吉川 英治

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吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第79話

小幡民部(おばたみんぶ)も駆けつける。たちまちのうちに陣々は大騒動となり、大将の伊那丸も幕を払ってやってきたが、閣上の呂宋兵衛は、いちはやく屋根の上へ飛び移り、九輪(くりん)の根元に身をかがめてしまったので、遠矢を射かけるすべもない。「あれ...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第78話

命からがら浜松の城下を鷲に乗って逃げ出したのはいいものの、夜に入るにしたがって空の寒さは骨身に染み、腹は減るし、寝る場所のあてはなし。青息吐息の盲目飛行、下手をすれば先生、雲のなかで迷子になってしまいそうです。やはり、名刀・村正の切れ味も持...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第77話

長年の願いがかなって、さぞ大喜びしているだろう――と思いきや、竹童はすごすごと伊那丸の前から下がり、般若丸の太刀を抱きかかえたまま、人のいない陣屋の隅で、ひとりシクシクと泣きはじめたのです。「はてな……?」龍太郎は眉をひそめて、そっと竹童の...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第76話

その唇へ、白蛇が銀色の鎌首を向けて、緋撫子のような舌をペロリと吐き出します。すると、数十人の美女たちが笙(しょう)を合わせて吹くような、竹林の風――ザザザザザッ……とそよぎ渡ったかと思うと、竹童ははっきりと意識を取り戻し、パッチリとこの世の...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第75話

するとピューッ、ピューッという不気味な笛の音は、たちまち恐ろしい暴風となって、あたり一面の木々の落葉を吹き巻くりました。あれよと見る間に、咲耶子は砂塵を顔に吹きつけられて、「あ――」と眼をつぶされてしまいました。「おのれ!」 きらめく懐剣が...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第74話

ふと見れば、黒百合谷の百合の精か、星月夜からこぼれ落ちた星かと思われるほど、気高く美しい姿です。彼女は手にしていた横笛を、山千鳥が鳴くのかと思うほど強く吹き鳴らしました。「や、や? ……」 五人の男たちが、どうしたものかと進むことも戻ること...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第73話

「あッ――」と、あやうく鉄杖で胴を二つに断たれそうになった佐分利五郎次は、井戸の縁から五、六尺とびのいて、きっ!と見れば、そこにいたのは鎧武者ではなく、黒の染衣を軽やかに着こなし、鼠色の手甲脚絆をつけた骨太い若僧。いま、血塗られた鉄杖をしご...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第72話

五遊星、北極星、北斗星、二十八宿星……その輝きによって北条流軍学の星占いを行っているらしく、昌仙はしばらくして一人で納得すると、元の席へ戻り、呂宋兵衛に向かって離散と逃亡の策を授けました。「では、なんとしても私一人、そなたも一人、他の者たち...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第71話

そのお返しに、こうしてやる、こうしてやる!」もともと石投げの名手である蛾次郎が、邪魔者のいない頭上から狙い撃ちにするのですからたまりません。さすがの燕作も反撃のしようがなく、慌てふためいて竹童の体を横脇に抱え直すや否や、小山の降り口へ向かっ...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第70話

しかし、密林の奥で鷲を盗み損ねたうえ、竹童にこっぴどく痛めつけられてからは、もうこりごりだと考えたのです。残りの金で何かうまいものでも食おうと甲府を指して歩いていた途中、ここで見張り役をしていた燕作の目にとまり、引っ張り込まれたのでした。さ...
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