初級翻訳・河童酒宴 第2話

佐藤 垢石

河童という生き物は、実にとんでもない大酒飲みだ。
生きた小馬を肴(さかな)代わりに眺めながら、強い焼酎を茶碗でがぶがぶと飲む。
そこへ猫万どんも厩舎の影から這い出してきて、河童たちの輪に向かって無言で恭々(うやうや)しく頭を下げた。
次第に夜が明け始めていく。
いくら大酒飲みの河童といえども、たった数匹で一斗瓶の底が見えるまで飲み干せば、酔いつぶれないはずがない。
俺も車座の仲間に入って、少しばかり酒を飲んだ。
彼らが正体をなくすほど酔っ払った頃合いを見計らって、俺は突然、
「夜が明けたぞ!」
と、大声で怒鳴った。
彼らのうち一匹でも腰を抜かして動けなくなり、逃げ遅れたら荒縄で縛り上げてやろうと考えたからだ。
「キャッ!」
酔っ払った河童たちは声を揃えて叫ぶと同時に、まるで消しゴムで拭い去ったかのように、その影は闇の中へ消え失せてしまった。
翌朝、厩の前へ行ってみると、雨合羽のようなものが一枚落ちていた。
よく見ると、それは河童の皮だった。
青い雲のような模様が薄く浮かび上がっていて、最近流行りのオイルシルクで作ったレインコートによく似ている。
河童め、慌てて尻に敷いていた皮を置き忘れていったらしい。
私は少年の頃、こんなたわいない話を父から聞きながら、共に酒を飲んで夜を更かしたものだ。

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