すると今度は、林の中の小さな水たまりの葦(あし)のなかにいたよしきりが、急いで言いました。
「おやおやおや、これはいったい大きな皮の袋だろうか、それともやっぱり人間だろうか、驚いたもんだねえ、驚いたもんだねえ。びっくりびっくり。くりくりくりくりくり。」
さあ大三はいよいよ怒って、
「何だと畜生。薬さえ取ってしまったらこの林くらい、くるくるんに焼きっぷくって見せるぞ。畜生。」
それから百人の人たちを連れて大三は森の空き地に来ました。
「いいか、さあ。探せ。しっかり探せ。」大三はまん中に立って言いました。
みんなガサガサガサガサ探しましたが、どうしてもそんなものはありません。
空では雲が白いうなぎのように光ったり、白い豚のように這ったりしています。
大三は早くその薬をのんでからだがピンとなることばかり一生懸命考えながら、汗をポタポタ滴らせ、息をはあはあついて待っていました。
みんなはガサガサガサガサやりますけれども、どうもなかなか見つかりません。
そのうちにもうお日さまは空のまん中までおいでになって、林はツーンツーンと鳴りだしあした。
あぁなるほど、脚気の木がビタミンをほしいよほしいよと言ってるわいと、大三は思いました。
それでもまだ透き通るばらの実は見つかりません。
かけすが、
「やあ象さん、もうお昼です。お弁当おあがりなさい。落しますよ。そら。」
と言いながら、栗の木の皮を一切れポタッと落としていきました。
「えい畜生。あとで鉄砲を持ってきてぶっ放すぞ。」大三は歯ぎしりして悔しがりました。
空では白いうなぎのような雲も、みんな飛んでいき、大三は汗をたらしました。
まだ見つかりません。
よしきりが林の向こうの沼の方に逃げながら、
「ふいごさん。ふいごさん。まだですか。まだですか。まだまだまだまぁだ。」
と言って通りました。
もう夕方になりました。
そこでみんなはもうとてもだめだと思って探すのをやめてしまいました。
大三もしばらくは困って立っていましたが、やがてポンと手を叩いて言いました。
「ようし。おれも大三だ。その透き通ったばらの実を、おれがこしらえて見せよう。おい、みんなばらの実を十貫目ばかり取ってくれ。」
そこで大三は、その十貫目のばらの実を持って、おうちへ帰って参りました。
それからにせ金製造場へ自分で降りていって、ばらの実をるつぼに入れました。
それから透き通らせるために、ガラスのかけらと水銀と塩酸を入れて、ブウブウとふいごにかけ、まっ赤に灼きました。
そしたらどうです。
るつぼの中に透き通ったものができていました。
大三はよろこんでそれを呑みました。
するとアプと言って死んでしまいました。それがちょうど、その夜の八時半ごろのことでした。るつぼの中にできあがった透き通ったものの正体は、なんと「しょうこう」という、この世で一番おそろしい猛毒だったのです。
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