すると、ライトのむこうの方から、明智探偵と、中村警部と、数名の警官が、かけつけてきました。
そして、一寸法師は、なんなく、つかまってしまったのです。
「おてがら! おてがら! さすがは少年探偵団だね。
よく一寸法師を、さがしてくれた。
」
中村警部が、ニコニコして、少年たちのてがらをほめました。
「これで、ひとりはつかまったが、あとにまだ、ふたりいる。
小林君、しっかりやるんだよ。
」
明智探偵が、小林団長のかたをたたいて、はげますのでした。
明智は、じぶんがやれば、なんでもないのですが、こういうときに、小林君や少年団員たちに、じゅうぶん、てがらをたてさせてやろうと考えていたのです。
そのとき、ひとりの警官が走ってきて、中村警部に、ほうこくしました。
「あちらのオートバイ曲芸のおけの中に、クマがおちこんでいます。
くさりをきして、逃げたらしいのです。
」
それをきくと、「よしっ。
」といって、明智探偵は、そのほうへ、かけだしました。小林君や少年団員たちも、そのあとにつづきます。
中村警部と数名の警官は、一寸法師をとりかこんで、もとの場所に、のこっていました。
大グマと巨人
大テントのとなりに、小さいテントがあって、その中に、オートバイ曲芸の巨大なおけのようなものがすえてありました。
それは直径五メートルもある、大きな深いおけで、オートバイ選手が、その内がわを、グルグルまわる、あの冒険曲芸のぶたいです。
巨大なおけの上の、外まわりに、板ばりの見物せきがあります。
明智探偵と小林少年と、少年団員たちは、はしごをかけあがって、その見物せきにならび、おけの中をのぞきました。
深いおけのそこに、一ぴきのクマが、グルグル歩きまわっていました。
鉄のくさりで、おりの中にしばりつけてあったのを、ひきちぎって逃げだしてきたのでしょう。
はんぶんに、ちぎれたくさりが、あと足についています。
「じゃあ、こいつは、テントの前のおりをやぶって、逃げてきたのですね。」
小林君が、なにか、いみありげに、明智探偵の顔を見ました。
「そうらしいね。
だが、あのおりの中にもまだクマがいるかもしれないよ。
いってみてごらん。」
明智探偵がみょうなことをいいました。
「でも、このサーカスには、クマは一ぴきしかいないはずです。」
「それが、二ひきになったかもしれないのだよ。
ためしに、見にいってごらん。」
明智探偵は、ときどき、こんなふしぎなことをいいます。
しかし、それは、いつでも、けっしてまちがっていないのです。
小林少年は、ともかく、クマのおりをしらべるために、はしごをおりて、大テントの前へかけつけました。
見ると、そのおりのまわりには、さっき、クマの見はりをするように、さしずをしておいた五人の少年が集まっていました。
そして、おりのなかには、ちゃんと、クマがいたではありませんか。
「あっ、小林さん。」
少年のひとりが、ふりむいて、声をかけました。
小林君は、いそがしく、たずねます。
「きみたち、ずっと、ここにいたんだろうね。」
「うん、ここにいたよ。」
「そのクマは、一度も、おりを出なかったろうね。」
「もちろん、出るはずはないよ。」
「ふしぎだなあ。
クマが二ひきになったんだよ。」
「えっ、二ひきに?」
「あっちに、冒険オートバイの大きなおけがあるだろう。
あのおけのそこにも、一ぴきのクマがいるんだよ。
足のくさりがちぎれてるから、おりから逃げたにちがいないんだ。」
小林団長は、うでぐみをして考えこみました。
「おやっ、そういえば、このクマの足には、くさりがついていないよ。
ほらね。
そして、おりのすみに、半分にちぎれたくさりがのこっている。
へんだなあ。」
ひとりの少年が、それをゆびさして、いいました。
「それに、このクマ、ばかにでっかいじゃないか。
まえからいたクマは、この半分ぐらいしかなかったよ。」
また、ひとりの少年が、それに気づいてさけびました。
「そうだ、こんな大きなクマじゃなかったね。」
小林少年も、そうおもいました。
おりの中のクマは、オートバイのおけのそこにいたクマの二ばいもあるのです。
なんだかきみがわるくなってきました。
いったい、どこから、こんなでっかいクマが、やってきたのでしょうか。
ひょっとしたら、こいつが、もう一ぴきのクマを追いだして、このおりをせんりょうしたのかもしれません。
「このクマのかっこう、なんだか、へんだねえ。
あと足が、いやに長いよ。
かたわのクマかしら。」
ひとりの少年がいいました。
いかにも、そういえば、どことなく、へんなかっこうです。
小林君は、じっとクマの姿を見ていましたが、そのとき、決心したようにさけびました。
「そうだ。
きっとそうだ。
よしっ、先生と、おまわりさんを、よんでこよう。
そして、こいつを、もっとよく、しらべるんだ。」
そして、そのばを、たちさろうとしたときです。
おりの中のクマが、いきなり、あと足で立ちあがって、まっかな口をひらいて、ウオーッとうなりました。
いまにも、少年たちに、とびかかってくるような、いきおいです。
みんなは、はっとして、おりの鉄棒のそばをはなれました。
すると、大グマは、前足でおりのとびらを、ガチャガチャいわせていましたが、またウオーッとうなって、大きなからだを、とびらにぶっつけたかとおもうと、それが、パッとひらいたのです。
おりのとびらが、おおきくひらいてしまったのです。
少年たちは、わあっとさけんで逃げだしました。
クマは、ひらいたとびらから、おりの外へとび出し、いきなり八幡神社の森の方へかけ出していきました。
さっきはゾウが逃げだし、やっとそれをつかまえたかとおもうと、こんどはクマです。
またクマ狩りを、はじめなければなりません。小林団長は、呼び笛をとり出して、ピリピリ……と強く吹き鳴らしました。
すると、テントの入口から、数名の警官が慌てて駆けつけてきました。
「大変です!
クマがオリを破って逃げたのです。
ほら、あそこへ走っていきます!」
それを聞くと、警官たちは腰のピストルをとり出し、すぐさま追いかけようと走り出しました。
「ちょっと待ってください!」
小林君は警官たちを呼び止めて、何かヒソヒソと耳打ちしました。
「ねえ、だからピストルを撃っちゃいけませんよ。
手で捕まえてください。
そして……ね、分かったでしょう?」
警官たちは不思議そうな顔をして、
「それは、本当に間違いないだろうね?」
と、念を押しました。
「大丈夫です!
明智先生の命令ですから!」
「よし、それじゃあ……!」
ということで、警官たちはピストルを革ケースにしまい、そのままものすごい勢いで駆け出しました。
小林君をはじめ、少年団員たちもそのあとにつづきます。
大グマは、すでに神社の裏門から、森の中へとび込んでいました。
警官や少年たちが裏門に駆けつけたときには、どこに隠れたのか、そのあたりにクマの姿は見えません。
みんなはあちこちを探し回りました。
「変だなあ。
あんなわずかな間に、遠くへ逃げられるはずがないんだが……」
警官のひとりが、不思議そうにつぶやきました。
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