初級翻訳・兎さんの本屋とリスの先生 第1話

兎さんの本屋とリスの先生

あるところに、とてもそそっかしい本屋さんがいました。
それは、一匹の兎さんです。

ある日のこと、お店に新しい本が届きました。そこで兎さんは、立派なフロックコートを着込み、鼻眼鏡をかけ、ステッキを手に取ると、その本を小脇にかかえて(人間から見れば少しおかしいかもしれませんが、兎の本屋さんというのは、こういうものなのです)、さっそく売りに出かけました。

森の入り口まで来ると、一匹のリスさんと出会いました。
とても賢そうなひげを生やしたリスさんだったので、きっと本を買ってくれるだろうと思い、兎さんは声をかけました。
「リスさん、本を買ってください。私は立派な本屋さんですよ」

リスさんは、兎さんがフロックコートを着て、鼻眼鏡をかけ、ステッキまで持っているのを見て、「なるほど、立派な本屋さんだ」と思い、こう言いました。
「僕は医科大学の先生をしているんだ。その本を買おう。今ちょうど手持ちがないから、家までついてきてくれないか」

兎さんは大喜びで、リスさんのあとについて行きました。
お家までの道のりはとても遠く、たどり着いたときには、もう真っ暗な夜になっていました。
玄関の前でリスさんは一度家の中へ入り、お金を持ってきて、兎さんに代金を支払いました。

ところが、ちょうどその時、時計が六時を打ちました。リスさんの村では、夕方の六時きっかりに街灯がつく決まりなのです。パッと明かりがつきました。
リスさんは買いたてのその本を、大きな英語やドイツ語、ロシア語の辞書が積み上げられた机の上で開きました。
本の表紙には、「尋常小学一年生読本」と書いてありました。

リスさんは「僕は医科大学の先生だというのに!」と言って、ひどく怒りました。そして、兎さんを追いかけて行っては、本を突き返したのです。
兎さんはとても恥ずかしくなって、こう言いました。
「あなたには、お子さんがいらっしゃいますか?」
リスさんは答えました。
「小学一年の子供が一人いるよ」
「それなら、この本をお子さんにあげてください。お金はいりません」
そう言い残すと、兎さんはあわてて逃げ出しました。

リスさんは、そんな兎さんのことがひどく気の毒になり、次の日にお金を届けに行きました。
すると兎さんは、ベッドの中で「うんうん」とうなっていました。なぜかというと、昨夜あまりに急いで逃げたものだから、小さな川に落ちてしまい、指の先を怪我していたのです。

リスさんはお医者さんでしたから、兎さんの指にヨードチンキを塗って手当てをしてあげました。
それからというもの、兎さんとリスさんはとても仲良くなり、新しい本が入荷するたびに、兎さんはいつも十銭ほど安くして、本をゆずってあげるようになったということです。

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