やがて、薄暗い子供たちの「巣」へと戻ってきました。庭の縁台に集まっていた家主や近所の人たちは、彼が帰ってきたので散らばっていきました。電灯の周りには、虫たちが相変わらず竜巻のように渦を巻いて飛び回っていました。
「恐ろしいほどの虫だな」
「いや、虫やハエなんかを怖がっていたら、こんなところには住んでいられませんよ」長男は、島流しのような寂しさを吹き飛ばすように明るく言いました。
「それはそうだけど……」彼はそう言いながら、手土産の一つを春代に開けさせました。中からチョコレートの包みや、大小さまざまな菓子の瓶が出てきました。みんなでチョコレートを食べました。
「こんなところでは、缶詰なんかを持ち込むより、やっぱり新鮮な魚をたくさん食べたほうがいいですね」
「ところが都会というものは困ったもんでね、汽車が着くやいなや、うまい魚はみんな東京の人たちに買い占められてしまうんだ。そのうち、都会から魚が回ってくるような『逆輸入』という事態になるかもしれないよ」
チョコレートを摘みながら、彼らは土地の話や人の話をして夜を更かしました。そして十時頃には、父子六人で二張りの蚊帳の中に入り、枕につきました。
翌日も良い天気でした。田んぼの稲は、どこへ行っても風に揺れて微笑んでいるようでした。
彼は何日目かに、また京子と一緒に海に入りました。海は、赤いホオズキや青いホオズキが浮かんでいるように、色とりどりの浮き輪や水着でいっぱいでした。ボートやヨットがその間を縫うように走り、櫓からは銀色のしずくがキラキラと飛び散っていました。
ふと浜へ上がってみると、真っ黒になった長男がテントの下にも海にも見当たりません。
「兄さんはどこかな?」彼は京子に尋ねました。
「お兄ちゃんならあそこよ。女の人と話しているでしょう」京子が指さしました。
すぐ目の先で、黒い長男はタオル地のような服を着た若い女性と、背中合わせに肩を並べて立ちながら話をしていました。
「あれは誰だい?」
「お兄ちゃんの学校にいた人の妹さんよ。去年も来ていたの。あの方たちのお仲間は、とってもたくさんいるのよ」春代が控えめに教えてくれました。
初級翻訳・青い風 第4話
徳田 秋声
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