初級翻訳・雪の女王 第14話

アンデルセン ハンス・クリスチャン

そして、娘は広い世の中へと馬をとばしていきました。
カイとゲルダは、また手を取り合って歩いていきました。
ふたりが進んでいくにつれて、あたりは花と緑につつまれた、美しい春の景色に変わっていきました。
やがて、教会の鐘の音が聞こえてきました。
そして、見覚えのある高い塔が見え、大きな町が見えてきました。
それは、ふたりが昔住んでいた町だったのです。
ふたりは町の中へ入り、おばあさんの家の戸口まで行きました。
そして、階段をのぼって部屋の中へ入りました。
部屋の中の様子は、なにもかも昔のままでした。
時計は「カチ、カチ」と音を立てていました。時計の針も、ちゃんと回っていました。
けれども、入り口を通ったときに、ふたりは自分たちがいつの間にか大人になっていることに気がつきました。
屋根の雨どいの上に咲いているバラの花が、開かれた窓から中をのぞいていました。
そこには、小さな子供用の椅子が置いてありました。
カイとゲルダはそれぞれの椅子に腰をおろして、手をにぎりあいました。
ふたりは、雪の女王のお城にあった、なにひとつない寒々とした美しさを、おもくるしい夢のようにすっかり忘れてしまいました。
おばあさんは、神さまの明るいお日さまの光をあびて、聖書を読んでいました。
「もし、あなたがたが幼な子のように純粋でなければ、天国に入ることはできない!」
カイとゲルダは、たがいに目を見合わせました。
そのとき、急にあの古い讃美歌の意味が、心に深くしみこんできました。
バラの花 かおる谷間に、
あおぎまつる おさな子イエスさま!

こうして、このふたりは、大人であって、しかも子供のふたりとして、そうです、心の美しい子供たちは、そこに座っていました。
いまは夏でした。
あたたかい、恵みゆたかな夏でした。

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