だからこそ、ときには自分のテクニックを過信して、失敗してしまうこともあるようです。
「地下鉄サム」という小説に出てくる憎めない泥棒名人のような人物も、もし現実の世界にいたら、きっとあっさりと捕まってしまうに違いありません。
有名な推理小説に出てくる「ブラウン神父」は、木の上に隠れている大泥棒のフランボーに向かって、こんなふうに優しく、でも力強く語りかけました。
「……フランボーよ、お前にはまだ若さもあるし、泥棒としてのプライド(名誉)もある。だが、そんなあぶない仕事がいつまでも続けられると思ったら大間違いだ。人間は、良いことならずーっと同じように続けていけるけれど、悪いことでいつまでも同じままでいられた人間は、この世界に一人もいないんだよ。悪い道というのは、進めば進むほど、どんどん深い泥沼へと落ちていってしまうものなんだ……」
星がきらきらと輝く静かな夜、木の上にいる大泥棒フランボーは、ブラウン神父のこの言葉を、じっと心の中で静かに聴いていました。
ぼくは、世の中にあるありとあらゆる探偵小説を長い間たくさん読んできましたが、このブラウン神父の素晴らしい知恵(叡智)ほど、いつでも新しくて、心に深く響くものはないと思っています。
でも、イギリスの小説だけではありません。日本にだって、「銭形平次(ぜにがたへいじ)」や「あご十郎」のような、とってもカッコよくて素晴らしい名探偵たちが物語の中で大活躍しています。
それだけではありません。本の中の主人公ではなく、大昔の歴史の中で本当に生きて大活躍した「大岡越前守(おおおかえちぜんのかみ)」という、とっても偉くて賢いお奉行様(おまわりさんのボスのような人)さえ生まれた素晴らしい国なのです。
なんだか今の世の中は、悪いことが堂々と表を歩いていて、正しいことが後ろに隠れてしまっているような、おかしな勘違いをしてしまいそうになります。だからこそ、そんなモヤモヤした空気を吹き飛ばしてくれるような、さわやかな涼しい風が、この国にビューッと吹いてくれたらいいなと、心から願っています。
コメント