初級翻訳・風と木 からすときつね 第2話

小川 未明

そっくりそのまま、地面の上に残っています」
 きつねは、自分たちが秋から冬になるまでの間、畑の積み藁(わら)の中で眠っていたことがあり、やがて雪が降ってその藁を埋めると崖の穴に移り、翌年雪が消えたころに元の藁のあたりへ行ってみると、藁はそのまま残っていることを知っていたからです。

「この雪が解けて、どんなに大水が出るかということを、あなたは知らないからです」と、からすは言って信じませんでした。
春になって、北風がいつしか南から吹く風に変わると、雪はどんどん消えていきました。そしてからすの言う通り、川という川が水でいっぱいにあふれました。しかし、その水は方々からほとんど気づかないほど静かに、ゆるやかに、雪が解けるままに流れて集まってきたもので、決して畑にある積み藁や、また野原にあるどんな小さな板くずをも流すようなものではなかったのです。

それをなぜ、からすが大水で流れると言ったのかというと、からすはいつか秋の末に、どこからか蒸した芋を拾ってきて、穴を掘って埋めておいたことがありました。そのうちに雪が降ってしまって、掘り出す暇がなかったのでした。そして雪が消えてそこへ行ってみたときは、何も残っていませんでした。からすは、芋が水のために流れてしまったのだと思い込んでいたのです。もぐらが冬の間にそれを食べてしまったことを、からすは知らなかったからでした。

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