初級翻訳・みにくいアヒルの子 第5話

みにくいアヒルの子

けれども、それはもう、みんなに嫌がられたあの不格好で灰色の鳥の姿ではありません。
そこには、美しい一羽のハクチョウが映っているではありませんか。
そうです。
ハクチョウの卵から生まれたのなら、たとえ鳥小屋で育ったとしても、やっぱり立派なハクチョウに決まっているのです。
アヒルの子は、今までに受けてきた数々の苦しみや悲しみを思い返すたび、今のこの幸福を心からうれしく思いました。
そして、自分に与えられたこの幸福や素晴らしさが、今ようやく分かったのです。
本当に、なんて幸せなことでしょう!
大きなハクチョウたちは、この新しいハクチョウのまわりを泳ぎながら、くちばしで優しく羽をなでてくれました。
そのとき、小さな子どもたちが二、三人、お庭の中へ入ってきました。
みんなはパンくずや麦の粒を、水の中へ投げてくれました。
そのうちに、一番小さな子が大声で叫びました。
「あっ、あそこに新しいハクチョウがいるよ!」
すると、ほかの子供たちも一緒になって、うれしそうな声を上げました。
「本当だ。新しいハクチョウが来た!」
みんなは手を叩いて踊り回ると、お父さんとお母さんのところへ駆け寄りました。
それから、またパンやお菓子を投げてくれました。
そして、だれもかれもが口々に言いました。
「新しいハクチョウが一番きれいだね。とても若くて美しいね」
すると、年上のハクチョウたちが、若いハクチョウの前で頭を下げました。
若いハクチョウは恥ずかしさでいっぱいになり、どうしてよいかわからなくなって、頭を翼の下に隠しました。
ハクチョウは、とてもとても幸せでした。
でも、少しも威張ったりはしませんでした。
心の素直な者は、決して威張ったりはしないものなのです。
ハクチョウは、今までどんなにみんなから追いかけられ、馬鹿にされたかを思い出しました。
けれども今は、みんなが自分のことを「美しい鳥の中でも一番美しい」と言ってくれているのです。
ニワトコは、水の上にいるハクチョウに向かって枝を差し伸べ、そっと頭を下げました。
お日さまは、それはそれは暖かく、優しく照らしていました。
ハクチョウは羽を美しく広げ、ほっそりとした首をまっすぐに起こしました。
そして、心の底から喜びを込めて言いました。
「ぼくがみにくいアヒルの子だったときには、こんなに幸福になれるなんて、夢にも思わなかった!」

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