初級翻訳・楽聖物語 第68話

楽聖物語

あれは手に入れておくべきだったと今でも思っています。

ヨハン・シュトラウス
(ヨハン・シュトラウス 1825―1899)

 「ワルツの王」という呼び名の方が、広く知れ渡っているくらいです。
美しいウィーン風のワルツをたくさん作曲し、その一つひとつが宝石のように美しいものです。
大衆音楽の王と言っても、差し支えないでしょう。
彼のような人こそ、本当に庶民の生活と深く結びついた芸術家と言えるはずです。
一番有名な傑作は「美しく青きドナウ」で、数え切れないほどレコード化されていますが、テレフンケンのクライバー指揮(13104)、ビクターのストコフスキー指揮(愛好家協会第5集)、コロムビアのワインガルトナー指揮(J7343)などは、どれも素晴らしいレコードです。
まとまったものとしては、テレフンケンにクライバー指揮の「ヨハン・シュトラウス円舞曲集」があり、他に一枚ものとしては、ワルターが指揮した「皇帝円舞曲」(コロムビア世界名盤集第3集)などがあります。
「ウィーン気質」「ウィーンの森の物語」「南国の薔薇」「酒・女・歌」「芸術家の生活」など、有名なワルツは数多くあり、それぞれ何種類もレコードになっています。
さらに「美しく青きドナウ」を歌ったものや、ピアノで弾いたものを数え上げれば、きりがありません。
序曲「ジプシー男爵」と「こうもり」も、名指揮者たちがひと通り録音しています。
ワルター、メンゲルベルク、クライバー、ワインガルトナーのものなどが良いでしょう。

ルービンシュタイン
(アントン・ルービンシュタイン 1829―1894)

 チャイコフスキーの師であり友人でもあり、ピアニストとして一時はヨーロッパ中で名を馳せました。
いくつかのピアノ曲が残されています。
「カメノイ・オストロフ」は代表的な美しい曲で、古い盤ではゴドフスキーがピアノで弾いた名盤がありました。
最近では、フィードラーが管弦楽を指揮したレコードがあります(ビクター愛好家協会)。
他に「メロディ・イン・F」が有名です。
カザルスがチェロで演奏しています。
「スタッカート練習曲」「ワルツ・カプリス」などのピアノ・レコードもあります。

ボロディン
(アレクサンドル・ボロディン 1833―1887)

 ロシア国民楽派の一人で、交響詩「中央アジアの草原にて」や、歌劇「イーゴリ公」など、非常にロシア・オリエンタルな雰囲気の作品があります。
「イーゴリ公」の「ダッタン人の踊り」をストコフスキーが指揮したものが素晴らしいです(ビクターJD1500-1)。

キュイ
(ツェーザリ・キュイ 1835―1918)

 ロシアの「五人組」の一人で、東洋風で可愛らしい「オリエンタル」という曲で有名です。
この曲一つだけがレコードになっています。
エルマンのヴァイオリンで演奏されたものがあります(ビクターVE1029)。

サン=サーンス
(カミーユ・サン=サーンス 1835―1921)

 フランス新古典派の巨匠であり、国民的な作曲家として尊敬を集めています。
フランス本国ではドビュッシーなどよりも大きく扱われ、国葬にまでなっていますが、あまりに型通りのフランス風であるため、日本人にはかえって理解されにくいところがあります。
しかし、立派で整った作品をたくさん持っていること、その芸術は外面的ではありますが、非常に正統派であることは特筆すべきでしょう。
レコードとしては、ストコフスキーがフィラデルフィア管弦楽団を指揮した、組曲「動物の謝肉祭」のようなものの方が面白く聴けます(ビクターJD562-4)。
この中の一曲「白鳥」をチェロで弾いたレコードは数多いですが、古い録音ながらカザルスのものが良いでしょう(ビクターJE7)。
「ピアノ協奏曲第四番 ハ短調(作品44)」は、コルトーの演奏のせいもありますが、華やかで良い曲です。
サン=サーンスの外面的な美しさを知るには、とても良いレコードです(ビクターJD921-3)。
コッポラが指揮した「交響曲第三番 ハ短調(作品78)」は、オルガンと二台のピアノを伴った豪華な曲で、いかにもサン=サーンスらしい作品です。
ただし、こういった曲を誰もが好むとは限らないでしょう(ビクターJH17-20)。「ヴァイオリン協奏曲」が二つ、「チェロ協奏曲」と「チェロ・ソナタ」なども収められていますが、特別にサン=サーンスに興味がある人でなければ、そこまで面白いものではありません。
むしろ、短い曲の中に、親しみやすい魅力が詰まっているものがあります。「死の舞踏」などはその一つです。たわいもない曲ですが、ストコフスキーが指揮したものは、非常に重々しく迫力があります(ビクターJD559)。
ピアノ曲なら「ワルツ形式による練習曲」のコルトーによる演奏(ビクターJD196)、ヴァイオリン曲なら「序奏とロンド・カプリチオーソ」のハイフェッツ盤(ビクターJD829)や、「ハバネラ」のハイフェッツ盤(ビクターJD1292)などの方が、親しみやすくて楽しめるでしょう。
他にも組曲「アルジェリア」や歌劇「サムソンとデリラ」といった作品がありますが、決定版と言えるような良いレコードはありません。
歌劇「サムソンとデリラ」はサン=サーンスの傑作であり、ロマンチックで素晴らしい作品です。デリラの歌うアリアや酒宴の音楽などは、さまざまなレコードに収められています。

ウィニアフスキー
(ヘンリク・ヴィエニャフスキ 1835―1880)

 ポーランドのヴァイオリニストで、ヴァイオリン曲に有名なものがあります。
例えば「モスクワの思い出」のような曲は、最初に聴く人は誰でも好きになるでしょう。ビクターにはメニューインの演奏があります(JD1567)。エルマンの演奏も昔から有名です。
大物としては「ヴァイオリン協奏曲 第2番 ニ短調(作品22)」をハイフェッツが弾いたものがあります。管弦楽はロンドン・フィルハーモニック、指揮はバルビロリです(ビクターJD717-9)。
この曲はハイフェッツの得意演目で、第2楽章の優しさは少し足りないかもしれませんが、磨き抜かれた見事な演奏です。

ドリーブ
(レオ・ドリーブ 1836―1891)

 フランスの作曲家で、歌劇「ラクメ」が代表作です。
この中の「鐘の歌」は、コロラトゥラ・ソプラノ(非常に高い音域を華やかに歌う歌手)にとって素晴らしい曲目で、昔のテトラツィーニや、現代のリリー・ポンスの歌唱が良いでしょう。
ほかに舞踊曲「コッペリア」「シルヴィア」などがレコードになっています。

バラキレフ
(ミリイ・バラキレフ 1837―1910)

 ロシア国民楽派の「五人組」のリーダー的存在でしたが、作品は意外と少ないです。ムソルグスキーなどに与えた影響の方が、音楽史的には大きく語られます。
交響詩「タマール」は、唯一のレコードです。これはロシア・バレエ団の有名な出し物で、コッポラが指揮したものがレコード化されています(ビクターJD144-5)。

ビゼー
(ジョルジュ・ビゼー 1838―1875)

 歌劇「カルメン」、たったこの一作だけで、ビゼーは千年にわたって愛される魅力を持つことになるでしょう。

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