それでも子がにがまだおいおい泣いていますと、こんどは一枚の昆布がのろのろとすべってやって来て、
「かにさん、かにさん、どうしてそんなに泣いているの?」
と聞きました。
子がには、猿が親がにを殺したからかたきを討ちたいのだと言いました。
すると昆布も、
「なんて憎たらしい猿だ!
よしよし、おじさんがそのかたきをとってやるから、もう泣くんじゃないよ」
と言いました。
それでも子がにがまだしくしく泣いていますと、こんどはどっしりとした臼がころころと転がってやって来て、
「かにさん、かにさん、どうしてそんなに泣いているの?」
と聞きました。
子がには、猿が親がにを殺したからかたきを討ちたいのだと言いました。
すると臼も、
「なんて憎たらしい猿だ!
よしよし、おじさんがそのかたきをとってやるから、もう泣くんじゃないよ」
と言いました。
子がには、これでようやくすっかり泣きやみました。
栗と蜂と昆布と臼は、みんなで力を合わせて、猿をこらしめる「かたき討ち」の作戦会議をはじめたのです。
三
相談がやっとまとまると、臼と昆布と蜂と栗は、小さな子がにを連れて、あのずるい猿の家へこっそり出かけて行きました。
猿は、甘い柿を山ほど食べておなかがパンパンになり、食べた分の消化でもしようと山へ遊びに行ったとみえて、家にはいませんでした。
「ちょうどいいぞ。
この留守の間に、みんなで家の中に隠れて帰りを待っていよう」
と臼が提案すると、みんなは大賛成しました。そしていちばんに栗が、
「それじゃあ、わたしはここに隠れようっと!」
と言って、囲炉裏(いろり)の灰の中へもぐり込みました。
「わたしはここにするよ」
と言いながら、蜂はお水の入った水がめの陰に隠れました。
「わたしはここさ」
と、昆布は出入り口の敷居(しきい)の上に長々と寝そべりました。
「じゃあ、わたしはこの上に乗っていよう」
と臼は言って、部屋の上の鴨居(かもい)のところへよじ登りました。
夕方になって、猿はすっかりくたびれて、外から遊び疲れて帰って来ました。
そして囲炉裏のそばにどっかりと座り込み、
「あーあ、よく遊んだ! のどが渇いたぞ」
と言いながら、いきなりお茶のやかんにつかまろうと手を伸ばしました。するとその瞬間、灰の中に隠れていた栗が「ぽん!」とはね出し、ものすごい勢いで飛び上がって、猿の鼻の頭を力いっぱいパーンと蹴りつけました!
「あちっ! 熱いっ!」
と猿は大声で叫び、あわてて鼻面をおさえながら、大慌てで台所へ駆け出しました。
そして、やけどした鼻を冷やそうと思って水がめに顔を近づけますと、今度は陰から蜂が「ぶんっ!」と飛び出してきて、猿の目の上を「これでもか!」というほど痛く刺しました。
「痛いっ! 目が! 目がぁっ!」
と猿はさらに叫んで、また大パニックになりながらおもてへ逃げ出そうとしました。
しかし、あわてて逃げ出す拍子に、敷居の上にぴったり寝ていたぬるぬるの昆布に足をすべらせてしまい、見事に腹ばいのままドテッと派手に倒れてしまいました。
そのタイミングを見計らったかのように、上からあの重い臼が「どさり!」と転がり落ちてきて、猿の背中に「うんとこしょ」とものすごい重しとして乗っかってしまいました。
猿は、悔しさと痛さで顔を真っ赤にし、あまりの苦しさに「うんうん」とうなりながら、手足をバタバタとジタバタ暴れるばかりでした。
そのとき、お庭の隅から小さな子がにが「ちょろちょろ」とはい出してきて、
「親のかたきめ、あのときの恐怖を思い出せたか!」
と言いながら、立派なはさみをカチカチと大きく振り上げて、悪者である猿の首をチョキンッ!と思い切りはさんで懲らしめてやったのでした。
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