初級翻訳・アラビヤンナイト 第3話

アラビヤンナイト

アラジンは、すぐお母さんの手からランプを引ったくりました。
そしてふるえながら、自分の手に持っていました。
「ほんの少しでもいいから、たべるものを持っておいで。」
アラジンは、やっぱりふるえながら、こう言いました。
おそろしいおばけが、やっぱり天井からにらみつけていたものですから。
が、その時、ランプの家来は、しゅっとけむりを立てて消えていきました。
けれども、またすぐに、金のお皿の上に上等のごちそうをのせて、あらわれて来ました。
この時、アラジンのお母さんは、やっと気がつきました。
けれども、このごちそうをたべるのを、大へんこわがりました。
そして、すぐにランプを売ってくれと、アラジンにたのみました。あのおばけが、きっと何か悪いことをするにちがいないと考えたものですから。
けれどもアラジンは、お母さんのこわがっているのを笑いました。
そして、このまほうのランプと、ふしぎな指輪の使い方がわかったから、これからは、この二つをうまく使って、くらしむきのたすけにしようと思う、と言いました。
二人は金のお皿を売って、ほしいと思っていたお金を手に入れました。
そして、それをみんな使ってしまった時、アラジンはランプのおばけに、もっと持って来いと言いつけました。
こうして、親子は何年も何年も楽しくくらしていました。

さて、アラジンの住んでいる町にあるお城の王さまのお姫さまは、大へん美しい方だということでした。
アラジンも、このうわさを聞いていましたので、どうにかしてお姫さまを一度おがみたいと思っていました。
それで、いろいろお姫さまをおがむ方法を考えてみましたけれど、どれもこれもみんなだめらしく思われるのでした。
なぜかというと、お姫さまは、いつも外へお出ましになる時は、きまったように、深々とベールをかぶっていらっしゃったからであります。
けれども、とうとう、ある日、アラジンは王さまの御殿の中へ入ることができました。
そして、お姫さまがゆどのへおいでになるところを、戸のすきまからのぞいてみました。
それからアラジンは、お姫さまの美しいお顔が忘れられませんでした。
そしてお姫さまがすきですきでたまらなくなりました。
お姫さまは夏の夜のあけ方のように美しい方でした。

アラジンは家へ帰って来て、お母さんに、
「お母さん、私はとうとうお姫さまを見て来ましたよ。
お母さん、私はお姫さまをおよめさんにしたくなりました。
お母さん、すぐに王さまのお城へ行って、お姫さまをくださるようにお願いしてください。」
と言って、せがみました。

お母さんは、息子のとほうもない望みを聞いて笑いました。
そしてまた、アラジンが気ちがいになったのではないかと思って、心配もしました。
しかし、アラジンはお母さんが「うん」と言うまではせがみ通しました。
それで、お母さんは、あくる日、王さまへのおみやげに、あのまほうの果物をナフキンにつつんで、ふしょうぶしょうにお城へ出かけて行きました。

お城には、たくさんの人たちがつめかけて、うったえごとを申し出ておりました。
お母さんは何だかいじけてしまって、進み出て自分のお願いを申し上げることができませんでした。
だれもまた、お母さんに気がつきませんでした。
そうして、毎日々々、お城へ出かけて行って、やっと一週間めに王さまのお目にとまりました。

王さまは大臣に、
「あの女は何者だな。毎日々々、白いつつみを持って、来てるようだが。」
と、おたずねになりました。
それで大臣は、お母さんに王さまの前へ進むように申しました。
お母さんは、少し進んで、地面の上へひれふしてしまいました。
お母さんは、あんまりおそれ多いので、何も言うことができませんでした。
けれども、王さまが大そうおやさしそうなので、やっと勇気を出して、アラジンにお姫さまをいただきたいとお願いしました。
それから、
「これはアラジンが王さまへのささげ物でございます。」
と言って、まほうの果物をつつみから出して、さし上げました。

あたりにいた人々は、こんなりっぱな果物を生れて一度も見たことがなかったものですから、びっくりして声を立てました。
果物はいろいろさまざまに光りかがやいて、見ている人たちがまぶしがるほどでした。
王さまもおおどろきになりました。
そして大臣を別のへやへお呼びになって、
「あんなすばらしいささげ物をすることができる男なら、姫をやってもいいと思うが、どうだろうな。」
と、ご相談なさいました。

ところが大臣は、ずっと前から、お姫さまを自分の息子のおよめさんにしたいと思っていたものですから、
「そんなにいそいで約束をあそばないで、もう三月ほど、待たせなさいまし。」
と、申し上げました。
王さまも、なるほどそうだとお思いになりました。
それで、アラジンのお母さんに、もう三月待ったら、姫をやろう、とおっしゃいました。

アラジンは、お姫さまがいただけると聞いて、自分くらい仕合せ者はないと思いました。
それからは、一日々々が矢のように早くすぎてゆきました。
ところが、それから二月もすぎたある夕方、町じゅうが大そうにぎやかなことがありました。
アラジンは何事かと思って人にたずねました。
するとその人は、今晩、お姫さまが、大臣の息子のところへおよめにいらっしゃるからだ、と教えてくれました。
アラジンはまっ赤になっておこりました。
そしてすぐ家へ帰って、まほうのランプをとり出してこすりました。
すると、じきにあのおばけが出て来て、何をいたしましょうかと聞きました。「王さまのお城へ行って、お姫さまと、大臣の息子をすぐつれて来い。」と、言いつけました。
たちまちおばけは御殿へ行って、二人をつれて帰って来ました。
そしてこんどは、
「大臣の息子をこの家からつれ出して、朝まで外で待たしておけ。」と、命令しました。
お姫さまはこわがって、ふるえていました。
けれども、アラジンは、けっしてこわがらないでください、私こそはあなたのほんとうのおむこさんなのでございます、と申し上げました。
あくる朝早く、アラジンの言いつけた通りに、おばけは、大臣の息子をつれて家の中へ入って来ました。
そして、お姫さまと一しょにお城へつれて帰りました。
それからまもなく王さまが、
「お早う。」と言って、お姫さまのおへやへ入っていらっしゃいますと、お姫さまは涙をぽろぽろこぼして泣い ていらっしゃいました。
そして大臣の息子は、ぶるぶるふるえていました。
「どうしたのかね。」と、王さまがおたずねになりました。
けれども、お姫さまは泣いていて、何にもおっしゃいませんでした。
その晩もまた、同じようにアラジンはおばけに言いつけて、二人をつれて来させました。
そしてもう一度、大臣の息子を家の外に立たせておきました。
次の日もやはり、お姫さまが泣い ていらっしゃるのを見て、王さまは大そうおおこりになりました。
そして、お姫さまが何を聞いても、やっぱりだまっていらっしゃるので、なおなおおこっておしまいになりました。
「泣くのをおやめ、そして早くわけをお話し。話さないと殺してしまうよ。」と、おしかりになりました。

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