初級翻訳・郵便切手 第2話

宮本 百合子

そう言われる時がやってきて、働いていたあのたくさんの女性たちは、みんな切手の中から抜け出して、生活費を稼ぐ必要という荷物もまとめて家庭へと帰っていったとでもいうのだろうか。
全国で七百五十万人を失業させようというその最初のターゲットは、三百五十万人の女性や若い従業員たちに向けられている。
さらに国の整理によって、二百万人の失業者が出るだろう。
軍需産業への補償の打ち切りで、百万人が職を追われるだろう。
新聞はそう報じている。
一方で、労働を調整する法律などが作られつつあるが、大企業や銀行の利益を守るための失業の嵐は誰にとっても脅威の影となっており、働く大衆は、しっかりと本当の意味での国民の主権を実現し、生産の仕組みを一部の独占から自分たちの手に取り戻さなければ、とても生きていけないところまで来ているのである。
そんな今日、私たちが手紙に貼る切手のデザインは何だろうか。
宮島の海の中に浮かぶ鳥居が描かれている。
妙義山がある。
「観光日本」のポスターを小さく縮めたようなものが出てきているのだ。
そのうえ、七銭や二銭の切手は昔のままの東郷や乃木で、まるで国際裁判のことをからかっているかのようにさえ見える。
私たちには、私たちの気に入ったデザインの切手がほしい。
そう思うのは、今の現実の中で決して私一人だけではないはずだと思っている。
〔一九四六年十・十一月〕

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