初級翻訳・青い時計台 第2話

小川 未明

娘たちはみんな美しく着飾っていて、これまでになくきれいに見えました。
そしてテーブルの上には、いろいろな花が咲き乱れているだけでなく、桃色のランプのほかに緑色のランプも灯っていて、まるで楽園に来たような気分でした。

けれど、たった一人、お父さんの姿だけが見当たりませんでした。
これらの若い男女は、お互いに素敵な声で歌い、話し、また手を取り合ってダンスをしていました。
その夜、さよ子は家に帰る途中で考えました。
「どうしてあの人たちは、あんなふうに楽しく遊んでばかりいられるんだろう……」
そう思うと、なんだか不思議でなりませんでした。

それからというもの、毎晩、さよ子は町の方から聞こえてくる素敵な音色を聞くたびに、不思議な思いをせずにはいられなくなりました。
やがて、赤く燃えるようだった夏が過ぎ去ろうとしていました。
つばめが海を渡り、遠い南の「永遠に夏の国」へ帰る時分となりました。

ある夜、さよ子は二階のベランダに出て、涼しく澄んだ星の光を見上げながら、町の方から聞こえてくる素敵な音色に耳を澄まそうとしました。けれど、どうしたことか、いつも聞き慣れたその音色は聞こえてきませんでした。
次の日も、やはり聞こえてきませんでした。

さよ子は不思議に思って、あの町へやってきました。
すると、その家は固く閉ざされ、入り口には「売り家」の札が貼ってありました。
ただ一人、高い時計台だけが青く空に突き立っていて、初秋の星の光が冷たくガラスに反射していました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました