その目でにらみつけながら、ギリギリと近づいてくるのです。
少年たちはあまりのこわさに両手で目をふさいで、そこへうずくまってしまいました。
ロボットたちはやおそろしい力でふたりの少年の両手を左右から引っぱって、どこかへ連れていくのです。
少年たちは目がくらんで、どこをどう歩いたのかまるでわかりませんでした。
ふと気がつくと、いつの間にか部屋の中へきていました。
ロボットやさっきの少女はどこかへいってしまって、目の前にはあのおそろしい鉄人Qがニヤニヤ笑って立っているのでした。
さっきは首も手も足もバラバラになってしまった怪人が、いまはもとの姿にもどってそこにつったっていたのです。
「ハハハハハハ……。
おどろいたかね。
しかし、きみたちがとなしくこのうちにいれば、ひどいめにあわしやしないよ。
だが、それにはやくそくがある。
いいかね、ここはおばけの家だ。
だから、きみたちもおばけにならなくてはいけないのだ。
さあ、この服と着かえて、このおばけの頭をかぶるのだ。」
そういって鉄人Qが指さしたテーブルの上を見ると、そこには青い服と青いズボンと、それからさっきの少女がかぶっていたのとそっくりの一つ目小僧の大きいはりこの頭がおいてあるのでした。
二少年はしかたがないのでおばけの頭をかぶろうとしていますと、そのとき部屋の向こうの黒いカーテンの上に白いものが現われたかとおもうと、それが宙に浮いてフワフワとこちらへ近づいてくるのが見えました。
「あっ、がいこつの首だ……。」
北見君がまっさおになって思わずつぶやきました。
すると鉄人Qがぶきみに笑って、
「ウフフフフ……、どうだい? ここはほんとうにおばけやしきだろう。
あのがいこつがなにをするか、よく見てごらん。」
といいました。
がいこつの首はしばらく空中をとびまわっていましたが、それが動かなくなると首の下にパッと胴体が現われ、両手がくっつき、両足がはえて、ちゃんとしたがいこつになってしまいました。そして、がいこつは踊りながらあちこちと歩き回っていましたが、すると今度は、両手が胴体から離れてスーッと天井の方へ飛んでいってしまい、足も消え、胴体も消えてしまって、がいこつの首だけがそこのテーブルの上にちょこんと乗っかりました。
「ウフフフ……、きみたち、この奇術のたねがわかったかね?」
鉄人Qが笑いながらたずねるのです。
「あっ、わかった、ブラック・マジックだ、そうでしょう?」
中井少年が叫ぶように言いました。
「そうかもしれない。じゃあ、そのわけを話してごらん。」
鉄人Qはまるで学校の先生のようにやさしくたずねるのでした。
「この部屋の電灯はみんなこっちを向いていて、あの黒いカーテンの方へは光がとどかないようにしてある。これが奇術のたねですよ。だから、黒いカーテンの前では、黒い着物を着ていればこちらからはすこしも見えません。まっ白なものだけが見えるのです。だから、人間が黒いシャツとズボンをつけ、それに白い絵の具でがいこつの絵を書いておけば、黒いところはこちらから見えないので、ほんとうのがいこつが踊っているように思われるのです。がいこつの首がテーブルに乗っかったり、手が天井へとんでいったりしたのは、がいこつの人形の首や手ばかりが別に用意してあって、それに黒い布をかぶせて隠してあるのです。まっ黒なシャツとズボンをつけて、黒頭巾をした人がそれをあやつるのですよ。黒い布をとればがいこつの首や手が現われるし、かぶせれば消えてしまうのです。さっき鉄人Qの首がテーブルの上に乗っかったのも同じわけですよ。あれは人形の首だったのです。」
中井少年は立派に奇術のたねあかしをしてみせました。
「えらいっ、そのとおりだ。だがね、このおばけやしきにはブラック・マジックばかりじゃない。もっといろいろな秘密の仕掛けがあるのだよ。だが、きょうはこれだけにしておこう。いまきみたちの部屋へ案内させるからね。」
鉄人Qはおだやかな口ぶりでそう言うのでした。
B・Dバッジ
「おじさんは鉄人Qと言われているけど、ほんとうはだれなのですか。そして、おじさんはぼくたちをつかまえてどうしようというのですか。」
中井君が勇敢にといかけました。
すると、鉄人Qは少しも動かない鉄の顔でうすきみ悪く笑いました。
「ウフフフ……、おれはだれでもない、鉄人Qというロボットだよ。それから、きみたちをつかまえたわけはね、きみたちのお父さんの持っている美術品をおねだりしたいからだよ。それにはきみたちを人質にしたほうが都合がいいからね。ウフフフ……、おい、このふたりを六号室へぶちこむんだっ。」
それをきくと、ドアの向こうにいた一人の部下がのっそりとはいってきて、二少年の手をとりました。
「さあ、こっちへくるんだよ。」
そのまま廊下をグルグルまわって、旧式な鉄のベッドが一つしか置いてない、きたない部屋へとじこめられてしまいました。
ドアには外からかぎをかけられ、一つしかない窓には鉄ごうしがはまっているので、逃げだすなんて思いもよりません。
ふたりはもうあきらめてベッドに腰かけて、グッタリしていました。
ベッドの上にはあの青い服と、一つ目小僧のはりこの頭が二つずつ置いてあります。
部下のやつがすぐにそれをかぶれと言って置いていったのです。
ふたりはしばらくぐったしたままものもいわないでいましたが、やがて中井少年がぐっと顔をあげました。
目がキラキラ光っています。
「あっ、いいことを思いついた。」
そう言うと、いきなり窓のところへ走っていって、ガラス戸を上にあげました。
外に鉄ごうしがはまっているので、ガラス戸にはかぎがかかっていないのです。
窓の外には高いコンクリートべいがつづいていて外は見えませんが、そこは道路にちがいないのです。
「うまいっ、ここからほうればいいんだ。」
中井君はそんなひとりごとを言って、ポケットから手帳と鉛筆を取りだし、なにか書きつけてそれを北見君に見せました。
ぼくたちはこの地図の西洋館にとじこめられています。
ここは鉄人Qのすみかです。
すぐにたすけにきてください。
その横に、この西洋館への道順図でしめし、明智探偵事務所のある麹町アパートへの道順も書いてあります。
この手紙を明智探偵事務所へとどけてくれた人には、このB・Dバッジをあげます。
そしてあとでもっとお礼をあげます。
と書きくわえました。北見少年が、それを読んでいるあいだに、中井少年は、ズボンのポケットをジャラジャラいわせて、なにか、つかみだしました。
にぎった手をひろげると、そこに二十個ほどのB・Dバッジが、ウジャウジャと、のっています。
北見君はまだ知りませんでしたが、このたくさんのB・Dバッジは、少年探偵団員の七つ道具の一つなのです。
それには、いろいろな、使いみちがありましたが、そのうちのひとつを、中井君はいま、思いだしたのです。
いったい、どんな使いみちだったのでしょうか。
七つ道具
B・Dバッジは、団員の胸につけている目じるしで、まるいしんちゅうに銀メッキをして、少年探偵という英語のかしら字のBとDをくみあわせて、うきぼりにしたものです。
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