初級翻訳・若草物語 第21話

オルコット ルイーザ・メイ

お母さんは、まだ素直で純真なメグの心に、そんなくだらない大人の企みや噂を吹き込んだ人たちに対して怒りを感じ、唇をぎゅっと結びました。

ジョーは、怒って叫びました。
「なんて失礼でバカバカしい話かしら! そんなの聞いたこともないわ! どうして、お姉ちゃんはその場ではっきりと怒って言い返さなかったの?」

「そんなこと、私にはとてもできなかったわ。でも、あんまりひどい噂だったから、悔しくて恥ずかしくてたまらなかったの。本当ならすぐにでもお家に帰るべきだったのに、それすら忘れてしまうくらい頭が混乱しちゃっていたのよ」

「私たちみたいな貧乏な家の子供たちのことを、そんな風に面白半分で噂しているなんて! もしローリーがこのことを知ったら、きっと怒り狂って怒鳴り散らすに違いないわ」

「ローリーには、絶対にそんなことを言ってはダメよ。ね、お母さんからも言って!」

お母さんは、真剣な顔をして言いました。
「そうね、絶対に言ってはいけません。そんなバカバカしい噂話は、二度と口にしてはいけませんよ。できるだけ早く忘れてしまうのが一番です。あなたをあんな場所へ行かせてしまったのは、お母さんの失敗でしたね。親切のつもりなのでしょうけれど、下品で教養が浅く、若い人たちに意地の悪い考えを植え付けるような人たちだったのですから。メグ、もし今回のお出かけが、あなたに悪い影響を与えてしまったのだとしたら、お母さんは本当に悲しいわ」

「お母さん、心配しないで。私は、自分が悪かったところはちゃんと反省して直すわ。でもね、みんなからチヤホヤされて、可愛いって褒められるのは、やっぱり悪い気はしなかったの」
メグは、ちょっぴり恥ずかしそうに言いました。

「それは、女の子としてとても自然な気持ちですよ。だからといって、そのためにバカなことをしなければ、ちっとも悪いことではありません。ただ、人から褒められたときには、自分に本当にそれだけの価値があるかしらと心の中で問いかけてみて、いつも美しく、謙虚な女の子でいるように心がけるのですよ」

それから、話はお金持ちと結婚するための「お嫁入り計画」のことになり、メグはお母さんに聞いてみました。
「マフォット奥様が言っていたみたいに、お母さんも私たちのために、何か『計画』を立ててくれているの?」

「ええ、もちろん、たくさんの計画を立てていますよ。でもね、マフォット奥様が言っているようなものとは、全然違います。お母さんの計画というのはね、あなたたち姉妹が、美しく、教養があって、心優しい女の子に育ち、幸せな少女時代を過ごしてほしいということ。そして、いつか本当に素敵で賢いお相手と結婚して、神様に見守られながら、できるだけ苦労や心配をせずに、誰かの役に立つ楽しい一生を送ってほしいということなの。素晴らしい男の人に愛されて、奥さんとして選ばれるということは、女性にとって一番幸せで嬉しいことよ。お母さんは、あなたたちにも、そんな美しい経験をしてほしいと心から願っています。そういう未来を夢見るのはとても自然なことよ、メグ。その日が来るのを楽しみにして、静かに待ち、そのための準備をしておくことは、とても賢くて素晴らしいことなの。お母さんは、あなたたちのために、そんな大きな夢を抱いているのよ。でもね、ただ世間の華やかな場所にあなたたちを押し出して、お金持ちと結婚させたいわけでは決してないの。単にお金持ちだからとか、立派なお屋敷に住めるからという理由だけで結婚したとしても、そこには本当の『家庭』は生まれません。なぜなら、一番大切な『愛』が欠けているからよ。お金はもちろん必要で、大切なものです。上手に使えばとても尊いものだけれど、人生の中で何よりも先に手に入れなければいけない一番のものや、人生のご褒美だと思ってはいけません。お母さんはね、あなたたちが幸せで、誰かに愛され、心から満足して暮らしていけるなら、自分を誇る気持ちや心の平和を失って王座に座るお姫様になるよりも、むしろ、貧しくても心優しい人の温かい奥さんになってほしいと願っているのよ」

メグは、それを聞いて、小さくため息をついて言いました。
「でもね、ベルが言っていたわ。貧乏な家の子は、自分からどんどん前にしゃしゃり出ていかないと、結婚するチャンスなんてつかめないのよって」

するとジョーが、きっぱりと力強い声で言いました。
「それなら、私たちは一生、お嫁に行き遅れた『おひとり様』のままでいましょうよ!」

「そうね、ジョーの言う通りよ。不幸な結婚生活を送ったり、いい旦那さんを見つけようとギラギラして女の子らしさを忘れてしまっている子になるくらいなら、幸せなお嫁に行き遅れた女の子のままでいる方が、ずっと素敵です。何も心配することはありませんよ。メグ、本当に心からあなたを愛してくれる人なら、あなたが貧乏だからといって、しり込みしたりは絶対にしません。お母さんの知り合いの素晴らしい女性たちの中にも、昔はとても貧しかった人がたくさんいます。でもね、その人たちはみんな、誰からも愛される素晴らしい価値を持っていたから、周りの人たちが放っておくはずがなかったの。だから、みんなちゃんとお嫁に行けたのよ」「だから、そういう未来のことは自然の流れにまかせておけばいいの。今は、このお家を幸せな場所にすることに力を尽くしましょう。そして、いつか結婚を申し込まれたら、その新しいお家にふさわしい素敵な人になればいいし、もし良い結婚ができなくても、このお家で満足して楽しく暮らせばいいのですよ。

それから、もう一つ、絶対に覚えておいてね。お母さんはいつでも、あなたがどんな秘密でも打ち明けられる相手だということ。そして、お父さんは、あなたたちの素晴らしいお友達だということです。

お父さんもお母さんも、あなたたちが結婚しても、ずっと独身のままでいても、私たちの人生の誇りであり、心の支えになってくれると信じているし、そうあってほしいと願っているのよ」

メグとジョーは、
「お母さん、私たち、絶対にそんな素敵な女の子になります!」と、心の底から叫んで、おやすみなさいの挨拶をしました。

第10章 ピクウィック・クラブと郵便局

春がやってくると、新しい楽しい遊びが次々とはやりだしました。少しずつ日が長くなるにつれて、たっぷりある午後の時間に、いろんなお仕事や遊びができるようになったのです。

みんなで、お庭のお手入れもしなければなりませんでした。

四姉妹はそれぞれ、お庭の4分の1ずつのスペースをもらって、自分の好きなようにガーデニングを楽しみました。

お手伝いのハンナが「どの場所がどのお嬢様のお庭か、遠い中国から見たって一目でわかるわ!」と言ったのですが、本当にその通りで、四人の好みはそれぞれ個性的で違っていました。

メグはお庭に、美しいバラや、いい香りのヘリオトロープ、天人花(てんにんか)、そして可愛らしいオレンジの木を植えました。ジョーの花壇はというと、二年のあいだ、一度だって同じものが植えられたことがありませんでした。いつも新しい実験をやりたがったからです。今年はひまわりを植える計画で、その種をニワトリやヒヨコたちのごちそうにするつもりでした。

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