わかった言葉は、「もうひとつハシゴがおじゃったな――なんぞ、持ってくんのひとつだけでよかったんか、ビルがもひとつ持ってて――ここ、この角に立てかけ――ちがう、まずふたつつなげねえと――その高さだと、まだとどかな――おお、これでちょうどいい、やかまし言うな――ここだ、ビル! このロープをつかめ――やねはだいじょうぶか?――気をつけろ、あのかわら、ずれて――あ、落ちてくる! 下の、気をつ――」(ずどーん)「さて、だれがあれやる?――ビルじゃねえか――だれがえんとつおりるでおじゃ――やめろ、おらあいやだ! てめえ行けよ!――んな、おらだってそんなの――行くべきはビルでおじゃる――おい、ビル! おやかたさまがおおせだ、お前さんえんとつを下りてけって!」
「まあ、ならビルがえんとつを下りなくちゃいけないってこと?」とアリスはひとりごと。「ふぅん、ぜんぶビルにおしつけたみたいね! あたくしも、たくさんもらったってビルの代わりはおことわり。だんろはすごくきちきちだけど、たぶんちょっとけり上げるくらいは!」
できるだけだんろの底の方まで足を引いて、小動物の気配がするまで待ちぶせをします。(相手の正体もよくわからないままに)がりっ、そろそろとえんとつのなか間近まで。そのとき、「こいつがビルね」とひとりごとついでにしゅっとけり上げて、またじっとして次に起こることをさぐりました。
まず初めに「ありゃビルだ」の大合唱、それからひとりウサギの声、「受け止めるでおじゃる、生けがきのそばぞ!」しーんとしたあと、また今度はざわざわあわてふためく、「どういうことだ、おめえさん。」「何があった? 子細を教えてくれ。」
おしまいには、弱々しげなきぃきぃ声(「こいつがビルね」とはアリスの考え)で、こう言いました。「んあ、よくわかんねえ――頭がこんがらがって――何かがこっちに来た、びっくり箱みてえに、んで、もう次にはぴょーんとロケット花火みてえで。」
「たしかにそんなんだった、おめえさん!」と一同の声が響きます。
「この家を焼きはらわんとな!」とはウサギの声。そこでアリスはあらんかぎりの大声でさけびました。「やってみなさい、あなたたちにダイナをけしかけてよ!」
これがきいて、またしーんとなりました。そこでアリスが「でもどうやってダイナをここへ連れてくるわけ?」と考えているうち、気づけばたいへんうれしいことに、どんどん体がちぢんでいくではありませんか。
あっというまに、息苦しい横向きの姿勢からもぬけ出せて、この部屋からも出てゆけるようになるほどで、ものの数分もするとまたまた7センチの背たけになりました。
全速力でそのおうちからかけ出すと、見つかるのは外で立ちつくす小動物のむれ――モルモット、ラッテといったネズミたちにリスどもと、ミドリカナヘビっていうトカゲの〈ビル〉くん。モルモットの1ぴきにかかえられていて、ほかにもびんから何か飲ませてやってるのもいました。
みんなして、アリスが出てきたのを見るなりおそいかかってきたので、アリスはひっしで走りました。たちまち気づくと、深い森のなかにいました。
みっつめ
「第1にやるべきことは、」とアリスは森をうろうろしながらひとりごとを言います。「元の背たけになること。それから第2は、あのすてきなお庭へ出る道を見つけること。どうもそうしてみるのがいちばんよさそう。」
たしかに、そうするのがいちばんうってつけで、すっきりわかりやすい思いつきに聞こえます。ただひとつこまったことに、どこから手をつければいいのかさっぱりわからなくてね。そうして、まわりの木々のあいだをそわそわとのぞきこんでいると、ワンとほえる声が頭の上からして、アリスはもうびくっと顔を起こしました。
1ぴきの図体のでかいワンコが、くりくりと大きなお目々でこっちを見ていて、ぷるぷると前足をのばして当てようとしてきます。
「よしよし!」とアリスはあやす言葉をかけ、口ぶえを強くふこうとしたのですが、相手がはらぺこなのかなと気づいたらふるえがとまらなくなっちゃって。そうなってくると、いくらなだめてもきっとむしゃむしゃ食べられちゃうわけで。
もう思わずとっさに木切れをひろい上げてワンコにつきだしてみました。するとワンコはたちまちおどりあがって、きゃんきゃんはしゃぎながら木切れにとびかかります。どうもじゃれたいみたいなので、そこでアリスもふみつぶされないよう、でっかいアザミのかげにひらりとよけました。
反対側から出ると、すぐさまワンコが木切れめがけてまたかけこんできたのですが、でもつかまえようとあせるあまりすってんころりん。これはもう、考えてみれば馬車馬とふざけ合ってるみたいなものです。アリスも足でふみつけられそうなときには、そのたびごと、はっとしてかけ足でアザミに回りこみます。だからワンコにしても小きざみに木切れへしかけるようになって、じわりじわり前につめるかと思いきや大きく後ろへさがったり。しじゅうぐるるるとほえっぱなしだったのですが、はてにはとうとうはなれたところでへたりこんで、はあはあと口から舌を出して大きなお目々も半びらきになりました。
これにアリスも、にげるのは今しかないとふんで、すぐさま動いてかけ足。やがてワンコのほえる声も遠くかすかになっていって、そのうちこっちもへとへとで息切れです。
「まあでも、あんなワンコ、かわいらしいものね!」とアリスはひと息つこうとキンポウゲにもたれかかり、花の葉っぱであおぎながら言いました。「芸をしこんでみるのも面白そう。その――元の背たけになったらの話だけど! もう! もう少しで元通りになるのをわすれるところよ! う~んと、どうやればうまくいくのかしら。たぶん何かしら食べるか飲むかすればいいんだろうけど、いったいぜんたい、何を?」
その通り、いったいぜんたい、何を? アリスがあたりをながめまわしても、草花あれど、都合よく食べられそうなものはその場に何も見当たりません。
ところがそばに大きなキノコがありました。背たけと同じくらいで、見上げたり、両わき、後ろに回ってみたりするうち、かさの上に何があるのか、目を向けてたしかめたいという気持ちになってきます。
つまさき立ちで背のびして、キノコのへりからのぞきこむと、目にとびこんできたのが、こっちを向いた大きな青虫です。すわりこんでうでを組み、ひそやかに水ぎせるをふかして、こちらにも何にも気にとめるそぶりさえありません。
しばらくだまったまま目を合わせていたのですが、とうとう青虫が口から水ぎせるを外して、けだるそうに声をかけてきました。
「だれじゃ、おぬし。」と青虫。こんなきっかけでは話も始めづらくって、アリスもどこかもじもじしながら答えました。「あたくし――よくわかりませんの、今のところ――少なくとも今朝起きたときにはだれだったかわかってたのに、そのあとあたくし、どうも何度か変わってしまったみたいで。」
「どういうことかの?」と青虫。「はっきりしてくれ!」
「だからはっきりしませんの、あいにく!」とアリス。「あたくしがあたくしじゃないの、わかって?」
「わからん。」と青虫。
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