初級翻訳・アリスはふしぎの国で 第13話

アリスはふしぎの国で

」とやってね、むすっとしながらヤマネはこう言う、「おぎょうぎよくできないのならお話のオチは勝手にすればいいです。」
「おねがい、続けて!」ととても素直になるアリス。「もう口をはさんだりしないから。そんなのひとつくらいはあるかも。」
「ひとつも、ですと!」とヤマネはぷんすか。だけどしぶしぶ続ける。「なのでその3人の姉妹は――かきわける練習をしていました、ほら……」
「かきわけるって何を?」とアリスはさっきの約束もまったくどこへやら。
「シロップです。」と今度のヤマネはちっとも考えずにお答え。
「きれいなカップがほしい。」とぼうし屋が口をはさむ。「さあ、みなのもの、席をひとつずらそう。」

言いながら席をずらして、それにヤマネも続いてね、ヤヨイウサギはヤマネのいたところに、そしてアリスもしぶしぶヤヨイウサギのすわっていた席へ。席がえで得したのはぼうし屋ただひとり。そしてアリスは前よりかなり悪くなったのだけど、それというのもヤヨイウサギがさっきミルク入れをお皿にひっくり返していたから。アリスはもうヤマネをおこらせたくなかったので、おそるおそる切り出した。「でもわからなくてよ。」「井戸でどうシロップをかきわけるの?」
「プールでなら水をかきわける」とぼうし屋。
「シロップの井戸ならシロップをかきわける――当たり前だ、バカ者」
「でも底はせまくってよ」とヤマネにたずねるアリス。終わりの言葉は聞かんぷり。
「もちろんせまい」とヤマネ。「だからそこそこに」

かわいそうに、このお答えのせいでアリスの頭はハテナだらけ。なので食い下がらずに、しばらくそのままヤマネに話を続けさせてね。

「3人はかきわけるおけいこ中」と続けるヤマネはあくびをして目をこすっていてね、どんどんねむくなっていたんだ。「いろんなものをかきわけます――『お』で始まるあらゆるものをかきわけるのです……」
「どうして『お』なの?」とアリス。
「いけねえのか?」とヤヨイウサギ。
アリスはだんまり。

もうこのときヤマネは目をとじてしまっていて、うとうとしていたのに、ぼうし屋につねられ、ひゃっと小さく声を上げてまた目をぱちくり。そして話の続き。

「……『お』で始まるものです。たとえば、おとりとか、お月さまとか、思い出とか、おっちょことか――ほら言うでしょ、『おっちょこちょい』って――見たことありますか、『おっちょこ』をちょいとかきわけた絵というのを」
「そんないきなり聞かれても」とアリスの頭はハテナだらけ。「ないと……」
「ならば口を出すでない」とぼうし屋。

この無礼な物言いにアリスもがまんの限界、ほとほとうんざりして席を立ち、歩き出してね。ヤマネはたちまちねむりこんでしまって、ほかのふたりもその子が去ろうともちっとも気にせず。その子はちらちらとふり返って、よび止めてくれるかなとどこかで思ってたんだけどね、最後に目にうつったのはふたりがヤマネをティーポットにおしこもうとしているところ。

「もうこんりんざいこんなとこには来なくってよ!」とアリスは森をかきわけつき進んでいってね、「生まれてこのかたこんなバカバカしいお茶会はじめて!」

こんなことを言っているうちに、ふと目についた一本の木。そこに何やらなかへと続くドアがついていて。
「まあ、へんてこりん!」とアリスは思ってね、「でも今日はみんなへんてこりん。だからいきなり入ってもたぶんまあよろしくてよ」というわけで、なかへお立ち入り。

すると気づけばまたもや大広間、そばには小さなガラスのテーブル。
「さあて今度こそうまくやってみせてよ」とひとりごと。まずはちっちゃな金の鍵を手にとって、庭へ続くドアを開ける。それから手をつけるのがキノコ(まだかけらをポケットに残してあったからね)、かじっていって最後は30センチくらいの背たけに。

そのあと短いろうかをぬけていって、そしてお次は――気づいたらとうとうきらびやかなお庭だ、あたりにはきらめく花園、すずしげな泉だ。

8 クイーンさまのクローケー場

大きなバラの木が1本、庭を入ったところに立っていて、さいてるバラはどれも白なのに、その場にいた3まいの庭係が、いそいそとそいつを赤にぬっていてね。
これがアリスにはすごくへんてこなことに思えたものだから、そばでじっくり見ようと足を向けると、近づくなり聞こえてくる、うちひとりの言葉。「おい気ぃつけろよ、5! そんなふうにこっちへ絵の具をはねかけんな、こら!」
「しょうがねえだろ」と5はむっとした声を返す、「7がこっちのひじを小づきやがった」
それに7も見上げて口をはさむ、「やんのか、5! いつもいつもひとのせいにしやがって!」
「てめえ言ってるばあいかよ!」と5。「聞いたぜつい昨日、クインのやつがてめえは打ち首ものだっつってな!」
「ワケは?」と口火を切ったやつ。
「てめえの知ったこっちゃねえだろ、2!」と7。
「いいや、知ったこっちゃあるんだな!」と5、「だから教えてやんよ――ワケってのはタマネギとまちがえてチューリップの根っこを料理係に持ってったってな!」

7はハケを放り出してまくし立てる。「はあ! そんなおかどちげえ――」とここでたまたま目にうつるアリス。じーっとのぞきこんでいたから向こうはふいに言葉をつまらせてね。ほかの2まいもふり返り、みんなしてふかぶかおじぎ。

「教えていただけて?」とアリスはちょっぴりおずおず、「どうしてバラに色なんかつけてらして?」
5と7はおしだまって2をにらむだけ。
そこで2が小声で、「その何だ、実はさ、ほら、じょうちゃん、本当はこいつ赤いバラの木のはずだったんだけど、手ちがいでオレら白いのを植えちまってさ、クインに見つかるはめにでもあったら、もうオレらみんなそろって首切られるってワケよ」「だから、じょうちゃん、クイーンさまが来ないうちに、さっさと済ませてしまおう――」と、ちょうどその時、庭の向こうをそわそわと見つめていた5が声を上げました。「クイーンさまだ! クイーンさまだ!」庭係の3人はあわてて、ぺたんと地面にうつぶせに倒れ込みました。
 大勢の足音が聞こえてきたのでアリスがふり返ると、当のクイーンさまにじいっと目を注ぎました。
 まずやってきたのは、こんぼうを構えた10人の強者たち。姿かたちは庭係の3人と同じで、長四角のぺらぺらした体、四隅のところに手足がついています。
 その次は10人の側仕えたち。ダイヤの模様で飾られていて、強者たちと同じように2列になって歩いています。
 そのあとに続くのは王子さまと王女さまで、10人いらっしゃいました。このかわいらしい子たちは2人1組で手をつないで、うきうきと軽やかに進んできて、そろってハートの柄でおめかししています。
 次に来るのがお歴々。キングとクイーンがほとんどですが、その中にアリスはあの白ウサギを見つけました。でもウサギはせかせかとお喋りしながら、言われたことには愛想笑いをするばかりで、アリスに気づかずに前を通り過ぎていきます。
 そのあと続くのがハートのジャック。おごそかな、ふわふわでテカテカした真っ赤な台の上にはキングの冠が乗っています。そして、この大行列の最後を飾るのが、ハートのキングとクイーンです。

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