むかしむかし、あるところに、ふたりの王子様がいました。
ふたりは、わくわくするような冒険の旅に出かけることにしました。
ところが、ふたりの王子は旅先でやりたい放題のわがままな暮らしを始めてしまい、いつまでたってもお家へ帰ろうとはしませんでした。
そこで、みんなから「おばかさん」と呼ばれている、一番下のお父と(弟)の王子が、お兄さんたちを連れ戻すために探しに出かけました。
おばかさんは長い旅の末、ようやくお兄さんたちを見つけることができました。
ところが、お兄さんたちは、お父とを見てバカにしながら言いました。
「お前みたいなマヌケが、この広い世界で暮らしていくなんて無理に決まってるだろ。俺たちは、お前よりもずっと頭が良いけれど、その俺たちでさえ、うまくやっていくことができないんだからな!」
それから、三人の王子はそろって一緒に旅を続けることにしました。
しばらく進むと、大きなアリの巣(ありの塔)がある場所にやってきました。
お兄さんたちはそれを見て言いました。
「おい、このアリの巣をめちゃくちゃに掘り返してやろうぜ! そうすれば、ちっぽけなアリたちが大慌てで逃げ回ったり、卵を必死に運び出したりするぞ。それを見て面白がってやろう!」
すると、おばかさんは言いました。
「生きものは、そっとしておいてあげてよ。お兄さんたちがアリをいじめたりするなんて、僕は見ていられないよ」
お兄さんたちはあきらめて、三人はまた先へと歩いていきました。
やがて、キラキラ光る美しい湖にたどり着きました。
見ると、湖には、それはそれはたくさんのカモたちが、気持ちよさそうにスイスイと泳いでいます。
「よし、あいつらを何羽かつかまえて、こんがり焼いて焼き鳥にして食べちゃおうぜ!」とお兄さんたちがまた言い出しました。
けれども、おばかさんは絶対に許しません。
「生きものは、そっとしておいてあげてよ。お兄さんたちがカモを殺してしまうなんて、僕は見ていられないよ」と言いました。
とうとう三人は、大きなみつばちの巣がある場所にやってきました。
見ると、巣の中にはあまーいはちみつがたっぷりと詰まっていて、木の幹をつたってトロトロと流れ落ちていました。
「そうだ! あの木の下で火をたいて煙を出そうぜ。そうすれば、ハチどもは息が詰まって死んじゃうから、はちみつを全部横取りできるぞ!」とお兄さんたちは、しきりに言いました。
けれども、おばかさんはまたしてもお兄さんたちを止めて、こう言いました。
「生きものは、そっとしておいてあげてよ。お兄さんたちがハチを焼き殺したりするなんて、僕は見ていられないよ」
やがて、三人の兄弟は、見たこともない不思議なお城へとたどり着きました。
ところが不気味なことに、このお城の馬小屋には、カチコチに固まった石の馬しかいません。
それに、どこを探しても、人間の姿がまったく見当たらないのです。
三人は、静まりかえった広い部屋をいくつも通り抜けて、一番奥にある大きな扉の前にやってきました。
その扉には、頑丈な鍵が三つもかかっていました。
扉の真ん中には小さなのぞき窓(よろい戸)があって、そこから部屋の中をのぞき見ることができました。
中をのぞいてみると、全身が灰色の不思議な小人がひとり、ぽつんとテーブルの前に座っていました。
三人は、小人に声をかけてみました。
一度、二度と呼びかけます。
でも、小人には聞こえないようです。
そこで、もう一度、大きな声で呼んでみました。
するとようやく、小人はゆっくりと立ち上がり、鍵を開けて外へ出てきました。
しかし、小人は一言もしゃべりません。
ただ黙ったまま、三人を美味しそうなごちそうがたくさん並んだテーブルへと案内してくれました。
三人はお腹がペコペコだったので、夢中で食べたり飲んだりしました。
お腹がいっぱいになると、小人は今度は、三人をごちそうの部屋から連れ出して、ひとりずつ別々の寝室へと案内してくれました。
次の日の朝、灰色の小人が、一番上のお兄さん王子のところへやってきました。
小人は手招きをして、王子をある石の板が置いてある場所へと連れていきました。
その石の板には、三つの難しい問題が刻まれていました。
もしこの問題をうまく解くことができれば、お城にかけられた恐ろしい魔法が解けるというのです。
さて、その最初の一番目の問題とは、このようなものでした。
「森の中のコケの下に、お姫様の真珠が千粒隠されている。それをすべて探し出しなさい。ただし、お日様が沈む時間になっても、たった一粒でも足りなければ、探した者はカチコチの石になってしまう」
一番上のお兄さん王子は、さっそく森へ出かけていき、一日中一生懸命に真珠を探しました。
けれども、夕方になってお日様が沈むまでに、見つけられたのは、たったの百粒だけでした。
そのため、石の板に書いてあったルール通りに、お兄さん王子はカチコチの石の体にされてしまいました。
次の日には、二番目のお兄さん王子が、この冒険に挑戦してみました。
けれども、このお兄さんも、一番上のお兄さんより少しマシなだけで、やっぱりうまくいきませんでした。
丸一日かけて必死に探したものの、見つかった真珠は、たったの二百粒だけだったのです。
こうして、二番目のお兄さんも、冷たい石にされてしまいました。
そして、いよいよ、最後におばかさんの番がやってきました。おばかさんは、コケの中を一生懸命探しました。
けれども、真珠を見つけるのはとてもとても大変な仕事でした。
なかなか、思うようにはいきません。
とうとうおばかさんは、石に腰かけてメソメソと泣き出してしまいました。
こうして泣きながら座っていると、なんと、以前におばかさんが命を助けてあげたアリの王様が、アリを五千匹も連れてやってきました。
この小さなアリたちは、あっという間にみんなで真珠を見つけ出し、その場へ山のように積み上げてくれました。
これで、おばかさんは一番目の問題を解くことができました。
その次の二番目の問題というのは、
「王様のお姫様の寝室の鍵を、海の中から拾ってきなさい。」
ということでした。
おばかさんが海へ行くと、以前に命を助けてあげたカモたちが、何羽も何羽もスイスイと泳いできました。
カモたちは水の中へ潜っていき、暗い海の底から鍵を取ってきてくれました。
最後に残った問題こそが、一番難しい問題でした。
「眠っている三人のお姫様の中から、一番下の一番かわいらしいお姫様を探し出しなさい。」
というものでした。
ところが、このお姫様たちは、何から何までそっくりなのです。
ただ、違っているところといえば、寝る前にそれぞれが別々の甘いものを食べた、ということだけでした。
一番上のお姫様は、お砂糖をひとかたまり食べました。
真ん中のお姫様は、シロップを少しばかり食べました。
そして一番下のお姫様は、はちみつをスプーンに一杯食べたのです。
さて、そこへ、以前焼き殺されそうになっていたところをおばかさんに助けてもらった、みつばちの女王様がブーンと飛んできました。
みつばちの女王様は、三人のお姫様たちの口元を、順番になめてみました。
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