ネコちゃんぬくぬく――まったくだこと
さんぽの子犬――「あらネコちゃんさん
お元気、おくさん? おくさん、お元気?」
「どうも子犬さん、おたがいさまよ!」
古い歌より
むかしむかし、あるところにリービというネコちゃんがおりました。
ある日、ダッチェスという子犬をお茶におまねきすることにしました。
リービのお手紙はこうです。
「ごつごうのよいときにおこしください。
とってもとってもすてきなものを手に入れまして。
なので白地でもも色のふちどりがついたパイざらで、包み焼きにするつもりです。
きっとはじめてあじわうおいしさですよ!ひとりでぺろりいたいらげることまちがいなし。
わたしはマフィンでかまいません。」と、リービはすらすら書き上げました。
このお手紙を読んだダッチェスは、おへんじをしたためます――
「ではよろこんで4時15分にうかがいます。
ところでふしぎなこともあるものですね。
わたくしもこちらで夕食をごちそうしようとおまねきにうかがおうとしていたところで。
たいそうすてきなものがございまして。
それではお時間どおりにまいります。」と書いてから、ダッチェスは最後にこうつけくわえます。
「ただ、ネズミのパイはちょっと……」
とはいえ、あとでぶしつけだなと思いなおして、「た」の文字だけのこしてあとは消し、「たのしみにしております」に書きかえました。
そして、お手紙をゆうびんやさんにわたします。
それでもリービのパイのことがたいへん気がかりなので、なんどもくりかえしリービのお手紙を読みかえしました。
「きっとネズミパイですわ、どういたしましょう!」とダッチェスはひとりごとをつぶやきます――
「むりですわ、ネズミパイを口にするなんてむりですの。
でもお茶会ですもの、口にしなきゃしつれいですわ。
こっちでは子牛とブタもものパイを作るところでしたのに。
白地でもも色のふちどりのパイざら!そうですわ、うちにもございます、リービのおさらとおんなじものが。
だってどちらも、ぐいぐいタビサのところで買ったんですもの。」
ダッチェスはたべものおきばに入りこみ、たなからパイをおろしてまじまじとながめました。
「あとはオーヴンに入れるだけ。
うっとりするほどのパイきじだこと。
きじがかたくずれしないよう、ちっちゃなかなもののやきがたをなかに入れてございますから、まんなかにフォークであなをあけてゆげがにげるようにしてありますの――んもう、できればこっちを口にしとうございますわ、ネズミパイじゃなくって!」
なやみになやむダッチェスは、またリービのおお手紙をよみます――
「白地にでもも色のふちどりのパイざら――ひとりでぺろり。
〈ひとりで〉ってわたくしのこと――となると、ご自分はお召し上がりにならないってこと? 白地でもも色のふちどりのパイざら! リービはマフィンの買い出しにお行きになるはず……あっ、思いつきましたわ! そうですの、リービがおるすのときにかけ足でリービのオーヴンへこのパイを入れればよろしいのよ!」
ダッチェスは自分がすごく冴えているとおおはしゃぎしました!
そのころリービは、ダッチェスのおへんじをうけとり、その子犬さんがおこしになると知るやいなや――パイをオーヴンにひょいと入れます。
ふたつたてにつまれたオーヴンには、ほかにもつまみやとってがあれこれありましたが、ただのかざりで、あけるためのものではありません。
リービがパイを入れたのは下のオーヴンで、とびらがとてもかたいものでした。
「上のオーヴンは火がつよすぎるのよね」と、リービはひとりごとを言います。
「ネズミのひき肉とベーコンのパイ、とろけるようにやわらかく肉じるたっぷり。
こぼねもみいんなとってあるわ。
だってこの前のお茶会でダッチェス、魚のこぼねでのどをつまらせそうになったんだもの。
食べるのがちょっと早いのよ――まあ一口も大きめだし。
でもそだちのいいおしとやかな子犬よね。
いとこのぐいぐいタビサにくらべれば、どこまでも上のおきゃくさマだわね。」
リービは石炭をつんで、だんろのそこをきれいにしました。
それからバケツをもって外の井戸まで出て、やかんに入れる水をくみます。
つぎにとりくむのは、そのおへやのおととのえでした。
というのも、この台所はお掃除の真っ最中でもあったからです。玄関口でマットを一枚一枚パタパタとはたいたあと、きっちりと敷きなおします。暖炉の前に敷くのはウサギの毛皮です。
暖炉の上にある時計や置物のほこりを払い、テーブルや椅子もピカピカに磨き上げます。
続いて、洗いたての真っ白なテーブルクロスを広げ、とっておきの陶磁器のティーセットの支度をします。それは暖炉のそばの吊り戸棚から取り出すのです。
ティーカップには白地にピンクのバラがあしらってあり、取り皿は白地に青い模様が描かれています。
テーブルをととのえたリービは、水差しと取り皿を手に、野原をくだって牧場へ、ミルクとバターをとってくるのです。
もどってきたときに下のオーヴンをのぞくと、パイの焼き加減もいい感じです。
肩掛けとよそ行きの帽子を身につけ、リービはかごを手にまたおでかけです。村のお店で、お茶っ葉ひと包みと角砂糖を五百グラム、あとマーマレードをひと瓶買うのです。
ちょうど同じころ、ダッチェスもおうちを出ました。
ふたりのうちは村の端と端にあります。
リービが道すがら出会ったダッチェスは、布をかぶせたかごを下げていました。
おたがいに会釈だけして、言葉は交わしません。
あとでお茶会が待っていますからね。
角をまがって見えなくなると、ダッチェスはすぐさま――ひたすらに駆け足! リービのおうちへいちもくさんです!
店に入ったリービは必要なものを買って、いとこのぐいぐいタビサと楽しい世間話をしてから外へ出ます。
いとこのタビサは、おしゃべりのあとに本音がポロリと出ます――
「子犬だなんて! まるでソーリー村にはネコがいないみたいに! 午後のお茶にパイですって? 結構ですこと!」と、ぐいぐいタビサは言います。
リービはパン焼きティモシーのところに寄ってマフィンを買いました。
そうしておうちに帰ります。
すると、なにやら裏口からガサゴソという物音がします。
ちょうどおもてから家に入ったときでした。
「パイにしては変な音ね。スプーンはまだ引き出しにしまったままだし、だとしたら……」とつぶやくリービでしたが、そこにはだれもおりません。
手こずりながらも下のオーヴンの扉を開けて、パイの向きをととのえます。
焼きネズミのいい香りがしてきました!
そのときにはもう、ダッチェスが裏口からしのび出たあとでした。
「けったいなことですわ、入れかわるはずのリービのパイがオーヴンにございませんの! どこにも見あたらないなんて。家じゅうをお探ししたのに。こっちのパイはほどよく温まった上のオーヴンにお入れしましたわ。ほかの取っ手はまわりませんし、きっとみんな見た目だけのものなのね」とダッチェスは言います。
「それにしてもネズミパイをお片付けしたかったのに、どこへやったのかさっぱり。
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