夢十夜

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夏目 漱石

初級翻訳・夢十夜 第1話

第一夜こんな夢を見た。腕組みをして枕元に座っていると、仰向けに寝た女が、静かな声で「もう死にます」と言う。女は長い髪を枕に広げ、卵のような形の柔らかな顔をその中に横たえている。真っ白な頬の奥には、温かい血の色がほどよく差していて、唇の色はも...
夏目 漱石

初級翻訳・夢十夜 第2話

短刀を鞘に収めて右脇に引き寄せ、それから座禅を組みました。――趙州和尚が言った「無」とは何か。「無」とは何だ。「クソ坊主め」と歯ぎしりをしました。奥歯を強く噛み締めたので、鼻から熱い息が荒く漏れます。こめかみがつって痛みます。目は、いつもの...
夏目 漱石

初級翻訳・夢十夜 第3話

自分は子供ながらに、このおじいさんは一体いくつなんだろうと思いました。そこへ、裏の筧(かけい)から手桶に水を汲んできた神さんが、前掛けで手を拭きながら「おじいさんはおいくつですか?」と聞きました。おじいさんは口いっぱいの煮しめを飲み込んで、...
夏目 漱石

初級翻訳・夢十夜 第4話

誰かがかがり火を足したので、遠くの空が薄明るく見えます。馬はその明るい光を目指して、闇の中を飛ぶように走ってきます。鼻から火の柱のような息を二本も吐き出しながら飛んできます。それでも女性は細い足で、絶え間なく馬の腹を蹴り続けています。馬は蹄...
夏目 漱石

初級翻訳・夢十夜 第5話

「西へ沈む日の行きつく先は、東なのかい? それは本当のことかい? 東から昇る日の故郷は、西にあるのかい? それも本当のことかい? 私たちは波の上。流れにまかせて、流れていこう」船の先へ行ってみると、水夫たちが大勢集まって、太い帆綱を一生懸命...
夏目 漱石

初級翻訳・夢十夜 第6話

膝の上にはせいぜい百枚くらいしか乗っていないのに、いつまで数えても百枚のままなのです。僕はぼう然として、この女の顔と十円札を見つめていました。すると耳元で、白い男が大きな声で「洗いましょう」と言いました。ちょうどいいタイミングだったので、椅...
夏目 漱石

初級翻訳・夢十夜 第7話

ある夕方、一人の女が不意に店先に立ちました。身分の高い人らしく、立派な服装をしています。その着物の色が、ひどく庄太郎の気に入りました。そのうえ、庄太郎は女の人の顔に、とても感心してしまいました。そこで、大事なパナマ帽を脱いで丁寧に挨拶をした...
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