子供たちはつま先立ちをして「ばんざーい!」と叫んだり、指を口にくわえて口笛を吹いたりしました。
ふだんでは絶対に見られない、それはそれはすばらしい光景でした。
「うん、そうだ。ぼくも何かやってみようかな」と、商人の息子は考えました。
そこで打ち上げ花火や爆竹、そのほか花火という花火を買い込んで、それをトランクの中に入れて空へと飛び上がりました。
ポン、ポン! と、花火は空高く上がり、大きな音を立てて爆発しました。
それを見て、トルコ人たちはみんなびっくり仰天し、スリッパが耳のあたりまで飛ぶほど飛び上がりました。
いままで、こんなにすごい空の光景を見たことがなかったのです。
これで、お姫さまと結婚する人がトルコの神さまだということは、だれにもよく分かりました。
商人の息子はトランクに乗ってまた森の中へ戻ってきましたが、すぐに考えました。
「ひとつ町へ出かけていって、みんながどんな噂をしているか聞いてこよう」息子がそうしたいと思ったのも、まったく無理のない話です。
ところが、人々の話ときたらどうでしょう! 聞く人ごとに、それぞれ違ったふうに見ていたのです。
それでも、すばらしかったということだけは、だれの目にも同じように映っていました。
「わたしはトルコの神さまを見ました」と、ひとりが言いました。
「神さまの目は、キラキラ光る星のようでした。ひげは、まるで泡立つ水のようでしたよ」
「神さまは、火のマントを着て飛んでいましたよ」と、ほかの者が言いました。
「きれいな、かわいい天使たちが、マントのひだの間から顔をのぞかせていましたっけ」
本当に、耳に入ってくるのはすばらしいことばかりでした。
おまけに、次は結婚式の日ときています。
商人の息子はトランクの中に入って休もうと思いながら、森へ帰ってきました。
――ところが、どうしたことでしょう! トランクは? トランクはどこでしょう? それは燃えてしまったのです。
花火の火の粉が一つ残っていて、そこから火がついて、トランクは灰になってしまったのでした。
こうなっては、もう空を飛ぶことができません。
花嫁さんのところへ行くこともできません。
花嫁さんは一日中、屋根の上に出て待っていました。
いまでも、まだ待っているのです。
ところで商人の息子のほうは、世界中を歩き回って、お話をしています。
でも、あのお台所のマッチたちのお話をしたときのように、おもしろい話はもうひとつもありません。
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