神州天馬侠

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吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第109話

すると――伊那丸が、「ごめん――」と目礼をして、真っ先に白駒の金鞍にヒラリと乗る。つづいて忍剣と龍太郎も、波に月兎の鞍を置いた黒鹿毛の背へヒラリとまたがると、キッと手綱を引き絞り、互いに振り返りながら、「裾野以来、こうして馬上になるのは久し...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第108話

背中の上で二人の童子が互いに斬り合い、奪い合っていた般若丸の切っ先が、誤って鷲のどこかを傷つけてしまったに違いありません。「あッ――」と思う間もなく、虚空の上から絡み合った二つの体がフーッと真っ逆さまに落ちていったかと思うと、琵琶湖の真ん中...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第107話

ましてや今、天下に一寸の領土も持たず、頼れる城も一つとしてない伊那丸にとって、安全な道などどこにもないのです。どうせ敵地を踏むのであれば、忍剣の言う通り、徳川家の勢力が根を張る東海道こそが、小太郎山の砦に最も近く、地形も平坦で分かりやすいと...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第106話

どれ、わしもそろそろ鞍馬の奥へ立ち帰ろう」「老先生、しばらくお待ちくださいませ」「……もう一言だけお聞きしますが、居士(先生)が身代わりになって逃がしたというそのお坊様は、いったいどこへ行ってしまったのでしょうか」「おそらく、人間が暮らす騒...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第105話

その時、加賀見忍剣は初めて破術の法を思い出し、散魔文の秘句を唱えながら、持っていた禅杖を振り上げ、「エイッ!」と水流を断ち切るように打ち下ろしました。水面を打った法力ある禅杖により、サッと水が二つに割れたかと思うと、散魔文の破術を受けて狼狽...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第104話

こう言われると、呂宋兵衛に従う山犬のような武士たちは、まるで耳の鼓膜を突き抜かれたかのようにたじろぎ、我先にと斬りかかる者はいなかった。「ええいッ、相手はたったの二人か三人だ、なにをもたもたしている! 袋叩きにして、さっさと首をあげてしまえ...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第103話

「かならず――合図をまちがえてくれるなよ――」くれぐれも言い聞かされた龍太郎の言葉が、空の上なる竹童の耳に、いまもはっきりと聞こえる心地がする。――とその瞬間である。竹童は、すぐ真下の地上に一点の火の塊を見いだした。枯れ草を焼く百姓の野火か...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第102話

すぐに追いつかれそうになったのを見て、蛾次郎は驚き、高くそびえる一本の樫の木へ、猿のようにシュルシュルとよじ登りました。木登りは、竹童も得意とするところです。蛾次郎が猿なら、竹童はムササビのように敏捷でした。ピョンと枝へ飛びつくと、もう蛾次...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第101話

こう気がついたので、蛾次郎も急に足を早めて、今宮神社の境内から天ヶ丘のほうへ歩き出しました。すると、ちょうどそのふもと。南蛮寺(なんばんじ)ののぼりにかかろうとする参道の並木を、忍びやかにいく人影があります。まだ朝もやが立ちこめているので、...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第100話

「今こそが大事な時であるぞ」と、私たちのような凡人を鼓舞してくださる教えなのであろう。つまり、予言の裏に隠された真意を汲み取れば、 ――ここで全力を尽くさねば、おまえと父・勝頼公が再会する望みは、永遠に失われるぞ。 ――ここでのんびりと無駄...
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