ。
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