みんなは不思議に思って顔を上げ、空を見ようとしました。すると、真っ青な海の上に、三つの黒い人間の影が、ぼんやりと浮かんでいるのが見えたのです。
その三つの黒い影には、足がありませんでした。足があるはずの場所は、青い青い海の、うねりうねる波の上になっていて、まるで黒い坊主のように、三つの影がぼんやりと空間に浮かんで見えたのです。これを見たみんなの体は、急にぞっとして総毛立ちました。
「いつか行方不明になった三人の亡霊に違いない」
みんなは心の中でそれぞれ思いました。
「今日は縁起の悪いものを見た。さあ、間違いのないうちに陸へ帰ろう」
みんなはそう言って、急いで舟を陸の方へ引き返しました。しかし不思議なことに、陸に向かって少しも戻らないうちに、どの船も何の故障もないのに、自然と海に飲み込まれるように音もなく沈んでしまったのです。
次の話は、ある寒い冬の日のことです。海の上はあいかわらず銀色に凍りついていました。見渡す限り、目に入るものは何もありませんでした。よく晴れた寒い日で、太陽が赤く地平線に沈もうとしていたときのことです。
そのとき、遠くの寂しい地平線に、五台の赤いそりが現れました。それぞれ同じ間隔をあけて行儀よく、しかも速やかに、一直線にかなたを走っていく姿が見えたのです。
それを見た人々は、誰もが声を上げて驚かずにはいられませんでした。「あれは、いつか三人を捜索しに出かけて、そのまま戻らなかった五人の乗っていた赤いそりじゃないか」
それを見た人々は、驚いて口々に言いました。
「ああ、この国に何か悪いことが起きなければいいが」
みんなは不安そうに言いました。
「あのとき、あの五人の仲間を助けに、結局だれも行こうとしなかったじゃないか」
「それに、あのあとも、みんなのために何一つお祭りさえしてやらなかったな」
みんなは、行方不明になった仲間に対して、自分たちが十分なことをしてやれなかったと、今さらながら深く後悔しました。
この国を訪れた人はだれでも、この「黒い人と赤いそり」の話を、不思議な出来事として語り継がれるのを聞くことになるでしょう。
コメント