初級翻訳・幸福な一家 第2話

アンデルセン ハンス・クリスチャン

あなたがたが、もうそのほかにいい話をご存じないのなら、白ブヨさんにお願いすることにしましょう。あの人たちは、降っても照ってもあっちこっちを飛び回っていて、スカンポの森のことなら、中のことでも外のことでも、よく知っていますから」

「ちょうどいいお嫁さんがいますよ」と、ブヨたちは言いました。
「人間の足で、ここから百歩ぐらい離れたところにスグリの茂みがあるんですが、その上に、家を持った小さなカタツムリの娘がいるんですよ。その人はひとりっきりなんですが、もうそろそろお嫁に行くころです。人間の足で、たった百歩ばかりのところですよ」

「じゃあ、その人にきてもらうことにしましょう」と、年寄りたちは言いました。
「お婿さんはスカンポの森を持っているのに、お嫁さんはスグリを一株しか持っていないんですからね」

こうしてふたりは、その小さなカタツムリの娘を迎えに行きました。娘はここまで来るのに八日もかかりましたが、でも、それでよかったのです。なぜって、そのために、この娘が同じカタツムリの仲間であることがはっきりと分かったのですからね。

それから結婚式があげられました。六匹のホタルが、一生懸命に光ってくれました。そのほかは、なにもかもごく静かに行われました。というのは、年寄りのカタツムリたちは、お酒を飲んだり大騒ぎをするのが嫌いだったからです。

しかし、カタツムリのお母さんはすてきなお話をしました。お父さんのほうは、すっかり感動してしまって、ろくにお話もできなかったのです。それからふたりは、若い者たちにスカンポの森をみんな譲り渡して、しょっちゅう口にしていることを言い聞かせました。つまり、ここは世界中で一番素晴らしい場所であるということや、ふたりが正直にまじめに暮らしていれば、子供たちが増えたときには、ふたりも子供たちもいつかはお屋敷へ行って、まっ黒に料理され、立派な銀のお皿にのせてもらえるようになるだろう、といったことを言い聞かせたのです。

話が終わると、年寄りのふたりは、それぞれの家の中へもぐりこみました。それからは、二度と出てくることはありませんでした。
そのまま、ふたりは眠りについてしまったのです。

若いカタツムリの夫婦は、このスカンポの森を治めることになりました。
そして、子供も大勢生まれました。
しかし、料理されることもなければ、銀のお皿にのせられることもありませんでした。
そこで、みんなは「お屋敷はもう壊れてしまって、世の中の人たちはみんな死んでしまったのだ」と決めることにしました。
そして、だれひとりとしてそれに反対する者はいませんでしたから、それはきっと、本当のことに違いありません。

雨はスカンポの葉をたたいて、まるで太鼓のような音楽を聞かせてくれました。
お日さまはキラキラと輝いて、スカンポの森を美しい色に染め上げてくれました。
みんなは、とっても幸せでした。
そして、一家の者は、みんな幸せでした。
本当に、そうだったのです。

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