初級翻訳・鹿踊りのはじまり 第3話

宮沢 賢治

鹿たちはびっくりして、一斉に竿のように立ち上がると、まるで強い風に吹き飛ばされる木の葉のように、体を斜めにして逃げ出しました。
銀色のススキの波をかき分け、輝く夕陽の光の筋を乱しながら、はるか遠くへと駆け去っていきました。彼らが通り過ぎたあとのススキの原は、まるで静かな湖にできた船の航跡のように、いつまでもギラギラと光っていました。
そこで嘉十は、少し苦笑いをしながら、泥がついて穴のあいた手拭いを拾い上げ、自分もまた西の方へと歩き始めたのでした。
それから、そうそう、苔の野原の夕陽の中で、わたくしはこのお話を、透き通った秋の風から聞いたのです。

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