初級翻訳・若草物語 第22話

オルコット ルイーザ・メイ

ベスは、スイートピーやモクセイソウ、ヒエンソウ、ナデシコ、パンジー、ヨモギなど、昔ながらの香りのいいお花を植えました。それから、小鳥たちのご飯になるハコベや、子猫が大好きなイヌハッカも忘れずに植えてあげました。

エイミーは、小さいけれど、とっても可愛いあずまや(庭の休憩所)を作りました。その屋根にスイカズラやアサガオのツルをはわせて、色とりどりの花を咲かせたのです。

さらに、背の高い白いユリや、優しい緑のシダなど、たくさんの植物を植え込みました。

晴れた日には、お庭の手入れをしたり、お散歩に出かけたり、川でボートをこいだり、お花を集めたりして過ごしました。そして雨の日には、お家の中で色々な遊びをして時間を過ごしました。

そんな遊びの中には、昔からやっているものもあれば、新しく思いついたものもありました。その中の一つである「ピクウィック・クラブ」は、イギリスの有名な作家であるディケンズの小説から名前をとったものでした。

このクラブは、そのころ姉妹の間で大ブームになっていた「ひみつ結社」で、土曜日の夕方に広い屋根裏部屋で開かれ、もう丸一年も続いていたのです。

集会は、次のような順番で行われます。

まず、ランプが置かれたテーブルの前に3つの椅子を並べます。そして、それぞれ違う色の糸でクラブの頭文字「P・C」という2つの大きな文字を刺繍した、4つの白い記章(ワッペン)が用意されました。

さらに、「ピクウィック週報」という週刊新聞が発行されることになっていて、会員はみんな、何か記事を書かなければなりませんでした。文才のあるジョーが、その編集長をつとめました。

夜の7時になると、4人のメンバーは屋根裏のクラブ室へと上がっていき、首に記章を巻きつけて、とても真面目で厳かな態度で席につきました。

ディケンズの小説に出てくる登場人物の名前を借りて、一番年上のメグは「サミュエル・ピクウィック氏」。

文学センスのあるジョーは「オーガスタス・スノッドグラス氏」、ベスは「トレイシー・タップマン氏」、エイミーは「ナサニエル・ウィンクル氏」になりきりました。

会長であるピクウィック氏(メグ)が、週報を読み上げます。

その週報には、みんなが書いたお話や詩、地元のニュース、おかしな広告、お互いのダメなところを優しく注意し合う「お説教コーナー」などが、ぎっしりと載っていました。

今夜は、レンズの入っていないメガネをかけた会長が、テーブルをコツコツと叩いてゴホンと咳払いをし、ゆっくりと読み始めました。

会長が週報を読み終わると、みんなから一斉に大きな拍手が沸き起こりました。すると次に、スノッドグラス氏(ジョー)が、ある提案をするために立ち上がりました。

「会長、ならびに紳士の皆様!」と、まるで議会で演説でもするような、堂々とした態度と声のトーンで話し始めました。

「私はここに、新メンバー1名の入会をお許しいただきたく、提案いたします! その方は、この名誉あるクラブに加わるのに最もふさわしい人物であり、入会していただければ、我がクラブの精神や、週報の文学的なレベルを大いに高めてくれるに違いありません。その人物とは……ほかでもありません、セオドア・ローレンス君(ローリー)です! ねぇ、みんな、彼を入れてあげましょうよ!」

ジョーの演説は、最後の最後でいつものしゃべり方に変わってしまったので、みんなは大笑いしました。

けれど、笑ったのもつかの間、みんなはすぐに心配そうな顔になり、だれ一人として何も言わなくなってしまいました。

そこで会長が、「それでは、投票によって決めることにします」と言い、続けて「この提案に賛成の方は、『賛成!』と言ってください」と、大きな声で呼びかけました。すると、びっくりしたことに、ベス扮するトレイシー・タップマン氏が、おずおずとした小さな声で、
「賛成!」
と言いました。

「反対の方は、『不賛成』と言ってください」

メグとエイミー、つまりピクウィック氏とウィンクル氏は不賛成でした。
そして、まずはエイミー扮するウィンクル氏が立ち上がって、とてもお上品にこう言いました。
「私たちは、男の子を入会させたくありませんわ。男の子は、ふざけたり、あちこち引っかき回したりするだけですもの。これは女の子だけのクラブなんですから、私たちだけでやっていきたいですわ」

続いて、メグ扮するピクウィック氏が、何かを疑うときにするいつものクセで、おでこの小さな巻き毛を引っ張りながら言いました。
「ローリーは、きっと私たちの週報を笑いものにして、あとでからかってくると思うわ」

すると、ジョー扮するスノッドグラス氏は、バネのようにはじけ飛んで立ち上がり、熱い思いを込めて言いました。
「私は紳士として誓います! ローリーは絶対にそんなことはしません。彼は文章を書くのが大好きですし、私たちの書いたものに素敵な味わいを添えてくれて、私たちが甘ったるいおセンチな気分になるのを防いでくれるはずです。そう思いませんか? 私たちが彼にしてあげられることはほんの少しですが、彼は私たちのためにたくさんのことをしてくれます。ですから、彼に会員の席を用意して、もし入会してくれるなら、大喜びで迎えようではありませんか!」

普段からどれだけローリーにお世話になっているかを上手に言われたので、ベス扮するタップマン氏は、すっかり決心がついた様子で立ち上がりました。
「その通りです。たとえ少し心配なことがあったとしても、彼を入会させましょう。もし彼のおじいさんだって入りたいと言うなら、入会させてあげてもいいと思います!」

ベスのこの力強い発言にみんなはびっくりし、ジョーは席から飛び出して握手を求めにやってきました。

「さあ、それではもう一度投票します! みなさん、あの私たちのローリーであることをよく考えて、『賛成』と言ってください!」

ジョー扮するスノッドグラス氏が勢いよく叫ぶと、すぐに「賛成!」という3つの声が同時に響き渡りました。

「よし、大成功! なんて幸せなんでしょう! それでは時間を無駄にせず、さっそく新会員をご紹介します!」
ジョーがそう言って戸棚の扉を開けると、なんと、ゴミ箱用の袋の上に、おかしさを必死でこらえて顔を真っ赤にしたローリーが座っていました。

このいたずらに、すっかり騙された3人が、
「なんていたずらっ子なの! ひどいわ!」
とブツブツ文句を言っている間に、ジョーは彼を戸棚から引っ張り出し、会員のバッジを渡して席に座らせてしまいました。

「あなたたち二人のずる賢さには、本当に驚かされましたよ」
ピクウィック氏(メグ)は、怖いしかめっ面をしようとしましたが、どうしても我慢できずにニコニコ笑顔になってしまいました。

すると新会員は、うやうやしくお辞儀をして、とても愛想の良い様子で言いました。
「会長閣下、そして淑女の皆様……おっと失礼、紳士の皆様! どうか自己紹介をお許しください。私は、この素晴らしいクラブの末席に加わらせていただく、サム・ウェラーと申します」

「素敵! 素敵!」と、ジョーはテーブルをパチパチと叩きながら大喜びしました。

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