初級翻訳・未来の地下戦車長 第8話

未来の地下戦車長

プロペラ(翼)をロータリー除雪車のように作り替えて、それから土台(台)に車輪をつけたら、ものすごく面白いものができるぞ!
廃品回収の仕事でお金を稼げるうえに、こんなお宝まで手に入るなんて、なんていい商売なんだ!」

   扇風戦車失敗の巻

一郎は、扇風機を改造してロータリー除雪車にそっくりなものを作ろうと決心しました。
こわれた扇風機を調べてみると、故障の原因はレバーの接触が少しよくないだけだと分かりました。
こんな故障を直すことなど、一郎にとっては朝飯前です。
ロータリーのプロペラ(翼)は新しく作り直さなければならなかったので、材料集めには少し困りました。
しかしそれも、木の板に空き缶のブリキ板を貼り付け、その上にこわれた金具の中から使えそうなものを選んで取り付けることで解決しました。
すべて、一郎が仕事であつめてきたものの中から、自分にとって都合のよいものを選んで使うのですから、これほど好都合なことはありませんでした。
「この商売、なかなかよろしいぞ」
一郎はひとりで大喜びしていました。
そして、何日もかけてついにロータリー車の模型を完成させたのです。
「さあ、あとは雪が降るのを待つだけだ!」「雪よ、早く降れ、早く降れ!」
一郎はまるで小さな子供のように、雪が降るのを心待ちにしていました。すると、それから一週間ほど経った頃、ついに雪が降ったのです。
天も一郎を応援しているのか、驚くほどの雪を降らせました。
東京地方ではめずらしいとされる、なんと積雪一メートル半です!
「やったぞ、うれしい!
いよいよロータリー式地下戦車の模擬試験だ!」
一郎は庭へ、あの扇風機を改造したロータリー車を置きました。
そして、前もって買っておいた夜店用の防水コードを、家の中から庭まで引っ張り、その端っこに扇風機のプラグを差し込みました。
あとは、途中についているスイッチをカチッとひねれば、このロータリー車が勢いよく雪を切り裂くはずでした。
一郎はうれしくてうれしくて、勝手に顔がニヤけてしまうのを止めることができませんでした。
「さあ、ロータリー式地下戦車、発進だ!」
一郎がそう言って元気よく号令をかけ、スイッチを押すと――。
なんと、扇風機……いや、ロータリー地下戦車は、見事に勢いよく回り出しました。
あたり一面に雪がパーッと飛び散ります。
「よしよし、大成功だ!
この調子で雪の中を前進していけばいいんだ。機関車の代わりに、僕が後ろから押してあげよう」
一郎は、ぶんぶんと回転しているロータリー車の後ろを手でしっかりと持ち、積もりに積もってまるで堤防のようになっている雪の壁に向かって、
「進め、進め!」
と、ロータリー車をグイッと押しつけました。
ぱちぱちぱち、ぴちぴちぴち。
ロータリー車はそんな可愛らしい音を立てながら、積もった雪の中に丸々としたトンネルをどんどん掘り進んでいきました。
「あぁ、楽しい!
あぁ、なんて愉快なんだ!」
ほかの人が見たら「なにをやっているんだか」と思うようなことでも、一郎にとっては楽しくて仕方がありませんでした。
彼がそんなふうにして一時間あまりも夢中で続けいていたとき、ふと、どうしたわけか、プーんと変な臭いが漂ってきたではありませんか。
「おやっ、変な臭いがするぞ。
まるでゴムの線が焦げているような臭いだ……」
そのときになって、彼はようやく異変に気がつきました。
慌ててロータリー車を手元へ引き寄せ、モーター(電動機)の上にそっと手を触れてみると、
「アチッ!」
触ることもできないほどに熱くなっていたのです。
そして、プーんとゴムの焦げる臭いが立ちこめ、モーターの中から白い煙がスーッと立ち上っていることに、はじめて気がついたのでした。
「し、失敗した……!
モーターを焼き切ってしまったんだ」
そう叫んでみましたが、もう後の祭りでした。
モーターは、いつの間にかすっかり動かなくなっていたのです。
どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。
後から一郎が考えてみたところによると、これは小さなモーターに、あまりにも無理やり激しい仕事をさせすぎたために、熱を持って焼き切れてしまったのでした。
こんな小さなモーターで、大量の雪をバリバリかき出させようなんて、そもそも無理な相談だったのです。
雪がやわらかいうちはまだよかったのですが、雪が固くなるとモーターにはものすごい負担がかかります。そのうち、中の電線と電線の間で火花が散ってしまい、完全に動かなくなってしまったというわけです。
彼はあとでまた扇風機として直すつもりでしたが、今回のこの失敗のせいで、モーターのコイルをイチから巻き直さなければならなくなってしまいました。
失敗は失敗でしたが、彼の地下戦車研究は、この経験によって一段と大きく前進したのでした。
「それにしても、あのロータリーのやり方では、どうもうまくいかないぞ。
普通の除雪車なら、雪を外へパーッと吹き飛ばすだけでいいけれど、地下戦車となると話は別だ。削った土は、自分が掘った穴の中へすてるしかないんだから、もっと仕組みを考え直さなくちゃダメだな。
いったいどうしたらいいんだろう……」
一郎は、失敗にへこたれることなく、早くも次の研究について頭を悩ませていました。
地下戦車というものは、ただ単に穴を掘るだけでは不十分です。削り取った土を一体どこへ追いやるのか、その処理の方法までしっかりと考えておかないと、実際の役には立ちません。
これはなかなかに難しい研究課題でした。
一郎は、廃品回収のリヤカーを引きながら、そのことについてあれこれと頭をしぼりましたが、なかなか良いアイデアが浮かばなくて困っていました。
そうこうしているうちに、季節はすっかり春になりました。
春にはなったものの、地下戦車の悩ましい問題は、一向に解決の糸口が見えませんでした。
ところが、ある日の朝のことです。彼は郊外を歩いているうちに、思いがけない面白いものを見つけました。
それは、お百姓のおじさんが、畑を荒らすモグラを捕まえているところでした。
畑の厄介者であるモグラが、なぜ一郎の注意をそんなにも強く引いたのでしょうか?

【岡部一郎、ひるまず】

岡部一郎は、なぜモグラを捕まえているお百姓さんを見て、あんなに喜んだのでしょうか?
彼は廃品回収のリヤカーを道の脇にポツンと放り出しておき、そのお百姓さんのもとへ、のこのこと歩み寄っていきました。
しかし、お百姓さんは一郎の姿を見ると、手を左右に大きくパタパタと振りました。
「あれっ? もしかして、あんまり近くへ行いちゃいけないのかな?」
モグラが暴れて一郎に噛みついたりしたら危ないからと、お百姓さんが心配してくれているのでしょうか?
そんなことくらいで怖がる一郎ではありません。彼は気にも留めず、そのままお百姓さんの方へ近づいていきました。
すると、お百姓さんは再び手を左右にブンブンと振りました。

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