私の考えでは、本当はこの広い宇宙のどこかに、地球の人間と同じか、あるいはもっとすばらしい頭脳を持った生きものがすんでいて、そういう者たちから地球が攻めこまれる日がいつかやって来るかもしれない――だからこそ警戒して、しっかり科学を勉強してほしい!――ということをみんなに理解し、心に刻んでほしかったのです。
そのためにお話の都合上、みんなもよく知っている火星に、生きものがすんでいることにしたというわけです。
プラネタリウムに行ったことがある人や、天文学の本を読んだことがある人、そうでなくても、夜遅くに何万もの美しい星がきらめく空を見上げたことのある人なら、この大宇宙がどれほど果てしなく広いかを知っているでしょう。
あの星の1つ1つは、ちょうど私たちの太陽と同じような星(恒星)であり、そのまわりには地球や火星のような惑星がいくつもまわっているはずです。
その数は何万、いや何億もあることでしょう。
そんな数え切れないほどの星の中には、ちょうど私たちの地球と同じように、気候がよくて生きものがすんでいる星がいくつも混ざっているに違いありません。
私たち人類は、はじめて先祖が生まれてから、やっと二十五万年しかたっていませんが、この大宇宙には、もっともっと大昔からすんでいる生きものだだっていることでしょう。もし、彼らの文化の力が、私たち人類よりもずっと先まで発達していたとしたら、彼らはいつ地球に向けて、手を伸ばしてくるかわかりません。
昔の嘉永(かえい)のころ、浦賀(うらが)へアメリカの黒船がやって来たとき、当時の日本人がものすごく驚いたように、大宇宙の黒船だって、いつ突然地球へ姿をあらわすかわからない状態なのです。
そのときに受ける驚きを、ちょっと想像してみてください。
しかも、そんなときが来ても、私たちは絶対に負けてはならないのです。
人間の知恵をみがき、科学の力をこれ以上ないほどにすぐれたものにするために、人類のなかでも特にすぐれた素質を持つ私たち日本民族は、ほかのどの民族よりも進んで勉強し、地球全体の中から選ばれた先頭に立つ民族として、宇宙からやって来る外敵に向かって、いさましく立ち上がらねばならないのです。
私たちの科学研究の目標は、これほど遠い未来にまで置いてこそ、本当なのだと私は思います。
科学戦の夜明けに鳴り響く起床ラッパ
つまり、私たちは世界戦争に勝たなければならないだけでなく、さらに広い宇宙からやって来る数しれない未知の敵に対しても、絶対に勝たなければならないのです。
私たちは、どれだけ勉強しても、勉強しすぎということは決してありません。
そのなかでも、新しい動力の研究、飛行機やロケットの研究、宇宙を探るためのもとになる天文学や電波工学の研究、人間の体をきたえ直す研究、宇宙の生きものと戦うための兵器の研究などは、とくに大切で重要な研究テーマなのだと思います。
こう考えてくると、私たちは、ほんの少しの間もぼんやりしていてはいけないということがよく分かります。
勝つか負けるか、生きるか死ぬかのものすごい大戦争は、すでに始まっているのです。
そのはるか遠くにある、とても重大な目標のことを思うと、私たちの胸には、新しい勇気が鐘のように鳴りひびきます。
今日私たちが味わっている苦しさや、モノが足りない不便さなどは、取るに足りない小さなことです。
私たち日本民族は、地球人類の先頭に立って導き、やがては地球全体をまとめ上げ、さらに大宇宙をも自分の手で動かしていくという大きな希望と目標に向かって、うんと勉強し、心も体も強くきたえ上げなければなりません。
海野十三
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